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沈黙の代償

作者: ラプ太郎

「助けて......」

三流週刊誌『真実の声』の記者・水島圭介が受けた一本の電話。声の主は、三ヶ月前に姿を消した元国会議員秘書、高野美咲だった。翌朝、彼女の遺体が多摩川で発見される。警察の発表は「自殺」。だが、水島は確信していた——これは殺人だと。

高野が追っていたのは、衆議院議員・富永和也と大手建設会社「東邦建設」との癒着。総額五百億円の再開発事業に絡む利益供与。総額三億円の賄賂。国土交通大臣、都知事まで巻き込んだ国家規模の汚職事件。

水島の元に届いた一つのUSBメモリ。そこには、膨大な証拠が記録されていた。議事録、メール、振込記録——全てが、権力者たちの腐敗を物語っている。

だが、真実を報道しようとした瞬間、水島は巨大な壁に直面する。

編集長は記事の掲載を拒否。「明らかに何です? 証拠もなしに、現職議員を疑えと? うちみたいな弱小出版社が、大物政治家と建設会社を敵に回せると思ってるんですか」権力に飼い慣らされたメディア。ジャーナリズムの死。

証言しようとした東邦建設の元経理部長は、孫の命を人質に脅される。警視庁公安部の刑事は、偽造された遺書を突きつけ、「これ以上首を突っ込むと、高野美咲のようになりたくなければ、大人しくしていることです」と脅迫する。警察までもが、権力者を庇っている。

追い詰められた水島の前に現れたのは、元警視庁刑事の桐島冴子と、冤罪事件専門の弁護士・立川雄一。彼らもまた、権力の闇と戦い続ける者たちだった。

「告発するんです。森田さんの証言をもとに、検察に直接。そして、全てのメディアに同時に情報を流す」

だが、彼らの動きを察知した富永議員本人が、編集部に乗り込んでくる。

「あなたは勘違いをしている。この国は、あなたのような三流記者が正義を振りかざす場所ではない。政治には金がかかる。その金を得るために、多少の便宜を図ることは、必要悪なんですよ」

開き直る権力者。だが、水島は全ての会話を録音していた。検察と警察が乗り込み、富永は逮捕される。一斉報道により、国民の怒りが爆発。国土交通大臣も都知事も辞任に追い込まれた。

しかし、勝利の代償は重い。

水島は会社を解雇される。「お前は、会社にとって厄介すぎる。これ以上、権力と戦う記者は必要ない」フリーランスとなった水島は、桐島、立川らと『真実追求グループ』を結成。次々と権力の不正を暴いていく。

脅迫、襲撃、放火。仲間の一人は死に、別の仲間は破産し、桐島は障害を負った。それでも、彼らは止まらない。止まれば、高野美咲の死が無駄になる。止まれば、この国の腐敗が進む。

