義賊の勇者。
ゲーム制作の会社に勤めてはいたが自分が勇者をやらされるなんて
考えもしなかった。
ゲームはストレス解消手段だが実戦はストレスそのものだ。
それでもウォーシュミレーションゲームの経験があったせいか
それなりに魔族の軍隊には対抗できた。
隷属の首輪さえなかったらこんな戦争のコマになんかにされないで
逃げてやったのにとずっと思っていた。
戦況が一段落して魔族の連中が撤退した頃ほんの偶然だが首輪が壊れた。
なので逃げた。
タダ働きなのが気に喰わなかったから偉そうにしてた貴族やら、
首輪を見てあからさまに馬鹿にしてきた商人なんかの財産を頂いてやった。
裏の社会はどこにでもある。
その手の友人は元の世界にもいて領分を侵さない限りは友人でいてくれるもんだ。
そいつらに頼んで銀貨に換金してアチコチ寄付して回ったよ。
金貨だとかえって危ないことになったりするからな。
まあ・・義賊ごっこだね。
だが、ちょっとやりすぎたらしい。
次の勇者を召喚してオレを始末する気になったそうだ。
〔お友達〕連中の情報だとまだガキな女の子らしい。
どうせまた、首輪で言う事を聞かせようとしてるんだろう。
隠蔽も隠密も持ってるので様子を見に行った。
泣いてる女の子なんて見るもんじゃあねえな・・
ということで救出したが・・首輪が外れない。
オレと一緒だと分かると始末されかねないので王都から出てみることにした。
郊外の草原まで来たらいきなり攻撃された。
慌てて彼女を突き飛ばして応戦したがかなり強い。
ココの軍隊の連中くらいには対抗できそうだった。
だが、オレは勇者だからな。ぶっ飛ばしてやった。
追撃! と思ったらなんだかチッコイ奴が割って入った。
こんなチビ! と思ったのが間違いだったよ。
あっという間に反対にぶっ飛ばされた。
気が付けば勇者の彼女は先に攻撃してきた奴にすがって泣いていた。
あー・・なるほど・・・
オレをぶっ飛ばしたチビも二人の間には入れないようだった。
ハハハ・・お気の毒さま。
結局彼女を迎えに来た仲間だと言う。
オレだと外せなかった首輪もチョイと言う感じで外した。
チビは何度も召喚されているらしい。
同じ世界からの召喚者だと分かって連れて帰ってもらえた。
ゲームのようでも現実はどこもきびしい。
コッチの世界も向こうも現実なので当然キビシイ。
クビにはならなかったがデスゲーム並みにこき使われる日々が始まった。
ココの最強勇者が造った〔体育館〕の時間のズレに気付いたので
有効活用させてもらっている。
チビのマモル達には気づかれてるがそこはちょっとしたアメで誤魔化せた。
モニターが増えたと思えば安いもんだ。
意外な収穫は変人な元魔王だな。
アレほどのハードユーザーはそう居ない。
ヒヒヒ・・こっちも有効活用させてもらおう。
勇者と魔王が一緒に住んでるあのマンションをガキどもは
ビックリマンションと呼んでいる。
お前らだって充分〔ビックリ〕なヤツラなんだってのは気づいてるのかね?
まあ、強くてもビックリでもまだガキだからなぁ。
最強勇者もいろいろ大変だな。
ちょっとくらいは相手をしてやれば少しは帰還させてくれたことの
礼くらいにはなるかもしれない。
強さじゃあ敵わなくてもこっちは一応大人なんだしな。