最弱魔王。
皆が内心ではオレをバカにしてると分かっていた。
先王には他に子は居なかった。
だからイヤでも玉座に座らざるをえなかった。
弱いのに・・・
魔族は強さ重視だ。
今更特訓して強くなろうなんてできない。
弱いことを認めることになるからな。
個人の強さじゃあなく王としての強さを示せば少しは皆も認めるかもしれない。
そう思ったんだ・・
いつのまにか「世界征服」を目指すことになっていた。
・・・先王だってできなかったのに・・
そんなことはオレは考えたことも無かった。
側近の誰かがお世辞めいて言った言葉がいつの間にか一人歩きしたんだ。
でも取り消せなかった。
そうだろう? だって王の言葉だということになってるんだ。
取り消すのはミスを認めることだし余計にバカにされそうだ。
でもコレはどうやら隣の人の国には圧力になったね。
あの王女はカワイイ。
ハッキリ言って好みだ。
婚約者・・居たんだよな。
でも、オレは世界征服を狙う「強い」魔王だ。
ちょっとゴリ押しして彼女をゲット!
・・・のはずだったんだけど・・
きたのは異世界から召喚されたという従者つきの勇者だった。
しかも魔族で超絶に強かった。美人なのに・・
近衛も将軍も手も足も出なかった。
「こんなので魔王だなんて魔族の恥だ! 従者! 何とかしろ! 」
殺されるのかと思ったら殺された方がマシとさえ思えるほどの特訓だった。
コイツ・・・コノ従者って人間だよな。
なんでこんなに強いんだ?
勇者の従者ってこんなに強くないといけないのか?
しかもコワイぞ! その笑顔!!!
なんだかイケナイ性格な気がするんだけど。
勇者は私の側近をほとんどクビにした。
そうしていかにも厳しそうな連中と入れ替えた。
国の機構までやりたい放題に改造してしまった。
いくら勇者でもそんなことができるとは思わなかった。
政治的なことは時間と手間がかかるはずなのに・・
従者によると別の世界の前魔王だと言う。
弟に王位を譲って最強勇者に挑むべく特訓中に召喚されたと。
最強勇者って・・
アレが最強じゃあないのか・・
しかも王位を譲ったとはいえ魔王・・・
もう・・何も言えないな。
戦争は止めさせて国境も元通り。
勇者な元魔王に色々レクチャーされてなにやら妙な魔法陣を施された。
彼等が帰っても言ったことを守らせるための枷だそうだ。
「なに、ちゃんと自分でできるようになれば自然と外れる。
頑張って一人前になることだな。」
一人前・・オレって一人前じゃあないってことか・・
クーデターが起きたが勇者は手出しをしなかった。
従者が魔力を空に飛ばしたと思ったら山のようなアラレが
降って来て反逆者の全てを埋めてしまった。
殺さず教材にでもしろと言う。
まあ、オレが最弱だってことをコイツラは今まで知らなかったはずだからなぁ。
そんなに弱いんならプチッといったれ! と思うよな。
あのアブナイ従者に地獄の特訓をされたから一応コイツラ位には
負けない自信はある。
だが、勇者どころかアレにもとても敵うとは思えない。
人の国の連中は召喚を叱られたそうだが追い詰めたらまたやるかもしれない。
余計な手出しは控えるべきだろう。
強くなって一人前になって誰からも文句を言われない魔王にならなければ!
もうあの二人には会うのはゴメンだからな!