土漠の神殿長。
そこに地竜がいるのは分かってた。
でも大した被害も無いので放って置いた。
手出しさえしなければなんてことも無かったから。
でもいつのまにやら村とか巡礼者に被害が出始めた。
そうなると放っては置けない。
討伐隊を派遣したが全滅した。
神様にお伺いを立てたが対抗できる勇者は居ないと言われた。
なので3代前の神官長が実行したことが有るという記録を元にして
勇者の召喚を試みた。
神様が反対されたのは分かってたのだが聞こえないフリで。
だが・・途中で術式がバラけてしまったのだ。
召喚されたはずの勇者もどこかに飛ばされてしまった。
あー・・どーしたもんだろう・・
どーしようもない・・・
ところが次の日に神様から神託が来た。
「召喚されたヤツが神殿に来てるから下手に出て頼め! 」
飛んで行ったら確かにココの住人ではない少年がいる。
土下座して謝罪した。
さほど怒ってるふうではなかった。
「勇者じゃないんですが、神さまから頼まれたのでお試しで討伐をしてみます。」
勇者じゃない!?
それでも討伐をしてくれると?
なので神殿の宝物庫から以前の勇者が使ったと言う宝剣を彼に渡すことにした。
効果のほどは分からないが彼は武器を持ってなかったので。
後で聞いたらココで巫女の修行をするためにやってきた姪を巡礼路で
亜竜から助けてくれたと言う。
姪の恩人だったとは・・・
その日のうちに帰って来たのにはもう驚かなかったが
地竜の正体だと渡されたトカゲを見て驚いた。
神様がペットだと言ってたトカゲ・・・
あー・・神様にお伺いを立てたら認められた。
どーすんだよコレ!
ご指名で姪が世話係になった。
神殿の中に置けば大きな地竜には変身したりしないそうだ。
ご自分のペットならちゃんとご自分で世話してほしい。
討伐してくれた彼には報酬代わりに宝剣を渡すことにした。
ちょっとどころかだいぶもったいないとは思ったがなにしろ迷惑しかかけていない。
姪の恩人なのも確かだし・・・
ところが彼は断って来た。
「ココの勇者はまだ小さな子供だそうです。
いつか彼がソレを使う時がくるかもしれません。
そのときまで保管しておいてください。」
勇者・・居たんだ・・ココの世界にも・・
どうりで神様が召喚に反対した訳だ。
まあ、その勇者の子が大人になるまであの地竜を放置もできなかったんだけど。
でも、勇者が居ると分かっただけでもありがたい。
宝剣もちゃんと宝物庫に納めて一安心。
姪はなんだか赤い顔で彼に礼を言っていた。
・・・まあ・・帰ってしまうんだからどういう気持ちを持とうが
姪の将来には影響はないだろう。
彼だってまだ子供なんだし。
『もう召喚なんかするなよ! 』と神様から叱られたが
ペットを放置したのは誰だか思い出していただきたい。
彼を迎えに来た向こうの世界の管理神だという妙に軽い雰囲気の神さまの
微妙な表情が忘れられない。
笑顔で帰って行ったあの彼のこともだが。