召喚主(魔王にプロポーズされた王女)。
綺麗な方だった。
思わずかける言葉を飲み込んでしまったほど。
なんだかボロボロな印象のチビなお供が付いていた。
私が勇者さまにお願いしてる間にお行儀の悪いことに
ドコから出したのか飲み物を飲んだりしていた。
突然彼を振り向いた勇者さまは彼から飲み物を取り上げた。
あ! 飲んじゃった!
・・・・・・・・・・
気にしないのが彼女の世界の習慣なのかしら。
でも・・お供は微妙な表情をしてるけど・・
ともかくこちらの要望は受けてもらわないと・・
ということで卑怯だとは思うけど〔隷属の首輪〕をつけようとしたのだけれど
お供に阻まれた。
なんと首輪が隷属の首輪だと見抜かれていた。
帰還させる手段の無い連中が使いたがる・・ですってぇ!
なんで帰せないって知ってるのぉー!
彼は召喚は初めてじゃあないし彼女はタダの勇者じゃあないと偉そうに言った。
彼女はヒマつぶしに依頼を受けてくれると言った。
彼は「従者ですからね。モチロンお供しますよ。」と言う。
なんだか遊び半分めいていて調子が狂う気がした。
そうして彼に事情聴取とお説教を延々とされた。
私・・この国の王女なのに・・
召喚したのはこちらなのになんで彼の方が偉そうなんだろう?
いろいろ調べて何かゴソゴソと言う感じで準備していたけど
3日目に出かけて行った。
そうしてあっという間に解決してしまった。
世界征服は脅しだったそうだ。
私にもう一度アプローチしたかったんだと・・
なんというか・・嬉しくないなぁ。
私に婚約者がいるって知ってたはずなんだけど。
勇者さまは国境を元に戻して魔王の側近たちをほとんど全部クビにした。
魔王のあまりの弱さにあきれ果ててあの生意気従者に特訓をさせたらしい。
なんでそんなことを! と思ったら戻って来た生意気従者が
彼女の正体を教えてくれた。
異世界の魔族でしかも王位を弟に譲った前魔王って・・(汗。)
「今はオレ達の世界の最強勇者に挑むべく特訓中なんですよ。
でも、ほっとくとココで魔王を代わりにするかもしれません。
ココの魔王より遥かに強いことは保証しますよ。
元の世界でも神さまが敵わないっておっしゃってましたしね。
居座られたらイヤでしょうから連れて帰りますよ。
まあ、ココの神さまも魔族の方ですがエコヒイキはなさらないようですから
その辺は安心でしょう。
でも、もう召喚はダメですよ。
何が出て来るか分からないしどっちの世界にも穴が開いてしまうんです。
世界自体の危機を呼びかねませんからね。」
この生意気従者は一体何なんだろう?
やけに色々詳しいし物言いが子供のくせに大人びている。
勇者の彼女にそっと内緒で聞いてみた。
「あー・・弱っちいくせに私に勝ったことのあるヤツだ。
従者を名乗ってるのはまあ・・遊びだな。従者ゴッコだよ。
ホントは私が挑もうとしている最強勇者の一番弟子だ。
アレでも召喚回数は両手じゃあ足りないそうだ。
勇者なんだよ。」
あんなチビなのに・・勇者・・
あの・・あなたが魔王だってホントなんですか?
「元だけどね。王位は弟に譲った。
あのチビに負けたからな。
実力なら負けないはずだったんだがあの見た目と実力に
まあ、油断させられたんだ。
アイツはそういうチビで弱っちい自分をちゃんと分かってて
それを利用できるヤツだからな。
初顔合わせな奴なら絶対に油断させられるだろう。」
今は負けないと?
「あの通りチビだが成長期だ。
昨日のアイツと今日のアイツは違う。
明日のアイツも違うと思う。
摸擬戦してて楽しいヤツなんだ。
最強勇者が一番弟子だと言うのも当然だよ。」
今は勝てていてもこの先は分からないと笑顔で話す元魔王。
とても綺麗で楽しそうな笑顔だった。
引き込まれて彼女が魔族だということを一瞬忘れてしまった。
魔族の国ではクーデターも起こったりしたけれど彼等は軽く片付けると
二人で楽し気に帰って行った。
勇者と元魔王が仲良くしている世界があるなんて・・
ココの魔王と政略結婚なんてお付合いはできないけれどタダの隣国としてなら
付き合わなければならないことは少なからずあると思う。
何か有っても、もう彼等の助けは期待できない。
召喚が世界の危機を呼ぶとまで言われたら・・
異世界の住人に頼らず私達で解決の道を探すこと・・
あの魔王のプロポーズを受ける方が簡単な気がしてくるけど
意地でもそれはできないわよねぇ。
だってあの生意気従者な勇者に負けな気がしてきちゃうもの。