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間章

 夜の闇は深い。何もかもを、その色に染めて隠してしまう。

 これは誰も知らぬこと。

 少なくとも、大地の民のその中に、これを知る者はいない。


空は雲に覆われていた。分厚く、黒々しい。見ているだけで心が不安になるような、形容しがたい不気味さを放つ雲だった。

 偶然空を眺めていた旅人が呟いた。

「ん、今のは……」

 雲が、蠢いたような気がしたのだ。目を瞬かせ、擦り、注視する。しかしそこに蠢きは感じられず、旅人は、気のせいかと視線を目の前の焚き火に戻してしまった。


 だが――。


「もうすぐ、か」

 その時、再び雲が蠢いた。いや、違う。蠢いたのは、影だ。雲よりも上を飛ぶ、なにか巨大な存在。月によってぼんやりと雲に映し出された、その影が蠢いたのである。


 それは二つの翼を持っていた。

 それにはトカゲを思わせるしっぽがあった。

 その全長は想像するも困難なほどに巨大だった。


 大地の民は、それを知っている。遥か昔から伝わる伝説で、その姿を夢想している。しかし彼らは理解していた。それは伝説で、現実ではないのだと。それこそが真実で間違いがないのだと、そうやって理解してしまっていた。

 例え本物を目の前にしようとて、それを真実と認知できることができなければ、きっとそれはそいつにとって、存在していないのと同じだ。


 誰も気が付くことはない。

 気が付けることはない。


 影は進む。東へ、東へ。


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