欠番覚醒
### 欠番覚醒
秩序派からの招集――
場所は、東京タワー近くの廃ビル。
「やっぱり、罠だな」
渋谷が低く呟く。
「わかってて来たんだろ」
「覚悟ってやつ」
俺は刀を握りしめた。
手が震える。
でも、前よりは確かに落ち着いていた。
廃ビルの最上階。窓ガラスは粉々に割れ、冷たい風が吹き抜ける。
「ここで話し合い? まさかね」
俺の問いに、渋谷は無言で頷く。
背後で、足音。
――来た。
黒スーツの男が三人。
手には、刃物――刀が握られている。
「欠番の方ですね。
歓迎します」
声が、嘘みたいに丁寧だ。
「……歓迎、されてない」
「認識、正しいです」
渋谷は刀を構え、俺の横に立つ。
「春日、準備」
「分かってる」
緊張の空気。
世界が、少し歪む。
「欠番――否定の力」
男のリーダー格が言った。
「その能力、私たちは欲している」
「欲しいって……殺す気満々だろ」
「違います」
「え?」
「消さず、制御する」
理屈は甘い。
でも現実は、容赦ない。
刃が、光る。
「来るぞ!」
男が踏み込む。
同時に、俺の刀が反応した。
――感覚が、研ぎ澄まされる。
「違う……何かが!」
刀が震える。
空気が、ねじれる。
「春日!」
渋谷の声。
「自分を信じろ」
刀を握る手に、力を込める。
身体の奥が熱くなる。
――拒否、ではなく、制御。
「今だ」
俺は踏み込む。
刀を振る。
刃先が、男の刀に触れる。
その瞬間。
世界が、止まった。
――時間が、ゆっくり流れる。
男の動きが、完全に読み取れる。
攻撃、隙、重心、呼吸。
全て、把握できる。
「――これが、欠番の力か」
渋谷の声も、遠くで聞こえる。
俺は、目の前の男を避けず、斬る。
刃は、空間を切るように、彼の刀を弾いた。
「なっ……!」
男が驚き、体勢を崩す。
次の瞬間、残り二人も攻撃を仕掛けてきた。
でも、もう怖くない。
――拒否ではなく、断る。
世界の“ルール”を、俺が再構築する。
刀を振るたび、攻撃は空を裂き、跳ね返る。
「これ……制御できてる!」
「その調子!」
渋谷の声が、力をくれる。
風が、ビルの中で渦を巻く。
攻撃が、すべて俺の手元で止まった。
――欠番は、均衡を崩すために生まれたのではない。
守るために、ここにある。
男たちは、刀を振るが、軌道が不自然にずれる。
「なに……!?」
俺の刀が、空間を否定し、攻撃を受け付けない。
「これが、欠番の真の力か」
渋谷が言った。
「でも、まだ序盤」
――感じる。
限界も、揺らぎも。
でも、恐怖は消えた。
「止まれ、これ以上は」
俺は叫ぶ。
刀先を男たちに向ける。
世界が震える。
攻撃が止まる。
時間が、今だけ俺に従う。
「分かった……!我々は撤退する!」
男たちは、慌てて後退。
最後に、リーダー格が一礼。
「欠番……恐ろしい」
そして、姿が消えた。
静寂。
渋谷が、俺の肩を叩く。
「春日、すごい」
「まだ怖いけど……」
胸の奥が、熱い。
――これが、俺の戦う理由だ。
欠番として、東京を守る理由だ。
そして、俺は知った。
――まだ、序章にすぎない、と。
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