疑惑は確信に
「ここがわしの家だよ」
そう言って案内されたのは、木造の一軒家。
そんなに大きくなく、なにやら現代建築とは程遠い造りであり、言ってしまえば失礼ではあるがあばら家に近い。
ここはそんなに都市から隔絶された場所なのだろうか?
「すみません、おじゃまします」
足を踏み入れるとどこかで嗅いだことのある匂いがかすかにする。
それに気づかないふりをして、座りなさいと言われた場所へ正座する。
家の中をキョロキョロしながら見ていると、奥からおじいさんがお茶を持って現れた。
「さて、まずは自己紹介といこうかの。わしの名は源次郎。気軽にゲンとでも呼んでくれ。お嬢さんの名は?」
「ゲンさんですね! 私は栗花落 美鶴といいます」
「こりゃ驚いた。お嬢さんは姓があるのかね?」
名乗られたので名乗り返したらまさかの返答。
姓って名字のことだよね?みんなあるよね?ドウイウコトナノ……?
嫌な予感しかしない。
今までの出来事と、普段着のように見える古びた着物、現代建築とは程遠いあばら家、そして名字へのこの反応……。
私の何かがこれ以上知ってはならんと警鐘を鳴らしてる気がするよ!!
「ゲンさんはないんですか?」
「わしは一般民だからね。持っておらんよ。もしかして美鶴さんは実はお姫様だったりするのかい?」
「まさかー!そんなわけないですよ」
私の中の疑心がどんどん確信へと変わっていく。
まさかとは思う。自分でも信じられん。が、しかし、この状況的にそれしか考えつかない。
「あのー、ゲンさん。唐突で申し訳ないんですけど、ここはどこで、どなたによって治められてますか……?」
嘘であってほしいと思いつつ核心にせまる質問をする。
「よっぽど物知らずな娘さんだねえ……。ここは出羽国羽前で、米沢城の主である伊達輝宗様が治めておられるよ。」
ああもう確定ですね!歴女でよかった!バンザイ!
伊達輝宗ってかの有名な独眼竜、伊達政宗のお父様やないかあああい!!!!
ワンダーランドじゃなくてタイムトリップだったのね……。
実はここ、戦国時代の日本でした。そんな小説みたいなことあってたまるか…って言いたいところだけど、事実ですもんね。
できればドッキリであってほしかったよ!
「物知らずなわけじゃないんです…」
一人で打ちひしがれていると、ゲンさんが心配そうに声をかけてくれた。
「わしでよければ話を聞こうか?」
そういってくれたので、頭がおかしいと思われることを覚悟してこれまでの経緯と、自分が未来人だということを話すことにした。