欠番の秘密
### 欠番の秘密
東京は静かだ。
ネオンも雑踏も、今夜は裏側で動く意思に従っているかのようだった。
「春日、来てくれ」
渋谷の声が、廃ビルの奥から聞こえる。
俺は刀を背負い、彼女の元へ歩く。
「何か見つけた?」
「……情報、というより真実」
渋谷が差し出したのは、古い書類と写真。
それを開くと、見覚えのある刀の数々と、組織の図解が並んでいた。
「これ……?」
「欠番は、特別。
生まれつき、刀の力を“否定”できる存在。
つまり、混沌を拒絶できる唯一の存在」
俺の手が震える。
「つまり……俺は、特別?」
「うん。でも、それには理由がある」
渋谷は目を伏せる。
「欠番は、12振りをまとめる存在として設計されている。
統合も崩壊も、すべて欠番次第」
「設計……? 人工的ってことか?」
「完全に。
君の能力は自然発生じゃない。
秩序派も混沌派も、ずっとその存在を知っていた」
胸が、重くなる。
自由意志で戦っていると思ったが、元から中心に組み込まれていたという現実。
「じゃあ……俺は、ただの駒?」
「駒かもしれない。
でも、選択は君自身の手にある」
渋谷の声が、真剣だ。
「欠番として戦うことも、逃げることも可能。
でも、街の均衡は必ず君に影響される」
俺は刀を握り直した。
――逃げられない。
でも、戦うことも俺の意思だ。
「それに、君はまだ知らない。
本当の敵は秩序派でも混沌派でもない」
「……本当の敵?」
渋谷は書類をめくり、ひとつの写真を見せる。
そこには、見覚えのある人物――新宿が微笑む姿があった。
「奴だ。欠番の均衡を崩そうとしている」
「新宿……!」
「君に戦わせ、街を混沌に導く。
それが奴の目的」
心臓が、早鐘のように打つ。
「……全部、計画通りってことか」
「ほとんど。
でも、君が戦いを選んだ瞬間、計画は少しずつ狂う」
俺は、深呼吸した。
――戦う理由が、はっきりした。
ただ逃げるのではなく、誰も消えさせないために。
「春日、分かってるな?」
「うん」
渋谷が微かに笑う。
「欠番の重さも、自由も。
全部、自分で背負うって覚悟」
俺は刀を握り直す。
「……受けて立つ」
その時、窓の外で影が動く。
東京の夜に、刃の気配が重なる。
「春日、準備はいい?」
「……いつでも来い」
渋谷が頷く。
俺たちは、同じ方向を見た。
――東京を、欠番として守る。
誰も犠牲にしないために。
そして、第一巻の戦いは最高潮へ向かう。
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