高校生勇者の弟。
兄貴が突然居なくなったのには驚いた。
オヤジもオフクロの国外に出てるこんな時にオレを
一人にして家出なんてとても考えられなかった。
だけど帰って来たのにはもっと驚いた。
メタボロなんてものじゃあない!
もう、まるで壊れたオモチャのようだった。
こんなになった兄貴を病院なんかに連れて行って
いいものなんだろうか・・・
兄貴の言う事もなんだか信じられない事ばかりだし・・
その時友人の〔手品〕をふっと思い出した。
〔手品〕と言ってたけどもしかしてアレって・・
兄貴の言ってた事と共通点もある気がした。
なのでちょっと脅し気味にムリヤリ相談に乗ってもらった。
結果・・クラスの友人だと言う二人を連れて来た。
絶句してる・・。
オレも絶句しちゃったから責められない。
でも、コレがオレや兄貴の妄想でもなんとかできるなら
少しでも兄貴の望みを果たせるなら・・・
友人と二人で交代しながら背負って彼等の師匠だと言う人の
マンションまで運んだ。そう遠くなかったし。
おんぶして歩くのは子供だけだろうに誰もこちらを振り向きもしない。
変だと思ったら目立たないように魔法を掛けて
くれたんだそうだ。
師匠さんは留守だったけど奥さんが対応してくれた。
体育館だと言う変な場所に連れて行かれて兄貴に魔法を掛けてくれるのを見た。
どうみても何かの加工映像にしか見えなかった。
でも兄貴は元通りになった。
暫く体育館でリハビリさせたいと言う奥さんの言葉で
兄貴を預けることにした。
明日は親戚の伯母さんが様子を見に来る日だけど
テキトーな言い訳を考えておかないとな。
秘密を守るように懇懇と友人に言い聞かされたけど
それくらいはオレだって分かってる。
あんな力を奥さんが持ってるなんて分かったら
騒動どころの話じゃあ済まないだろうからな。
手足も胴体も復活した兄貴はケリを付けるためだと言って
召喚された世界に出かけて行った。
あの友人のクラスメイトその他が付いて行ったけど
帰ってくるまで心配でしょうがなかった。
無事に帰って来てくれてホントにホッとした。
あれから兄貴は時々あの体育館に通っている。
この世界で勇者の力は必要ないのだけれど・・
持っている力はどこかで使いたくなるものなのかもしれない。
でもソレがコントロールできなかったら迷惑極まりない。
ココにも神さまはいて世界の管理と運営をしてるんだそうだ。
迷惑なヤツだと認定されてしまわないためにもあの体育館に
通ってるのかもしれない。
兄貴がオレの兄貴をやってくれてればオレはホントは
兄貴が勇者でも魔法使いでもそれこそ魔王でも
構わないんだけどな。