これは、真実を追い求める者たちが払う、沈黙の代償の物語。

権力の闇は深い。だが、光を灯す者がいる限り、闇は必ず晴れる——水島はそう信じて、今日もペンを走らせる。

第一章 消された告発


私の名前は水島圭介。三流週刊誌『真実の声』の記者だ。


十一月の冷たい雨が降る夜、私は一本の電話を受けた。


「水島さん......助けて」


声の主は、元国会議員秘書の高野美咲。三ヶ月前、彼女は衆議院議員・富永和也の不正を告発しようとして、突然姿を消した。


「高野さん? 今どこに——」


「時間がない。富永議員の汚職の証拠を持っています。でも、私は......」


電話が途切れた。


翌朝、高野美咲の遺体が、多摩川の河川敷で発見された。


警察の発表は「自殺」。だが、私は知っている。これは殺人だ。


高野は、富永議員と大手建設会社「東邦建設」との癒着を調査していた。総額五百億円の再開発事業に絡む利益供与。だが、彼女が証拠を掴む直前に姿を消し、そして死んだ。


「水島さん、これ以上追うのは危険です」


編集長の田村が、渋い顔で言った。五十代の疲れた男だ。かつては調査報道で名を馳せたが、今は広告主の顔色を窺うだけの存在に成り下がっている。


「でも、これは明らかに——」


「明らかに何です? 証拠もなしに、現職議員を疑えと? うちみたいな弱小出版社が、大物政治家と建設会社を敵に回せると思ってるんですか」


「ジャーナリズムの使命は——」


「使命より飯です」田村は吐き捨てるように言った。「この記事はボツ。以上」


私は編集部を飛び出した。


記者になって十年。私は、この国のジャーナリズムが死にかけているのを見てきた。権力を監視するはずのメディアが、権力に飼い慣らされている。


だが、私は諦めない。


高野美咲が最後に遺したメッセージ。そこには、真実へのヒントがあるはずだ。


私は、高野の同僚だった国会議員秘書、佐藤健二に連絡を取った。


「水島さん......実は、美咲から預かっているものがあるんです」


翌日、私は国会議事堂近くのカフェで佐藤と会った。三十代半ばの真面目そうな男だ。


彼が差し出したのは、USBメモリだった。


「これには、富永議員と東邦建設の癒着の証拠が全て入っています。議事録、メール、振込記録......」


「なぜ、今まで出さなかったんです?」


佐藤の顔が歪んだ。


「怖かったんです。美咲が死んだ後、私の家にも不審な車が張り付くようになった。電話も盗聴されている気がする。でも......このままじゃ、美咲が報われない」


私はUSBを受け取った。


「これを記事にします。必ず」


「気をつけてください。相手は、人を殺すことを躊躇わない連中です」


その夜、私はUSBの中身を確認した。


そこには、膨大な証拠が記録されていた。


富永議員は、東邦建設から総額三億円の賄賂を受け取っていた。その見返りに、五百億円の再開発事業を東邦建設が独占受注できるよう、審査を不正に操作していた。


さらに、この汚職には他の政治家も関与していた。国土交通大臣の柳沢健、都知事の黒田雄二。彼らも、東邦建設から資金提供を受けていた。


「これは......国家規模の汚職だ」


だが、問題があった。


この証拠を報道するには、裏付けが必要だ。東邦建設の内部関係者の証言が不可欠だ。


私は、東邦建設の元経理部長、森田誠に接触を試みた。


だが、彼に会う前に、私は尾行されていることに気づいた。


黒いセダンが、私の後をつけている。


私は急いで地下鉄に飛び込んだ。だが、ホームで私を待っていたのは——




第二章 権力の影


ホームで私を待っていたのは、一人の男だった。


黒いスーツに白いネクタイ。五十代の鋭い目つき。


「水島圭介さんですね。少し、お話しできますか」


男は、警察手帳を見せた。警視庁公安部、笹川警部。


「何の用ですか?」


「あなたが調べている件について」笹川は低く言った。「やめていただきたい」


「なぜです? 高野美咲は殺されたんです。それを調べて何が悪い」


「高野美咲の死は自殺です。警察が既に結論を出している」


「証拠もなしに?」


「証拠はある」笹川は冷たく言った。「彼女は鬱病を患っていた。遺書もあった」


「遺書? そんなもの——」


「ありました」笹川は封筒を取り出した。「これです。筆跡鑑定も済んでいる」


封筒の中には、高野の筆跡で書かれた遺書があった。


『もう疲れました。全てを忘れたい』


だが、何かがおかしい。高野は右利きだったが、この遺書は左手で書かれたような乱れた字だ。


「これは偽造です」


「証拠は?」


「筆跡が——」


「鑑定済みです」笹川は遮った。「水島さん、あなたは三流週刊誌の記者だ。警察の捜査に口を出す権限はない。そして......」


彼は一歩近づいた。


「これ以上首を突っ込むと、あなた自身が危険です。高野美咲のようになりたくなければ、大人しくしていることです」


笹川は去っていった。


私は、背筋に冷たいものを感じた。


警察までもが、この汚職に関与している。


いや、関与しているのではない。庇っているのだ。


権力者たちを。


私は、森田誠と接触することを決意した。だが、彼に会うためには慎重に行動する必要がある。


翌日、私は変装して森田の自宅を訪ねた。


彼は、都内の古いアパートに一人で住んでいた。六十代の痩せた男性だ。


「水島さん......来ると思ってました」


森田は私を部屋に招き入れた。


「東邦建設の汚職について、証言していただけますか?」


森田は深く息を吐いた。


「証言したいです。でも......できない」


「なぜです?」


「私には、孫がいるんです。六歳の女の子。先週、その子が通う幼稚園の前で、黒いスーツの男たちが待っていたんです。『森田さんには、大切な孫がいますね』と言われました」


