弓のお姉さん(護衛の騎士)。
ハッキリ言って私が護衛をしている坊ちゃんは三男で
家を継ぐ可能性はゼロだわね。
まあ、女で弓くらいしか取り柄が無くてあまり強くも無い
家柄もさほどじゃあない私にはこれくらいのところがふさわしいのかもね。
ノンキに護衛の勤務をしてたんだけどある日坊ちゃんが
荒野の向こうの国に行くと言い出したのよ。
驚いたのなんの!
旦那様が大使として出かけられたのは知ってたけれど
坊ちゃんが行く必要なんてないだろうに。
置いて行かれそうになったけれど子供を一人でそんな
遠くまで行かせられるわけもないわよね。
渋々付いて行くことにしたの。
旦那様ほどの大物でもないただの貴族の子弟の物見遊山な気軽な旅・・
という設定だったはずだったんだけどねぇ。
途中の街で旦那様の消息が途切れたと兄君からの連絡が!
ココで引き返してくれないかなぁと思ったのに坊ちゃんは
「探す! 見つからなくても情報を探る! 」と言う。
まあ、こっちが見つかっちゃったんだけどね。
荒野に逃げ込んでも兵士どもは追いかけて来た。
弓で応戦しても敵うはずもない。
もうだめだ! と思った時に魔法が炸裂したのが見えたけど
馬車がひっくりかえったのでそのあとは記憶がないわ。
気が付いたら変なオッサンが回復魔法を掛けてくれていた。
なんかヤだったけどお礼は言わないと・・
坊ちゃん以下全員無事。
助けはオッサンと子供二人。
魔法を使ったのは子供達らしかった。
坊ちゃんは臨時の護衛を依頼した。
またオークがゾロゾロ来たら私じゃあとても無理だもんね。
怪しい子供連れの迷子なオッサン・・
ココが荒野でなければ怪しさは薄かったかもしれないどなぁ。
結局街まで護衛してもらった。
何も持ってない私たちに食事まで提供してくれた。
どれもこれもみんな貴族用なんじゃあないかと思うほど美味しかったわよ。
荒野のど真ん中で食べる食事じゃあないわ、コレ。
御者も食べるのがもったいないとでも言うように大事に
ゆっくり食べていたわね。無理もない。
一体何者なんだろうと思っていたのだけれど神殿の廃墟にお供して
正体を知ってひっくりかえりそうになったの。
異世界の勇者なんて老人が子供にするおとぎ話なはずだったと思ったんだけど。
私には見えなかったけど坊ちゃんには神さまのお姿が
見えたんですって。
勇者たちがオークの国の王を元の世界に帰して神殿の復興を
坊ちゃんにさせることになるなんてねぇ。
私はどうなるのかと思ったけどそのまま坊ちゃんの護衛を
続けることになっちゃった。
いずれは神殿所属の騎士と言うことになるんでしょうね。
神官と神殿を守護する聖騎士・・
あ! カッコいいかもしれないわ。(笑。)
でもまだ、神殿は廃墟だし王都には〔法王〕さまなんてのもいるんだよね。
アレって貴族はほとんど無視しちゃってるんだけど旦那様は
どうするつもりなんだろう。
今回は対抗勢力にハメられたみたいだけどソコは一応二大勢力の一方の
重要人物だったはずだから転んでもタダでは起きないはずよね。
そういうのを間近で見られるかもしれない。
護衛が任務でももうオーク十頭に追いかけられるほどの危険は
無いだろうしね。
死にそうな目にも遭ったのに弓のお姉さんのノンキな性格は
死ぬまで治らなかったとさ。めでたしめでたし。