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『十二都刀戦(じゅうにととうせん)』  作者: じょんどぅ


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欠番の刀



### 欠番の刀


目を覚ましたとき、天井がやけに低く感じた。


「……ここ、どこだ?」


「安全圏」


即答だった。


身体を起こそうとして、全身が悲鳴を上げる。


「っ……!」


「無理しない。

 骨は折れてないけど、打撲と神経ショックがひどい」


渋谷は、パイプ椅子に座ってスマホをいじっていた。

場所は、見覚えのない地下施設。古い駅の使われていない通路らしい。


「病院じゃないのか……」


「説明が面倒だから却下」


「理由それだけ?」


「それだけ」


即答すぎる。


「……新宿は?」


「帰った」


「帰ったって……」


「刀使いは、深追いしない。

 理由は色々あるけど」


渋谷は、ちらっと俺を見る。


「今は、生きてる方を優先しよ」


その言葉で、ようやく実感が湧いた。


――俺、死にかけたんだ。


「なあ」


少し間を置いて、聞く。


「欠番って、何だ」


渋谷の指が止まった。


「……やっぱり聞くよね」


「そりゃな」


沈黙。


地下を通る風の音だけが、やけに大きい。


「本来、十二振りの刀は“管理”されてる」


「管理?」


「記録されて、監視されて、均衡を保たれてる」


嫌な単語ばかりだ。


「刀は、東京の概念そのもの。

 勝手に増えたり、減ったりしない」


「……でも、俺のは?」


「存在しない」


渋谷は、はっきり言った。


「どの記録にもない。

 どの地区にも、どの概念にも属さない」


「それが欠番?」


「正確には」


彼女は、俺の刀を取り出した。


黒い鞘。

あのとき拾ったままの姿。


「“欠けている番号”」


「……番号?」


「十二振りは、最初から番号を与えられてる」


「つまり」


「一から十二まで、全部埋まってる」


渋谷は、そこで言葉を切った。


「なのに、あんたの刀は――

 どこにも、入らない」


背筋が、ぞっとした。


「バグじゃん」


「うん」


あっさり認める。


「しかも、悪質」


「慰めてくれてる?」


「現実を言ってるだけ」


渋谷は立ち上がり、俺の前に刀を置いた。


「触って」


「……いいのか?」


「今さら」


言われて、そっと柄に手を伸ばす。


――冷たい。


でも、不思議と嫌な感じはしなかった。


「……声は、聞こえないな」


「最初だけだったでしょ」


「なんで分かる」


「みんな、最初はそう」


渋谷は、少し視線を逸らした。


「刀は、使い手を試す。

 完全に繋がるまで、時間がかかる」


「完全に繋がると、どうなる」


「切り離せなくなる」


さらっと怖い。


「新宿との戦いで、あんたの刀は“拒否”した」


「拒否?」


「混沌の概念を、斬らなかった。

 正確には――」


彼女は、言葉を選ぶ。


「“無効化”した」


「それって、強くないか?」


「強い」


即答。


「だから、危険」


「……理由になってない」


「なる」


渋谷は、真剣な顔で言った。


「欠番は、均衡を壊す」


「東京の?」


「刀使い全員の」


沈黙。


「つまり」


俺は、ゆっくり言った。


「俺がいるだけで、面倒が起きる」


「起きる」


否定しない。


「全員が、あんたを狙う」


「……笑えないな」


「笑えない」


渋谷は、少しだけ困ったように眉を寄せた。


「でも」


「?」


「それでも、見捨てる気はない」


意外だった。


「なんで」


「さっき言ったでしょ」


彼女は、淡く笑う。


「新入りを見捨てる趣味はない」


「それだけ?」


「それだけで十分」


そのとき。


――キン。


空気が、鳴った。


「……来た」


渋谷が即座に立ち上がる。


「もう?」


「早い方」


「誰だ」


「まだ分からない」


彼女は刀を抜く。


「でも、確実なのは一つ」


「?」


渋谷は、振り返らずに言った。


「欠番が動いたって、もう知れ渡った」


通路の奥。

闇の向こうに、気配が滲む。


「歓迎する人は、いない」


俺は、刀を握り直した。


震えは、まだある。


でも。


――逃げるだけじゃ、終われない。


そう思ってしまった自分に、少しだけ驚いた。


そして。


地下の闇から、別の“刀の音”が響いた。


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