プロローグ 聖女祭
こんにちわ。
多分不定期。
見切りです。
聖陽歴1999年5月31日ーー
その一筋の剣閃が国を揺るがした。
だけど、その時はまだ、私は子供だったんだ。
癇癪をおこし、喚くだけのただの子供。
訳も分からず、流されていた。
だから、利用されたーー。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「くそ、間に合え。間に合え!!」
がらんとした街中を疾走する黒髪の少年。
街中は如何にも中世と言えそうなベージュと淡いオレンジのレンガで満たされていた。
《祭宴都市》シノレッツ。
それがこの都市の名だ。
かの古の伝説の聖女が祈りを捧げた都市として知られ、活気のたえることはない宗教都市としても有名だ。沢山の宣教者がこの地に参拝に来るためだ。でも、今の都市の様子ではそんな活気は嘘に思える。
「祈願まで、あとどのくらいだ?」
「開始まであと、20分。それがタイムリミットよ」
「あと、20分だと......!?」
「間に合わない可能性の方が高いわ。どう? 諦める?」
「そんなわけあるか!!!!!」
「ふふ、貴方ならそう言うと思ってたわ。あと、そこの次の角を左。そちらに人の熱気を感じるわ。恐らくは祭壇でしょう」
「分かった」
少年のかたに乗る小さな妖精と少年は状況確認をした。
この状況では、情報の精度が合否を分ける。情報はなるべく多い方がいい。
「ーー聖女祭か。何でこんな制度つくったんだよ」
少年の口から今回の全ての元凶であるキーワードが発せられる。
「聖女祭ーー古の聖女がこの日、王に求婚され、了承した事による伝統的な祭りね」
「彼女をーー僕は、」
「彼女を?」
言葉がつまる少年に、聞き返す黒い妖精。
「このてで幸せにするって、そう誓ったんだ」
「もしかしたら、彼女はこの国の王の方が好きだったりしても?」
「......約束したんだ。だから、それについては心配していない」
「ーーー? 約束って?」
「その話は後、よし、見えたーー」
少年の前には、ひとが一千、一万それ以上集まる広場があった。
少年はなんとか人を、押し返して前に進もうとするが、押し返される。
「神楽!!!!」
少年はすぐそこに、800メートルもないところに見える少女の名を叫んだ。
「「ーーーーーーー」」
だが、それは広間の熱気や歓声に遮られる。
ーー遠い。
浮遊要塞とここ、上空10000メートルも離れていた時とは違い、空という絶対的な壁もないというのに、少女との距離が、絶望的なまでに遠かった。
先ほどから19分。
もう1分しか時間がない。
かき分けて進もうにも進めず、もどかしい。
『神楽ーーーーーっ!!!!!!!!!!!』
届かないとわかっていたが、叫ばずにはいられなかった。
あと、30秒。
その時、少女が確かに少年の方を向いた。
目線が交錯する。
少年はまるで真っ白い空間に二人だけいるように錯覚した。
10000人の観客は目に入らないようだった。
「ーーーーーっ!!」
少年は声にならない叫びをあげた。
少女の唇の動きが読めたからだ。
伝言はーー
ーーステータス画面を両手で開いてーー
少女は確かにそう言った。
そして少年はそのとうりにし、
「見つけた。行くぞ」
少し前までは、あり得なかった跳躍をし、建物の壁を走った。
少年は瞬く間に少女の元へたどり着き、
ザシュッ!
聖女の証である手枷を刀で切り払った。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
その日、確かに私は子供だった。
でも、その日は、私の人生の中で、私に色彩を取り戻してくれた、
大切な人が助けに来てくれた日で、
最高の日だった。
まあ、私を助ける為に彼が色々やらかしてて、後始末は大変だったのだけど、
それは、全部私の為を思ってやってくれたことだからいいか。