坊ちゃん貴族(大使の三男)。
兄達の会話を聞いてしまった。
聞こうとおもったわけじゃあなかったんだけど。
父はきっと殺されるだろうと!
殺されることが役目なんだとも言う。
殺されて戦争のキッカケになることが任務だと。
何で父にそんな役目を!?
思い当たるのは政敵のあの貴族の派閥だ。
多分父はハメられたんだ!
戦争になって勝てるんだろうか?
あっという間に荒野の向こうの人の国を属国にしてしまったオークの国。
魔物の国なんて今まで世界の何処にも無かった。
父が殺されたら戦争にまっしぐらだろう。
なんとか死なずに戻ってもらわなければいけない。
兄たちが諦めているなら私がなんとかできないだろうか。
父が死ぬのを手をこまねいていられない。
ともかく潜入して様子をさぐることだ。
一人で行こうとしたのに世話係にバレた。
危険だと言うのに付いてくると言う。
「世話係も居ない貴族の子弟など怪しすぎます。
目くらまし代わりにお連れ下さい。
旦那様の心配をしてるのはアナタだけではありませんよ。」
結局、彼女と護衛に弓が得意な女騎士、父に恩義を感じていると言う御者の
四人ででかけることになった。
荒野の外れの砦の街まで来たら父からの連絡が途絶えたと
兄からの情報が待っていた。
困惑しつつ潜入したが牢に閉じ込められているという情報しか得られなかった。
しかも怪しまれてオークの兵士に追いかけられて荒野に逃げ込むはめになった。
思わず神に祈ってしまった。
だが、神はおられたようだ。
突然のように現れて十頭ものオークの兵士を瞬殺した。
しかも私と同じくらいの子ともっと年下の子。
大人も一人いたがあまり強そうではなかった。
彼等の助力で砦の街まで戻った。
ココの責任者は父の友人なので協力を仰ごうとした。
相談しているうちに彼等がポンと現れて拘束する気なら出て行くと言い出した。
「帰り道を探さないといけない。
できたら神殿にもお参りしたい。
アンタらにつき合う義務も義理も無い。」
神殿は無い!
荒野の真ん中にあったが魔物の氾濫でもう廃墟だ。
だが彼らは神殿に行って神さまにお祈りしないと帰れないらしい。
なので戦争に巻き込まないことを示して協力を縋るようにして願った。
何とか説得できたのはあの弱そうな大人がいたからだ。
彼の言葉には子供達も素直に従った。
大人への敬意はあるらしい。
子供達のほうがはるかに強いと私にも分かるくらいなのに。
・・・神さまがホントにおいでになってしかも私に神官をせよと
宣われるとは思わなかった。
可愛らしいお姿の神さま。
でも、人とは明らかに違う存在感・・
勇者達は神さまに依頼されてオークの国を解散させ召喚されて
殺されかけたと言う〔魔族の勇者〕を元の異世界に帰還させたと言う。
そして属国だった人の国に交渉して神殿の復興のために寄進と奉仕を約束させた。
そして私は神殿の最初の神官ということになった。
王都に法王を名乗る方がおられるのは知っている。
荒野の神殿が復興できたらお招きするべきかもしれない。
まあ、そのあたりのことは父に相談しよう。
復興の助力を王に具申してくれるそうだから。
属国だった国も私たちの国も協力して神殿を復興するなら
戦争の心配なんかをしなくて済むようになるかも・・
父を救ってくれることを望んだだけだったのに望んだ以上の事を
実現してくれて神殿に寄進までして帰って行ったあの異世界の勇者たち・・
彼等は私と同じ歳だそうだ。
神官にはあれほどの強さは必要ないとは思うけれど
あれくらい神様や皆のために役立つように成れたら・・
彼等が残して行ったトカゲたちを見ながらそう思った。