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町というより農村だった

「お、おお……?」


思ってたのとちょっと違った。

お殿様が治めているのだから結構栄えているイメージがあった。

それこそよく時代劇などのテレビでみるような大通りがあり、店や家がずらりと立ち並び、そこを人がたくさん通っているような……そんなイメージだ。


しかし、現在目の前にあるのは広くはあるが農村である。

田畑が広がり、道こそ流石に整備されて商店はちらほら見えるが、百姓らしき人たちがせっせと働く姿がほとんどである。

教科書でいう弥生時代のイラストと現代の日本の山奥にある農村を足して二で割ったものに近い気がする。


「失礼かもしれないですが、もっと栄えてるものかと思いました」


「まあ栄えようにも京からは遠いし、城からは歩いて約一刻ほどかかるからのう」


一刻てだいたい二時間だったよね……。そんなかかるのか。

そこそこ離れてるんだ……。そりゃこのくらいなわけだ。


しかも、江戸時代ほど治安や運搬の制度は確立されてないはず。

戦もそこそこ起こるこの時代は将軍の御膝元や、天皇のいる場所でない限り、人がたくさんいたとしても、それを養える分だけの物資が集まることはあまりないということになるんだろう。


「城下であれば旅商人もそこそこおるし、輝宗様方が利用される店もあるからの。もう少し栄えておるよ」


「なるほど」


ここは城下町ではないわけですね。そりゃそうか。

城から少し離れてるんだもんな。


「さあ、薬を売りに行くとしようかの。この先にちょっとした出店に近いもんを建てとるんだ。そこでいつも売っておる」


「じゃあそこに行きましょう!」


二人でそこへ向かうと、すでに何人かお客さんらしき人影があった。

どうやら待っていたらしい。

おばあさんやおじいさんが多いなか、一人だけ少し若めのお兄さんがいた。

その人はゲンさんを見ると手を振って、駆け寄ってきた。


「おお、ゲンさん! 今日は少し遅かったな。待ちくたびれちまったよ!」


そう言って快活に笑うお兄さんはとてもじゃないがくすりが必要そうには見えない。

誰か家族が病気なんだろうか?


「伊之助くんか。いろいろとあってのう。妹さんの調子はどうだい?」


「おう! ゲンさんの薬のおかげで少しずつ良くなってるぜ! いつもありがとな。こっちのお嬢さんもお客さんか? ずいぶんと若い子が来たもんだな!」


私のほうを見ながら、イノスケさんとやらがびっくりしたような顔と声をする。

若いのはイノスケさんも同じではないのか。

自分は例外ってか??


「この子は弟子だよ。最近とったからの、今日は見学も含めて連れてきた」


「なるほど! ずいぶんと若いお弟子さんなんだなー! お嬢さん、名前はなんていうんだ?」


「えっと……みつるです。美しい鶴と書いて美鶴」


名字は言わないほうがいいだろうと思い、名前だけの自己紹介を行う。


「美鶴ちゃんな! 俺はいのすけ! 伊勢の伊に以之外とかに使われる之に、助けるの助で伊之助だ。 ゲンさんにはお世話になってるからこれからちょくちょく会うと思うぜ。よろしくな!」


「こちらこそよろしくお願いします。」


にかっと笑う伊之助さんに頭を下げた。

常連さんのようなのでこれから高頻度で会うことになりそうである。






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