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イチかバチか

「ふむ……なるほど、美鶴さんはこのずっと先の日本から来たのかい。そういうことかぁ……うんうん。だからそんな見たこともない恰好をしてるんだねえ」


「え!? 信じてくれるんですか!?」


自分でも到底信じてもらえないだろうとたかをくくっていたため、納得したようにうなずくゲンさんに、思わず詰め寄る。


「なんていうかねえ、雰囲気がわしらとちょっと違うんだよ。だからお姫様なのかと思ったんだが……未来から来たんなら納得だ。まあ、わしの勘だと思ってくれて構わんよ。これでも長生きはしておるほうだからの。自分の勘はあてにしておる。」


「ありがとうございます……!」


信じてもらえたことが嬉しくて、涙が出そうだ。

まさか、こんなに信じてもらえることが嬉しいとは思わなかった。


「んー、ということは美鶴さんは一文無しで泊まるところもないということか」


「あ……」


そういえばそうだ。

ここがどこなのか、ということで頭がいっぱいで全くそんなこと頭になかったが、この世界では私は一文無しである。

未来であれば、財布の中に入っているキャッシュカードや先ほどまで手にしていたスマホを使えば、泊まる場所くらいは探して宿泊することもできるが、もちろん戦国時代でそんなもの役に立つわけはない。むしろ邪魔だ。


さて、どうする。どうしようか私。


悩み始めたところで、ふと、思い出したことがあった。

先ほど私の嗅覚を刺激した香りのことである。

どこかで嗅いだことがあるな、と思っていたが、もしかするとこれは……


「あの……ゲンさん。一つ聞きたいことがあるんですけど……」


「うん?なんだい?」


「もしかしてここって、漢方薬、でいいのかな?中国医学系統の薬を扱ってませんか?」


そう、大学内の一室で嗅いだ、漢方の原材料の匂いだ。

基本的に漢方薬の原料となる植物(薬用植物)は乾燥させて使うことが多い。

そして、それらは結構匂いがきつかったりするのだ。

一応、大学においてあるものはしっかり保管されていたが、それでも匂いがしていた。

この家の匂いはそれにそっくりなのである。


「おお、よくわかったの。わしはここでひっそりと薬師を営んでおるんだ。でもどうしてわかったんだい?」


「匂いです。私も少しですが、薬についての知識があります。それで、お願いがあるんです。」


イチかバチか。これは賭けだ。私がこの戦国時代で生き延びる方法は今これしかない。

じいっと黙って、話の先を促すゲンさんに頭を下げる。


「……ゲンさんのもとで、弟子として住み込みで働かせてください!」

















※どうでもいい豆知識

この時代、本来であれば漢方は金元医学、中国は明と呼ばれていたはずです。

漢方薬という呼ばれ方をするのは近世に入ってからだったと思います(あやふや)

ですがこの小説ではわかりやすくするため漢方薬で統一します。

ちなみに漢方だと広義では薬以外にも灸や鍼なども含みます。


こんな感じで需要あるかわかりませんが、ちょこっと薬に関しての豆知識を入れていこうかと思います。

マニアックな面もあるので興味がある方は読んでみてください。

読み飛ばしても問題はないです。



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