城壁の外のテント商人。
モチロン街の中にも市場は有るんだがオレはもとはよそ者だったから
街の中の市場の場所の許可は順番が後になった。
まあ、差別といえば差別だが元からの住人が優先されるってのは
当然と言えば当然だな。
なので城壁の外にテントの店を出した。
ココなら中より税金も安い。
中に入るのに金の足りない連中とか入らずに用事を済ませたい連中もいるから
それなりの儲けも出る。
街のそばでも魔物が出る危険がゼロって訳じゃあない。
ソコは門衛の連中に話を付けてある。
いざとなったらソッコーで街に入れるように。
あのチビは変なガキだった。
見たことも無い銀貨を出してココの金に換金ができるかと聞いて来たんだ。
思わず贋金かと疑っちまったね。
まあ、贋金は贋金と分かってればちゃんと流通している。
もちろん本物ほどの価値はないがな。
けれどソレはココの銀貨より銀の含まれている量がやけに多い代物だった。
ちょっと悩んだけど銀でできたメダルだと思えばイイと思うことにした。
ちょっとボッてやったけどな。
あのガキはみんな見透かしてたみたいだった。
なので色々聞いてくるのに付き合ってやった。
まあ、ヒマだったってこともあるけど。
ギルドと神殿の場所を聞かれたよ。
ギルドなんかにあんなガキが何の用かと思ったね。
どう見ても登録できる歳にはみえなかった。
まあ、神殿に行くような奴ならそれほど悪いヤツとも思えなかったんだ。
ある晩街に帰ったら酒場で街の兵士どもが飲みながら
アイツのウワサをしていた。
神殿で神託が下りて海の魔物を片付けるのを手助けしたと。
アレか! 船が襲われて軒並み壊されまくってた!
兵士にちょっと酒を奢って聞いてみたら魔物かと思ったら
魔物じゃあなくてドでかいタダの亀だったそうだ。
タマゴを産みに浜に上がって来ただけだったそうだ。
誰もタダの亀だなんて気が付かなかったんだ・・
兵士の言う大きさが信じられなかったがホントなら確かに
誰もタダの亀とは思わないよなあ。
ギルドに登録したらしくて街道沿いで魔物狩りをしてた。
このあたりの魔物は大きくは無いけどそれなりに強い。
ギルドの連中がこまめに狩ってくれてるがやられることもシバシバだ。
あんなガキが魔物狩りなんて・・
と思ったオレ! 人を見る目がねえぞ!
アイツの狩を見てた顔見知りの冒険者によるとみんな瞬殺されてたそうだ。
「オレ・・自分じゃあ結構強い気でいたけど上には上が居るんだってことを
実感しちゃったよ。
ガキのくせにあんなに強いなんてなぁ・・・」
大亀騒動のガキだってことを教えたらソイツも納得してた。
街の責任者も困ってたのに新たな損害も無しに解決をしちゃったんだから・・
10日ほどで居なくなったが神殿の関係者が家に帰ったと話してたそうだ。
あんなヤツがこの街に居てくれたら街道も安全だろうと思ったんだけどな。
まあ、船員達も大亀騒動が解決して一安心だろう。
ココは風待ち・風除けのための港町だから船が来られなくなったら
街の存続にもかかわるからな。
アイツが置いて行った銀貨は売り払った。
結構いい値段だったんで有り難い商売になったよ。
一個だけ取ってあるんだけどさ。
街に幸運を運んでくれたと思ったんだ。
オレにもおこぼれが来たしな。
なんだかちょっとだけラッキーを呼んでくれる気がしたんだよ。