生贄儀式の祭司。(召喚主)
もうこれで終わりだと思った。
悪霊を完全に封印するのにはコレしか無いのだと。
そして最後の儀式が終われば私も生贄になろうと思っていた。
それが生贄になってくれた者たちへの償いになるだろうと。
だが最後の儀式をする前に悪霊があふれだしてしまった。
私は・・・抗うこともできずに飲み込まれた。
それでも意識は残っていた。
生贄のために召喚した子供達の一人が憑りつかれて仲間と戦っていた。
体を乗っ取られても彼は抗い続けていた。
しかも自分を殺せ! と仲間に訴えていた。
私は何も・・何もできなかった。
ただただ彼らの闘いを見ているしか・・
仲間の少年が悪霊ごと乗っ取られた彼に光属性の魔力で切り付けるところを・・
ああ・・ほほえみとともに言った
「サン、キュ。」の響き・・
あれが感謝の言葉だということは間違いないだろう。
仲間の少年が狂ったようにかけ続ける回復魔法の響きを聞きながら
私の意識は途切れた。
気が付けば妙なところに居た。
真っ白な空間。
川と白い花の咲いた草原が切り取られた絵のように窓のように壁に見えている。
そしてあの少年たち・・・
「許してよ! コイツはまだ13だ!
アンタの半分も生きてない!
許してよ! 連れて行かないでくれよ、オレの友達なんだよ!
許してよ! オレのせいで死にかけてるって分かってる。
でもあの世界に一緒に居ていいって言ってくれたんだよ!
神さま! 神さま! 神さま!
今更ですが報酬下さい!
コイツとあのオレ達の世界に居たいんです。
どうかコイツを助けて下さい! 」
胸をえぐられるようだった。
私は・・私のしたことは・・・
その瞬間確かに私は見た。
彼等に神の加護が与えられるのを!
そして彼らは河原から消えた。
河原を風が渡って行った。
彼等はどこへ・・・
『心配はいりません。彼らは現世に戻りました。
今時、魂呼ばいを成功させる者がいるなんてねぇ・・
魔族の神の加護があったとしてもほとんど無理なはずだったんですが。』
振り向けばそこに居たのは彼らとそう変わらない少年だった。
だが、見かけ通りの存在ではないことは未熟な私でも分かる。
『彼らのおかげで悪霊は雲散霧消しました。
取り込まれた霊達もほとんどバラケましたから生き返らせるのは無理ですが
ちゃんと彼らの希望に沿った行く先に導けましたよ。
さて・・アナタはどうしたいですか? 』
どうって・・私は罰せられるのでは?
『罰がほしければあげてもいいですよ。
体はもう無いですから転移は無理ですがお望みの世界に転生もできます。
代々されてきたことなのでアナタだけが悪い訳でも無いですし
最悪のケースのはずの悪霊の化身の顕現も彼等によって防がれました。
勇者の彼はアナタに同情的ですしね。
厳罰を与えたいとは思ってません。』
私は・・彼らに詫びることはできるでしょうか・・
『あー・・あの子たちは詫びてほしいとは思ってません。
あなたを恨んでも居ません。
なので詫びは受け取ってもらえないでしょう。』
でも・・このまま、新しい人生をと言われても・・
『う~ん・・転生もお望みではないと・・・
ではどうでしょう。ココで私の仕事を手伝ってみませんか。
どうにも困ったことに慢性的な人手不足なんです。』
一体ココで何を?
『何ってこうやって魂を行くべきところに誘導してるんです。
滞ったりすると世界のバランスに影響が出ますからね。
世界の存立を危うくしかねないんです。』
私でお手伝いができるんでしょうか?
『まあ、ダメだったら素直に転生してください。
ココでの仕事は結構キツイですよ。
罰にも詫びにも感じられるくらいには・・ね。』
結局この方のお世話になることにした。
彼らの様子も少しは見せてもらえるそうだ。
私はココから彼らの無事と幸福を祈ることにしよう。
彼等は私のことなど多分すぐに忘れてしまうだろうけれど。