飛ばされただけの御者。(セリフも無かった、、。)
貴族の館に勤める者は端な者でも身元のしっかりした者が求められる。
オレはそうではなかった。
でも旦那様はそんなオレでも御者に雇ってくれた。
まあ、ミソッカスな三男さま専属だけど。
あの方が旦那様の後を継ぐなんてことは天地がひっくり返っても無いだろう。
上のお二人よりどんなに出来が良くても・・
それでも大使として出かけられた旦那様を追いかけて荒野の向こうのオークの国に
潜入するなんて言いだした時には、アホか! コイツ!! って思ったね。
結局御者として付いては来たもののもうお役御免って思った。
後ろの十頭もいるオークに追いつかれたら女騎士だけじゃあ敵いっこないのは
兵士ですら無いオレにも分かった。
気が付けば飛ばされてるのが分かったのが最後だった。
ああ・・コレで死ぬんだな・・って思ったよ。
なのに目の前に変なオッサンが居て回復魔法なんかかけてくれてるって
何の冗談かっての!
ガキを二人連れた弱そうなオッサン。
でもガキどもはムチャクチャ強かった。
オークの死骸の始末なんかしてたけどあの威力ってとても
並の魔法使いじゃあ無理だろう。
坊ちゃんは旦那様を助けるのにあのアヤシイ三人に依頼をしたらしい。
オレは世話係のオバサンと砦の街で留守番だったから良く分からなかったけど
アイツラは勇者だったんだそうだ。
オークの国は解散で荒野の廃墟になってる神殿を復興させるってことに
なったようだ。
まあ、ホントに良く分からないけど坊ちゃんは神官になるんだそうだ。
貴族で出世できるとは思えない立場だったからかえってラッキーなんだろうな。
オレは最近御者のほかにアノ三人が置いて行ったトカゲの世話をしている。
死にそうな目には遭ったけど死んでないし失業もしなかった。
坊ちゃんや旦那様が死んじまったら失業決定だったろう。
オレにもラッキーのおこぼれが来たのかもな。
戦争が起こりそうだったけどソレもあの三人のおかげで回避されたんだそうだ。
どう見てもアヤシイヤツラだったんだけどなぁ。
まあ、旦那様も坊ちゃん以下の一行も助けられたんだ。
勇者だろうが異世界人だろうが感謝してもバチは当たらないよな。
神殿が復興したらオレもお参りさせてもらえるといいな。
坊ちゃんが神官ならきっと大丈夫だろうと思うけどな。