プロポーズに舞い上がってる召喚主の妹。
奴隷のままでも良かったんだけどね。
でもプロポーズされるってあんなに嬉しいものなんだね。
兄はハッキリ言って魔術バカなのよ。
後先考えず魔術の研究に入れ込んじゃうんだもの。
魔王の討伐で頂いた報奨金なんかあっという間に使い切って
借金までしだす始末!。
なので勇者に相談したの。
彼は脳筋でバトルジャンキーな人だけどそれだけにお金を浪費することには
興味の無い人だったからそれなりのお金持ちだったのよ。
すぐにお金を貸してくれるって言ってくれたわ。
なんなら兄にくれてやってもイイと言ったんだけどそれは
兄のためには良くないわよね。
ザルとか穴のあいた器みたいなものなんだもの。
結局、彼に私を買ってもらうことにしたの。
まあ、抵抗はされたけど押し切っちゃった。
本音をいえば彼のそばに居たかったのよ。
自分の借金の所為で妹の私が奴隷になったとなればアノ兄も
少しは反省するかと思ったし、、、。
ところが反省なんかしなかったわね、アノバカ兄貴は!。
返せ戻せ!と乗り込んで来たくせに私の代金が払える訳でもなく
まるで駄々っ子のようにわめくだけ!
ウルサイだけで何の説得力もありゃあしない。
でも放っても置けないわよね。
結局闘技場で闘士をしてる勇者の彼の希望で彼に勝てる戦士を連れてきたら
帰してもいいということに。
まあ、彼って魔王を倒した勇者だからそんなヤツなんて
いる訳ないって思ってたわよ。
コノ世界にそんな強者は居ないと兄も分かってたから結局異世界から召喚したの。
でも二十人でもダメだったわね。
あの子が来たのはもう三十人くらいになった頃かしら。
強そうには全然見えなかったわ、チッコイ子だったし。
最初は彼に軽くあしらわれてるみたいにみえたのよ。
それが突然今まで見た限りで最大威力の火魔法を使ったの。
兄は魔術師だけどアレは多分魔導師か大魔導師レベルだわ。
長柄の得物で追撃をかけてたけどさすがにソレは彼には通じなかった。
「魔法を温存してやがったんだな。
オレでなけりゃあアレでケリが付いたと思うぜ。
だがお前のそのレベルじゃあもうそんなには魔法は打てないだろう。
いいぜ!打って来いよ。受けて立ってやる!!。」
「じゃあ、最大威力で行かせてもらいます。
死んでも文句は言わないでくださいね。」
魔王より生意気だ!とかなんとか彼は言ってたんだけどまさか
彼を倒すほどに雷魔法を使えるなんて思わなかったわ。
一度は立ち上がった彼は雹を山のように降らされて埋まってしまった、、。
まあ、勝負がついたらあの子がすぐに掘り出してくれたけど。
兄は帰ってこいって言ったけど帰りたくなんかなかった。
「彼の側に居られるように奴隷になったのよ!
たとえ解放されたって兄さんの所なんかには絶対帰らないんだから!!!。」
結局あの子は他の召喚者たちの首輪を軽く外して元の世界に
帰してほしいと要求してたの。
でもあんな首輪なんかハメるくらいだもの。
帰せる訳なんかないのよ。
「アナタは妹さんを思ってのことでしょうがオレにだって妹は居るんです。
弟だっています。
なのに親はもう居ないんです。
オレが帰ってやらないとアイツラは一緒に居ることすら
できなくなるかもしれない。
まだ最初の誕生日すら来てないのに!。」
そう言って崩れるように倒れちゃったの。
まあ、あのレベルで勇者の彼と戦ってたんだものね。
無理してたんでしょうね。
トカゲが乗ってたので追い払おうとしたら召喚者の一人に止められたわ。
何かと思ったらその彼が出したカードみたいな透明の板を
通して見たらトカゲじゃあなくてちっちゃなドラゴンなのよ。
あんなちっちゃなドラゴンって初めて見たわ。
目を覚ましたあの子が撫でてたからきっとペットか従魔だったのね。
兄は結局召喚者たちに一発づつ殴られて神さまに叱られて
隷属の首輪まで付けられたのよ。
まあ、私のためとはいえやり過ぎだったもんねぇ。
しばらくは神さまに色々こき使われることになったみたい。
あの子達召喚者は神さまに元の世界に帰してもらったのよ。
原因は私達勇者のパーティだったから許してもらえないかもと思いつつ
みんなにお詫びしたの。
「まあ、兄貴なんてバカなもんだよ。
こんなカワイイ妹なら尚更だ。
アンタに全然責任が無いとは思っちゃいないがそんなに
恐縮するほどでもないとも思うゾ。
あんまり兄貴を暴走させないでくれると有難いけどな。」
召喚者の一人がそー言ってくれた。
素直に頭を下げたわよ。
兄があんなことをするとは予想ができなかったんだけどね。
召喚者たちが帰ってから主人で勇者の彼がプロポーズをしてくれたの。
結婚してそばにいてほしいって。
「奴隷ならイヤでもそばにいてくれると思ってたけど
ソレはやっぱりオレの勝手でワガママだからな。
アイツに負けたから当然おまえは自由なんだがオレはお前に側にいてほしいんだ。
脳筋でバトルジャンキーでアホなオレなんだがダメかな?。」
兄がなんだかわめいてたけどそんなのは耳に入らなかったわ。
イエスしか返事は無かったわね。
おかげで足元がおぼつかないのよ。
舞い上がってるってこういう気分なんだって初めて理解できたわね。