中学生
「今日学校くるとき道端に花が咲いていたんだけど、あれって何の花だろう?」
突然、朝の挨拶も無いのにサキはそんなことを言い始めた。
「ナノハナも捨てがたいんだけど、私的にはコスモスもすてがたいんだよね〜!」
サキはよくこんな風に突然話しかけてくる。小学校よりも前からの知り合いな私としては、もうなれてしまった。
ふむ、なになに…、サキは学校にくる途中の通学路で名前とか良く分かんないけどお花を見つけたらしい。たぶんそれがとっても綺麗なお花でどうしても私にそのお花のことを伝えたかったんだと思う。本人の予想ではそれはナノハナかコスモ…す?
……それって全然ちがくない?
「え〜! そうかな〜。だって綺麗だったんだよ〜!」
あ〜…はいはい……。サキにとっては、綺麗なものはナノハナかコスモスなんだね。
「でも、エルメスも捨てがたいんだよね〜」
「エルメス?」
「うん、そう。この春のモデルがさ〜、ちょ〜高いの!」
「エルメスじゃぁ…ねぇ」私ら女子中学生には無理な話よ…。
「うん。だから今日学校終わったらモンブランやけ食いする!」
「それじゃあまたお肉着くよ」
「あ〜それは言わない約束ぅ〜」
ホームルームの前の時間。サキと私はよく…というより毎日二人で話をしている。
家が近いせいもあって昔から親友な私たち。いつも登下校まで一緒だったんだけど、中学に入って私は陸上部、サキは「めんどくさ〜い」と帰宅部になって、私は朝練とかで登下校は別々になった。
それでも私とサキは変わらず仲良しで、登下校のときに何があったとかよく話してくれるんだけど、サキ一人で何かやってたりとか聞くと、なんだかごめんって言いたくなるときがある。サキはそんなの前々気にしてないってそんな感じだけど……。
サキは先生が入ってきてホームルームが始まると、ぴょんぴょんと私の席から自分の席に戻っていく。ここは田舎の学校だから1学年に1クラスしか無い。だから、サキとクラスが離ればなれってことは無いけど、部活とかは人数が少なくて寂しいな。
まだ私の陸上部は個人競技で数が少なくてもいいけど、そういえば小学校のときの高田君とかはこの学校にやりたい部活無いから遠くの中学に通ってるらしい。
そっかぁ…、もう私2年生なんだよね……。
この春で中学二年生になって、小学生だった頃から1年も経っていた。そう思うと「短い」より「長かった」って言った方がいいような気がする。
ってことは、サキと登下校しなくなったのも1年経つんだなぁ……。そう思うとやっぱり早いのかな?
日か暮れ始めて陸上部の練習はお開き。部室にシャワーとか付いてるといいのになぁと思うんだけど仕方ないからタオルで汗を拭いて着替える。
学校から私の家までの帰り道からちょっとずれると海がおっきく見渡せる市道があって、私はちょうど夕暮れの時間だし綺麗な夕焼けが見れると思って、そっちの道から帰ることにした。
昔はよくサキとこの道を並んで歩いた。今一人なのは寂しいけど、そのときのことを思い出しながら歩くとちょっと楽しい気持ちになる。
あれ……、サキ…?
しばらく夕暮れ沿いの道を歩いていると、目の前に海を見つめるサキが一人たたずんでた。
「サ――、……え?」
私はサキの名前呼ぶの、ためらった……。
そこにいるサキの横顔、それは良く知ってるサキの顔なのに、私の知らないサキの顔でもあった。遠くの夕日を見つめて、海風がその髪をさらさらかきあげる。セピアの世界の中でサキは、胸元に大事そうに花を抱えていた。
サキ……?
「……あっ!」っとサキは、じっと見つめていた私に気がついたみたい。
「サキ……、どうしたの?」まるで今までのサキじゃないみたいだった。
「ん? モンブランはやっぱりやめ。だってモンブランばっかり食べてたら飽きるしぃ〜」
ここにいるのは、いつもの……サキ。
「……それ?」
「それ?」
私はサキの胸元に抱えられた花を指差した。なんかもう生えてた土ごと持ってきたみたいで、手や抱えた胸元なんか土だらけで、その汚れた制服どうすんだろ……。
「えへへへぇ、これ家で育てんのっ!」
サキは子供みたいな笑顔で笑った。
もしかしてサキって今いつもこんなことやってるの?
「だってさ、綺麗じゃない?」
サキの動きにあわせてその小さな花が揺れる。
そりゃ、綺麗だけど…。
今日私たちは久しぶりに帰り道を一緒に歩いた。
よく見るとサキは私より身長が伸びていて、私はちょっとだけどサキを見上げるようになっていた。
「サキその花……」
「ん? なに? ダメ! あげない!」
「そうじゃなくて……」その花は……。
――うんっ、そうだ! そうしよっ!
「サキ! この後その花植えて着替えたらさぁ、家こない? 久しぶりにお泊まり会しようよ!」
「え! いく、いくよ、お泊まり会! なんかちょ〜久しぶりじゃん!」
その後私たちはサキの家でいったん分かれて、私の家で集合することになった。
「……たぶんサキは、本当に知らないんだろうな〜」
私は家に着くまでの道を歩きながらつぶやく。
あの花、あの花は前、花図鑑で見たことがある。名前が特徴的だったから、覚えていた。花言葉とかも見て、なんだかとても悲しいお花だと思って……。
あの花は、わすれな草……。
たぶんサキは本当にただ綺麗だからあの花を摘んだんだろうけど……、
「サキ、ごめんね……」
今日は、いっぱい楽しもうね!
ライトノベル調のものが書きたいと思って書いてみました。はっきり言って挑戦といった感じです。若干僕が中学生の女の子を書くのに無理を感じましたが……。