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王になりたかった第一王子。

 なぜこんなことになったのだろう? 


私の思惑通りに全て進んでいたと言うのに・・

あの子供の勇者のせいなのか? 

あんな子供でも弟が召喚した勇者なのだから失敗してくれれば

召喚した弟に責任を被せられると思ったのだが・・・


あっというまにオーガもサイクロプスも打ち破ってしまった。

あれだけの軍団だったのになんてデタラメな魔法を使うんだ! 

異世界の勇者があれほど規格外とは記録に無かった。


召喚して色々裏工作をさせた魔族も解放され残っていたのは

護身用のはずのサイクロプスの召喚だけだった。

ソレすらあっという間にたおされた。

せめてと仕返しに赤ん坊を始末してやろうとしたのにタダのトカゲのはずが

ドラゴンだったと弟に知らされた。


「なんとも小さな代物だったがちゃんとドラゴンの姿だった。

魔道具でトカゲに見せてたんだそうだ。

一発しかブレスは打てないはずだったんだそうだがどうやら

あの赤ん坊は勇者で魔力を提供したらしい。」


私が戦争を引き起こしたことについては弟はなにも聞かなかった。

責める言葉すら無いと言うのは地味にキツイものだな。


王になりたかった。

というか私がアレより優れていると証明したかった。

アレより上に居たかった。


私が兄なのに皆弟のほうを尊重するのが我慢できなかった。

・・・弟が悪いわけではないと分かってはいた。

かわいいと思ってもいたのだ。

それでも母が側妃だというだけのことで弟のほうが皆に・・

父王に尊重されている気がしたのだ! 


父王もなにもおっしゃらなかった。

なぜ皆私を責めないんだ! 

あの子供の勇者も何も言わなかった。


王子と言えどもこうなったからには処刑だろうと覚悟した。

なのに辺境の修道院に幽閉だと聞いて、なんて甘い! とかえって

関係者一同の頭の中身を心配してしまった。


王子でも許してはいけないことだろう! コレは! 

国と国民のために居る王、王族貴族であるはずなのだ。

少なくともそう教育されたのだ! 

それでも道を踏み外す誘惑に勝てなかったのだ・・


戦争の犠牲になったものも少なくない。

それでも私はそうせずには居られなかった。


多分、そんな私だから思惑は外れたし王の資格もなかったのだ。

あの魔術師も多分戦争の犠牲者の家族や関係者なのだろう。


今いるココが私が生まれたあの世界ではないことは理解した。

足元に光った魔法陣はおそらく異世界に人を送るためのものだったのだろう。


世界のすべてから切り離されて私になにができるのか・・

勇者でもない私に・・・


ココではもう王子ですらない。

さっきのバケモノはなんとか倒した。

だが負傷もしてしまった。

そのおかげでまだ死にたくないと思っている自分に気が付いた。


勝手に起こした戦争で隣国をも自国民をも犠牲にしたのに

自分の命は惜しいものらしい。


何も無くなってしまったがまだ命はある。

ソレを惜しいとも思っている。

足を引きずりながら父王や母や弟を想う。

ただ想う・・・


もう二度と会うことはできないと分かってはいるのだが・・・

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