ダークエルフ。
ダークエルフは普通のエルフとは違う。
見掛けが違うだけで中身は同じだというヤツも居るが我らのほうが
ずっと優秀なのだ。
連中は認めないがな。
だがアレには我らの魔力でも対抗できなかった。
傷一つ付けられないなんて・・なんてことだ。
全力で排除に掛かったのに・・
最初のゴーレムが現れた後で次が来ると予想して転移の妨害もしてみたのだ。
成功はしたがじきに戻ってきてしまった。
しかもあの台数・・・
対抗手段に窮して異世界から勇者を召喚しようという声が上がったので
ダメモトで試すことになった。
でも来たのは成人前の子供な上に勇者じゃあないという。
困惑しているところにもう止まったはずの魔法陣が作動して
大人と子供が出現した。
最初の子の父親と友人だという。
父親が勇者だったがどう見ても弱い・・・
子供達の方が強いだなんてどんだけなんだ! なのに怒り狂ってる。
子供達はなぜか冷静で敵の情報を欲しがった。
水鏡で見せたら後から来た子が見覚えがあるという。
彼によると
・別の異世界に誤転移していた。
・魔法でもキズ一つつけられなかった。
・搭乗員がパニックを起こしてくれたんでなんとかなった。
・あの数だと全員パニックは無理。
あー、すでに迷惑をかけてたらしい。
だが言わないでおこう・・・言えないよな。
「機能を停止できなくても動かなくすることはできないかい。
車だって脱輪したり雪で滑ったりすれば機能は無事でも
コントロールできないだろ。
ひっくり返したりまで行かなくても動けなくさせられそうな気がするんだが。」
大人の勇者は弱そうだけど頭は悪くないらしい。
なのでもう一度交渉を呼びかけた上で試してみることに。
あー・・冷静な訳だ。
我らすら圧倒するほどの魔力を使いこなしている。
特に後から来たチビっこい子。
結局誤解されていたことが分かった。
我らのドコが魔族なんだ!!!
でも森を壊したい訳でも無くただ戦争に備えて回復薬の原料の
〔ちょっと変わった薬草〕が欲しいだけだった。
でもアレは量産はできない。
畑では育たないのだ。
チビな子が解決策を持っていたのには驚いた。
まばらに木を植えて半日陰の畑で育ててみろと言う。
それは森ではない・・林でもない・・・
だが薬草はすくすく育った。
アレはちゃんと精製すれば貴重な薬になる。
我らの間でも貴重なモノだ。
量産できるなら有り難いことだ。
なので時々覗いて成長の確認調査を手伝っている。
魔族との戦争が始まれば薬は今より貴重なモノになるだろう。
我らにも影響が当然あると思う。
薬草の増産を我らもしなければならないかもしれない。
まあ、あの薬草のデータを増やしておくのは悪くない。
人族の薬のレシピは我らのモノより劣ったものだった。
長老が許可してくれたので我らのレシピを教えた。
戦争になったとしても人族が踏ん張ってくれればエルフやダークエルフへの
影響を少なくできるかもしれない。
あの勇者一行は神殿で祈っていたかと思ったら神さまの助力を得て帰って行った。
我々はたいした礼もできなかった。
欲しいというのであの〔ちょっと変わった薬草〕とレシピはあげたのだが
他の世界でアレが育つだろうか?
無理矢理な召喚は世界に穴を開けてしまうので
できたらしないようにと言い置いて行った。
穴か・・・
危険を承知でやってしまう事態にならないように皆で努力するしかないだろう。
あのゴーレム隊の隊長とまた話してみよう。
こんな国の外れの森に住むダークエルフでも少しは
できることもあるかもしれないからな。