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神殿長(ほとんど寝たきり)。

 あの娘には他の神官以上の才能がある。

それはこの神殿に来た時から分かっていた。

だがまだ幼い。

だから勇者を召喚させた。

あの子を戦場に出したくなかったから・・


それは禁じられていることだと知ってはいたけれど

色々な種族があのドラゴンに対抗できずに蹴散らされた。

このままでは人の国も無事では済まない・・


召喚した勇者もまだ若かった。

成人しているようだとは思ったが彼等の世界ではまだ

未成年の学生だという。

あの歳を未成年にして置ける世界か・・・


彼は真面目で熱心な男だった。

レベルはあっという間に上がっていった。

だがとてもドラゴンに敵うとはまだとても思えなかった。


そうしてドラゴンは人の国にやってきた。

彼の成長は早かったがそれでも間に合わなかった。

きっと彼も我々もドラゴンの餌食だろう。

それでも彼らは出陣して行った。


あの子は親の形見だというペンダントを渡していた。

ああ・・気付いてはいた。

二人が魅かれ合っていたことは。

だがあの子はいずれ聖女にもなれる神官だ。

結ばれることなど・・


勇者も気持ちを示したりはしなかった。

あの子が好きなだけで子供だけに嗜好が限定された者ではない

というのは理解できた。

あの子に配慮しているのは透けて見える。


勇者のパーティは一時とはいえドラゴンを退けた。

だがきっとまた復讐にやってくるだろう。

だがもう戦力は残っていなかった。


パーティメンバーは残らず欠損だらけの体になったし

勇者は吹き飛ばされて手足の残骸がほんの少しあっただけ。

あの子が無言で泣き続けているのをどうすることもできない。


我らはもうドラゴンに滅ぼされると覚悟するしかなかった。

だが、神さまはお見捨てにはならなかったようだ。


神さまの要請を受けたと異世界の勇者たちが神殿に現れた。

あの勇者とともに! 

もう死にそうな私の心臓が止まりかけた。


あの子は泣きながら勇者に抱き着いていた。

あのペンダントのおかげで元の世界に飛ばされて向こうの世界の

聖女さまに欠損した体を治してもらったという。


パーティメンバーの話だととても生きてなどいられなかったと思うのだが・・

それほどの力をお持ちの聖女・・

この歳まで生きて来てもそれほどの方にはお目にかかった事は無い・・


欠損部位の復活は私もできたが片腕・片足程度が限界で

それ以上したら一ヶ月は動けない。

まあ、若いころの話だが。


老いてしまった今では若い神官へ指導することももう

ままならなくなってしまった。

あの子は勇者を治した聖女のような神官になりたいと言う。

だが・・・


ドラゴンは異世界の勇者たちがあっという間に片付けた。

神さまが結界に押し込んで行かれたがあれでも居ないと世界のバランスが

おかしくなるという。

まあ、あとは神さまがドラゴンを管理して下さるだろう。


あの子と勇者はただみつめあっていた。

それだけで彼はペンダントの礼を言って帰っていった。


「自分の気持ちはそうでも彼女の気持ちは多分違うと思う。」


お付きのものが勇者がそうチビの勇者に言っていたと教えてくれた。

報酬すら与えられなかったのにあの子のために自分の気持ちすら

告げずに帰っていった。


あの子が最近なにやら魔法陣の実験をしているのは多分

彼のところに行く気なんだろう。

危険も承知の上で・・

なのでコッソリ資料があの子に渡るように手配した。

欠損部位の復活のできる神官になるためという名目なら

神さまもお目こぼししてくださるだろう。


あの子が勇者と一緒の未来を歩けるかどうかは分からない。

彼の世界の聖女は勇者の妻だということだった。

もしかしたらあの二人も・・


そうなってくれるように祈りながら私は目を閉じる。

命の残り火がもうあと少しなのを感じながら・・

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