鎧武者な神さま。
勇者が遊びにやってきた。
ココはオレには異世界だったがさすがに500年も居ると
それなりに愛着も沸くもんだな。
でも元居た世界に帰ってみたい気持ちもまだ消えてはいない。
なので里帰りさせてもらうことにした。
勇者がいろいろ手をまわしてくれたしココの神さまやら元の世界の神さまやらも
協力してくれたそうだ。
もっともオレはもう体は存在しないので生きてる連中よりは結構簡単だそうだ。
勇者の時代への移動だとオレが居た頃よりは30年くらいたってるようだが
まあ、ぜいたくは言えないだろう。
30年くらいならまだ知り合いも残ってるかもしれないしな。
もっとも残ってても接触する訳にはいかないんだが。
勇者と入れ替わりで元の世界に里帰りすることになって
ちょっとウキウキ気分だった。
だから勇者の連れて来た小学生、もとい中学生にも寛大な気分だった。
ガキでも油断ならない強さだと気づくまでさほどかからなかったが。
まあ、勇者が弟子扱いするだけのことはあったな。
オレの鎧が気に入ったらしくアチコチから観察した挙句動いているところが見たい
と言うので稽古をつけてやった。
手加減はしたがやってるうちに力が入り過ぎて行くのが自分で分かって焦ったね。
まあ、本気でやったらメタボロにしかねないので鎮守の森の魔物を狩らせてみた。
あきれたことにギリギリながら一人で仕留めやがった。
勇者は満足したようでニコニコしてた。
ふ~ん・・どうやらお気に入りらしいな。
脳筋の騎士の所へも行くらしい。
アイツは手加減は苦手なようだからアノ弟子がどういう反応をするか
ちょっと楽しみなような気もしたよ。
里帰りは満足と納得のいくものになった。
30年もすればかなりの変化はある。
でも変わらないものもある。
家族は無事な30年を過ごしていた。
オレはもう居ないことになってはいたが・・・
ココのお稲荷さんの関係者だという姉さんが家族の夢に入らせてくれた。
「なんで今頃夢に出てくるんだ! 」と怒りつつ喜ぶ家族に
どこまでホントの事を言うべきか迷った。
でも、信じてもらえなくても聞いてほしかった。
ごめんな・・自己満足なんだって分かってるんだけど。
異世界で土地神とはいえ神さまをしてるなんて信じられないだろ?
でも家族は「コレは夢だからなぁ・・」と言った。
「また、夢でいいから来てくれよ。」と言ってくれた。
うん・・またくるよ。
お前たちの幸せを祈ってる。
一応神さまだから効きそうな気がするしな。
勇者の帰宅に合わせてオレは森の社に帰った。
あと1000年ここで過ごすことになっている。
たまには勇者もくるだろうし脳筋騎士みたいなヤツも来そうだから
前の500年よりは退屈しないで済むだろう。
1000年たったらどうするかはあのエルフあたりに相談することにしよう。
アイツは意外と面倒見がよさそうだしな。