魔王の側近。
先代の魔王さまの頃からずっとお側にお仕えしてきた。
位を継がれる前も継がれてからもずっとずっと努力されて
父君に劣らぬ王になられたと思う。
そう思っていた。
あの人の国の時候の使者にお怒りになるまでは・・・
まるで人変わりされたようになられて戦争に突き進むなど
まるで悪夢を見ているようだった。
勇者には感謝している。
勇者が現れたことで魔王さまに変化が現れた。
停戦にもなった。
先代様が丹精された庭は一時、ムチャクチャになったが。
それでも、魔王さまにかかっていた呪いは解けた。
以前と変わりない・・いや変わったとは感じさせない
魔王さまに戻ってくださった。
コレで元通りと思っていたのだが・・・
前世で魔王さまが掛けた呪術のせいで寿命が短くなったという
勇者を眷属にされると聞いて驚いた。
勇者に感謝はしているのだが・・眷属・・・
あげくは『たまにでいいから勇者と遊びたい。』と言われた。
そうして今日はココに居るわけだ。
こんな絶海の孤島だなんて・・・
それでも魔王さまは楽し気に勇者と戦っている。遊びで。
魔王さまには遊びが足りなかったのかもしれない。
先代様のようにと我々もご本人もそのことだけに一生懸命に
突っ走っていたように思う。
「勇者は拘束具をつけてるからフルパワーじゃあない。
ココの魔王に合わせてパワー調整してるんだ。
本気でやったら世界をまるごと壊せるヤツなんだ。
どうだ? コワイだろう? 」
勇者の弟子の少年に魔王さまの前世のコピーが話していた。
アレでもフルパワーじゃあないのか・・・
魔王さまは多分全力だろう・・遊んでもらっているのか。
そ・・それでも彼は魔王さまの眷属だ。
主は魔王さまだから別に彼に劣る立場ではない!
魔王さまも対等な姿勢は崩されないしな。
だが・・問題は・・勇者の妻になったという聖女だ。
なぜか魔王さまは彼女が苦手らしい。
表情を変えられなくても動揺しているのが分かる。
前世魔王もどうやら同じなようだ。
弟子の少年も魔王さまたちの苦手意識を気づいているようだ。
なぜだ?
島から戻って長老たちや側近たちにさりげなく相談してみた。
聖女に苦手意識をお持ちのようだと言ってみる。
聖女だからではなく女性だからでは? と言う者がいた。
あー・・王族の周りには滅多なものは近づけないのが普通だ。
魔王城は確かに女性の姿がすくない。
先代の王妃さまが嫉妬深かったことが影響しているかも・・・
そうか・・女性に免疫がなかったかもしれない。
しかも聖女はあの庭で重大な働きをした。
苦手意識が芽生えても無理はない・・
でも待てよ!
魔王さまもそろそろ女性と付き合いがあってもおかしくない
お年頃になられている。
未来の王妃の選定にはまだ早いとは思うがそういうことも
そろそろ視野に入れるべきだろう。
長老たちはもうそんな歳になったかと感慨深げだったが
女性の存在にも慣れるべきだということは了承してくれた。
まずはメイドの人数を増やすことにしよう。
それから貴族たちの登城に妻子の同伴を許可するか・・
見えるところの女性を増やしてみないとな。
王妃候補になれそうな女性たちを内緒で探させてみよう。
なんだかウキウキ気分なのは気のせいじゃあないよな。
意識していなかったが「箱入り」にお育てしてしまったかもしれない。
で・・でもまだ大丈夫だ。
魔王さまはこれからの方なのだから。