森田の手が震えている。


「私は、孫の命と引き換えに、沈黙を買われたんです」


「警察に——」


「警察も繋がっています。どこに助けを求めても、無駄です」


私は拳を握り締めた。


「では、匿名での証言は?」


「それでも危険です。私の声は特定される。そして、報復される」


その時、ドアがノックされた。


森田の顔が青ざめた。


「まさか......」


ドアが破られ、二人の男が入ってきた。黒いスーツの、いかにも裏社会の人間といった風貌だ。


「森田さん、余計なことを喋ってるんじゃないですか?」


一人が、凄みのある声で言った。


「そしてあんた、水島圭介だな。大人しく忠告を聞いておけばよかったのに」


男が私に近づく。


だが、その瞬間、部屋の窓ガラスが割れた。


そして、一人の女性が飛び込んできた。




第三章 告発者たち


窓から飛び込んできたのは、三十代の女性だった。


ショートカットの黒髪、鋭い目つき。手には警棒を持っている。


「動くな!」


女性は、黒服の男たちに警棒を向けた。


男たちは一瞬怯んだが、すぐに反撃しようとした。だが、女性の動きは速かった。一瞬で二人を床に叩き伏せ、手錠をかけた。


「あなたたちは誰だ」私が尋ねると、女性は答えた。


「元警視庁捜査一課、現在はフリーランスの調査員。名前は桐島冴子」


「元警察?」


「ええ。五年前、汚職事件を追っていて、上層部に握りつぶされた。それで辞めた」桐島は私を見つめた。「あなたが水島圭介ね。高野美咲の件を調べている記者」


「なぜ、それを?」


「私も、同じ事件を追っている。富永議員と東邦建設の汚職。そして、それを隠蔽しようとする権力の闇を」


桐島は、床に倒れた男たちを見下ろした。


「こいつらは、東邦建設が雇った暴力団の下っ端。証言者を脅すのが仕事」


森田が震えながら言った。


「では、私の孫は......」


「大丈夫。すでに保護してある」桐島は言った。「私の仲間が、あなたの家族を安全な場所に移した」


「本当ですか!?」


「ああ。だから、安心して証言してほしい」


森田の目に、涙が浮かんだ。


「分かりました。全て、話します」


私たちは、桐島の隠れ家に移動した。都内の古いビルの一室だ。


そこには、もう一人の男性がいた。


「こちらは、弁護士の立川雄一。冤罪事件を専門に扱っている」


立川は四十代の温厚そうな男性だった。


「水島さん、お会いできて光栄です。あなたの記事、いつも読んでいます」


「ありがとうございます。でも、今回の相手は強大すぎる。記事にしても、もみ消されるかもしれない」


「それは分かっている」桐島が言った。「だから、私たちは別の方法を考えている」


「別の方法?」


「告発です。森田さんの証言をもとに、検察に直接告発する」


立川が頷いた。


「私が告発状を作成します。そして、メディアにも同時に情報を流す。複数の報道機関に、同時に」


「でも、メディアも権力に飼い慣らされている」私は言った。「私の会社だって、記事をボツにした」


「だから、全てのメディアに流すんです」桐島が言った。「大手新聞、テレビ局、週刊誌、ネットメディア。全てに同時に情報を流せば、どこかが報道する」


森田が口を開いた。


「私は、東邦建設で三十年働きました。会社は、昔は真っ当な企業でした。でも、十年前から変わった。政治家との癒着が始まり、不正な受注が常態化した」


彼は、手元の資料を見せた。


「これが、富永議員への賄賂の記録です。総額三億円。全て、会社の裏金から支払われました」


「裏金の出所は?」


「下請け業者への架空発注です。実際には存在しない工事の費用を計上し、そのお金を裏金にしていました」


「他の政治家への賄賂は?」


「国土交通大臣の柳沢健に二億円、都知事の黒田雄二に一億円。全て、再開発事業の受注のためです」


私は、全てを記録した。


「これだけの証拠があれば、必ず勝てる」


だが、桐島は厳しい表情だった。


「問題は、相手も手を打ってくることだ。証拠の隠滅、証人の口封じ。そして......」


彼女は窓の外を見た。


「最悪の場合、私たち自身が消される」


立川が言った。


「だから、スピードが重要です。明日、一斉に告発と報道を行う。一気に畳み掛けるんです」


「分かりました」私は決意した。「私も、全ての記事を書きます。そして、編集長を説得します」


その夜、私は徹夜で記事を書いた。


タイトルは『国家の闇——五百億円汚職の真実』


全ての証拠、全ての証言を盛り込んだ。


翌朝、私は編集部に向かった。


だが、編集部に着くと、異様な雰囲気が漂っていた。


田村編集長が、青い顔で立っていた。


「水島......お前、何をした」


「記事を書きました。これを掲載してください」


