残念ロボ隊・隊長。
オレは元々工兵隊の隊長だったんだ。
それがこんな前線(予定)から遥かに離れた国のハズレに
派遣されるなんて思ってもみなかった。
確かにこのロボは最新鋭の機体だが本来はこんな畑づくりなんかに
使うような代物じゃあない。
基地の建設や陣地の設置、工兵隊の仕事のために造り出された
と言っていい代物なんだ。
冷戦はもうじき開戦になりかねない状況に陥っている。
畑づくりなんかと思ったがこの森の周辺でしかとれない
〔ちょっと変わった薬草〕は欠損部位の復活薬の原料だ。
開戦となれば負傷者は当然増える。
それに今の内から備えようということらしい。
なのにこの森は魔族がはびこっている魔の森だった。
最初のスタートから転移事故まで起きてしまって予定が大分遅れてしまっている。
魔族の連中は妨害してきたがまだ開戦にはなってないから
むやみに殺す訳にもいかない。
そう思ってイラ立ちを抑えつつちょっと脅してやった。
だが、妙な人間が現れて戸惑ってしまった。
魔族とガキ二人と頼りなさそうなオヤジ・・・
オレ達がほとんど臨戦な気分で仕事をしてるのにコイツラは
魔族の味方なんかしてるのか!
頭に来て脅しに力が入ってしまった。
だが、ガキどもはタダのガキではなかった。
あっという間に土魔法ですべての機体を拘束してしまった。
転移事故にあってしばらく行方不明だった搭乗員の一人が
連中は知り合いだと言って間に立ってくれた。
事故で飛ばされた先で会って帰還を手伝ってくれたそうだ。
う~ん・・恩があるのか・・
オマケにココは魔族の森ではなくダークエルフの森だと言う。
魔族に間違えられたことはどうも怒りのタネになってるようだ。
実を言えばオレは魔族に遭ったことは無い。
ダークエルフもモチロン無い。
普通のエルフもダークエルフも森に引きこもっていると言っていいだろう。
人族との接触はほとんど無いし接触したいと言う意思も多分無いだろう。
ダークエルフが言う事にはあの薬草は畑で作る事はできないそうだ。
アレを大量に育てることが目的でココに来たのに・・
でも片方のガキ、いや子供が解決策を教えてくれた。
森の外側の浅いところで育つ薬草なので密集しない程度の木を
植えて半日蔭な畑にすれば良いと言う。なるほど。
ダークエルフはこれ以上森を壊さないなら土地を貸しても良いと言う。
魔族でないなら国の都合を押し付けるのもはばかられる。
ココは人が中心の国だが他の種族も多い。
余計な刺激は戦争に突入しかけているこの時期には避けるべきことだろう。
我々の目的はアノ薬草を量産することだ。
ダークエルフとモメゴトを起こすことではない。
誤解のワビも入れて多少の譲歩をすることにした。
あの妙に頼り無さそうなオヤジは意外なことに交渉相手としては手強かった。
だが、向こうにはあの子供達がいるし連中は魔族でもないし
ココは魔の森でもない。
ダークエルフたちが協力してくれるなら薬草の量産もたぶん上手く行くと思う。
しかし最新の機体だったのに軽く行動不能にされてしまった。
まさか土魔法なんかにあんな威力があるなんてなぁ・・
開戦前で良かったかもしれない。
ガキなんぞにやられてしまったのは恥だとも思うがこれで
相手が魔族だったりしたらと思うとゾッとする。
オレの恥なんぞより国や仲間のほうが大事だな。
いいようにヤラレタことはキッチリ報告することにしよう。
仲間がヤラレルのを防げるならまあ安いもんだろう。
あの子供の言う通り薬草は半日陰な畑で良く育った。
上の連中の希望通りの量は確保できそうだ。
ダークエルフの連中も時々来て生育状況のチェックなんかを手伝ってくれる。
アイツラも育ち具合には興味深々だった。
連中の持ってた薬のレシピだとオレ達のモノより回復速度がかなり早いようだ。
コレは有り難い限りだな。
仲良くなったせいか大した対価を要求するでもなく教えてくれた。
ガキども、もとい子供達にヤラレて大恥をかいたがかえって
仲間の役に立つ事が出来た気がする。
あとは戦争が回避と行けば万々歳なんだけどな・・