オッサン勇者。
召喚されたときは二十歳そこそこだった。
隷属の首輪を付けられて魔族と戦わされた。
召喚主の王はワビてはくれたが首輪は外してくれなかった。
延々と戦ったが魔族はしぶとかった。
なんとか北の山脈の向こうに追い払ったが
また来るかもしれない。
手の届く限りの連中を鍛えてはみたがなかなかコレ!
と言ったやつがいない。
もうそろそろ引退したいのだが。
首輪をはめた王はもう死んだ。
召喚を実行した魔術師も死んだ。
魔術師が戻せないことを死に際にワビてくれたが
それでどうなる訳でも無い。
現王はオレのことは目障りらしいが魔族が怖いらしくて
排除もできないようだ。
王都には入るな! と言いながらそばの砦に置いとくなんてな。
ココの連中では魔族の殲滅は無理だろう。
オレにもできなかったんだから。
ヤツラが戻ってきたらどうするか・・・
なので魔術師に教わった召喚陣で勇者を呼んでみようと
してみたんだが上手く行かなかった。
勇者がダメなら勇者になれそうなヤツならどうだろう。
成功はしたんだが・・・
なんというかアホ3人組とでも言いたくなるガキどもだった。
確かにその辺の騎士なんかよりはずっと強いんだが・・
やっぱりアホとしか言いようがない。
戦闘以外の所で魔族に出し抜かれそうだ。
ため息をつきながら月を眺めていたら妙な気配がした。
人なのに魔族の気配を纏って、隠蔽と隠密を使っている。
なかなかの腕だがオレには分かる。
チビッコいガキだった。
だが、コイツならもしかしてオレの後釜にできるかも。
そう思ったんだが纏っていた魔族の気配の意味が
分かった時には手遅れだった。
首輪を外され事情を聞かれた。
アホ3人組を探しに来た友人だと名乗った。
事情を説明してたら変な2人組がポンと出現した。
勇者と神さまだと言う。
帰る気はなかった・・
帰っても居場所なんか無いだろうし。
「ココに居るのがご希望ならそれでもいいですが
一度、里帰りしてみませんか? 」
里帰り・・
それはズシンと響いてくる言葉だった。
結局スッタモンダの末に元の世界に帰還した。
王にはもう首輪は無いことを伝えてあとは自分達で
対処してくれるように上申した。
確かに自分達のことはもう自分達でできても良い頃には違いない。
勝手な召喚をすると世界に穴が開くとは知らなかった。
焦ったね、魔族よりも危険なことをしちゃったらしい。
その辺も王と側近に教えておくことにした。
迎えに来た勇者と管理神だというエルフが時々この世界に様子を
見に来てもいいと言ってくれた。
ムリヤリ召喚された異世界でもやっぱり少しは愛着もあったようだ。
帰還してからはスキルの〔異言語理解〕を使って通訳とか翻訳の仕事をしている。
アホ3人組は体育館の稽古でオレに〔お返し〕をしたいらしい。
フン! やれるもんならやってみろ! (笑。)
友人だと言うアノチビはあっという間にオレなんかより遥かに強くなっていった。
オレの後継者どころじゃあないのは確かだろう。
さて、またあの世界に行って王に発破でもかけてやろう。
魔族を殲滅すると世界のバランスには良くないらしいが
ほっとくと人の領域を浸食されるからな。