おとーさん勇者(鈴木氏)。
急な出張が決まって準備に家に帰ったら息子が
リビングのソファで昼寝をしていた。
ノンキな奴だ。
先日プチ家出をしたので心配したのだが本人はさほど気にした様子もない。
月足らずの未熟児でオマケに病弱だったせいか中学生になったのに
いまだに小学生に見える。
家出も成長の証と思えば喜ぶべきことかもしれない。
そう思いながらもう出なければと思いながらしばらく息子の顔を眺めていた。
さっさと出るべきだっただろうか。
気が付けば足元が光っていた。
昔読んでたライトノベルのように召喚されたのだと理解できるまで
しばらくかかってしまった。
息子まで一緒に召喚されてしまっている。
私の召喚に息子を巻き込んだのか?
帰還には勇者をしないといけないという。
こんなオッサンにそんなことができるか不安だが息子だけでも
もとの世界に戻してやりたい。
「お前とかあさんのところに帰らないとな。」
そうは言ったが帰れる保証などどこにも無いのだ。
訓練、ダンジョン攻略と進んだがなんだか妙にラッキーな事が続いてくれる。
ボス戦でやられたと思ったのに最後のトドメを息子がしてくれて
ギリギリ勝てたし。
「とーさんの一撃が効いてたからだよ。」
息子がそう言ってくれて嬉しかった。
息子は子供なので同情されたのか色々情報を集めて来た。
戦う相手は魔族の勇者だそうだ。
ところがやってきた相手は取引先の営業さんだった。
彼は王さまにすり替わっていた魔王の弟を捕らえて紛争をあっというまに
解決してしまった。
こんなに有能だとは思ってなかった。
そう言えばあの会社のトップセールスの営業さんが
「アレはおマヌケに見えますが油断できるヤツじゃないですよ。」
なんて言ってたな。
とてもそうは見えなかったから聞き流してたんだけど。
息子のプチ家出は召喚だったそうだ。
以前も彼に連れ帰ってもらったと言う。
親子で彼に元の世界に帰してもらった。
戻ったのはいいが真夜中でとても出張には間に合わない。
でも彼が転移魔法で送ってくれると言う。
「今回のことは内密にお願いします。」
あー・・言っても多分信じちゃもらえないのは確実だ。
連れ帰ってもらった恩もある。
黙って置くのは簡単なことだ。
だが息子はどうやら召喚されやすい性質だと言う。
対策を講じてくれると言われて少し安心したが、不安は隠せなかった。