田村は記事を受け取ったが、すぐに私に返した。


「無理だ」


「なぜですか!」


「上から圧力がかかった。この記事は掲載するな、と」


「上って......」


「出版社の社長だ。そして、社長には政府から圧力がかかった」


その時、編集部のドアが開き、一人の男が入ってきた。




第四章 暴かれる真実


入ってきたのは、富永和也議員本人だった。


五十代の堂々とした体格。だが、その目には冷酷さが宿っている。


「水島圭介さん、お会いしたかった」


富永は、嫌らしい笑みを浮かべた。


「あなたは、随分と厄介なことをしてくれましたね」


「厄介? 真実を報道することが、厄介なんですか?」


「真実?」富永は鼻で笑った。「あなたが書いているのは、真実ではなく妄想です。証拠もない誹謗中傷」


「証拠なら、ここに全てある」私はUSBを取り出した。


富永の表情が一瞬強張った。


「それは......どこで手に入れた」


「高野美咲から。あなたが殺した彼女から」


「殺した? 彼女は自殺です。警察も認めている」


「偽装された自殺です。遺書も偽造されている」


富永は、深く息を吐いた。


「水島さん、あなたは勘違いをしている。この国は、あなたのような三流記者が正義を振りかざす場所ではない。秩序があり、ルールがある」


「汚職を隠蔽するルールなど、認められない」


「では、聞きますが」富永は一歩近づいた。「あなたは、この国の経済を回している人間が誰だと思いますか? 綺麗事を言う市民ですか? 違う。私たち政治家と、企業です。私たちが動かすお金が、雇用を生み、税収を生み、福祉を支えている」


「それと汚職は関係ない」


「大いに関係がある」富永は言い放った。「政治には金がかかる。選挙には金がかかる。その金を得るために、多少の便宜を図ることは、必要悪なんですよ」


「必要悪だと?」


「そうです。そして、高野美咲は、その必要悪を理解しなかった。だから......」


富永は言葉を切った。だが、その沈黙が全てを物語っていた。


「あなた、今、自分で認めましたね。高野を殺したことを」


富永の顔が歪んだ。


「私は何も言っていない」


「いや、言った。この会話は全て録音しています」


私はスマートフォンを見せた。


富永は激昂した。


「お前......!」


だが、その時、編集部の外から大勢の足音が聞こえた。


桐島冴子が、検察官と警察官を連れて入ってきた。


「富永和也、あなたを収賄と殺人教唆の容疑で逮捕する」


検察官が令状を示した。


富永は、信じられないという表情だった。


「馬鹿な......お前たち、私が誰だか分かっているのか!」


「分かっています」桐島が冷たく言った。「汚職議員です」


警察官が富永に手錠をかけた。


「待て! 私には免責特権がある! 現行犯以外で逮捕できるわけがない!」


検察官が答えた。


「国会の許可は取得済みです。あなたの汚職の証拠は、検察にも既に提出されています」


富永は連行されていった。


私は、桐島に尋ねた。


「どうやって、国会の許可を?」


「立川弁護士の人脈です。野党の議員たちが動いてくれた。そして、検察の中にも、まだ正義を信じる人間がいた」


編集長の田村が、呆然としていた。


「水島......お前、本当にやったのか」


「やりました。これが、ジャーナリズムです」


その日の夕方、全ての報道機関が一斉に報道した。


『現職議員、収賄で逮捕』


『五百億円汚職事件の全貌』


テレビも新聞も、週刊誌もネットも、全てがこの事件を報じた。


国民の怒りは凄まじかった。


富永議員だけでなく、柳沢国土交通大臣、黒田都知事も辞任に追い込まれた。


東邦建設の幹部たちも、次々と逮捕された。


そして、警視庁公安部の笹川警部も、証拠隠滅の容疑で逮捕された。


だが、私は知っていた。


これで終わりではない。




第五章 沈黙の代償


事件から三ヶ月後。


私は、高野美咲の墓前に立っていた。


「高野さん、あなたの告発は、世界を変えました」


墓石には、彼女の名前と、『真実を追い求めた人』という言葉が刻まれていた。


桐島冴子が、隣に立った。


「でも、まだ終わっていない」


「どういうことですか?」


「富永たちは逮捕されたが、彼らは氷山の一角に過ぎない。この国の汚職は、もっと深く、広く根を張っている」


彼女は、一枚の写真を見せた。


そこには、別の政治家と企業幹部が密談している様子が写っていた。


「次のターゲットです」


私は深く頷いた。


「分かっています。戦いは続く」


立川弁護士も合流した。


「水島さん、新しい告発の準備ができました。次は、防衛省の不正調達です」


「分かりました。取材を開始します」


だが、その時、私の携帯に着信があった。


編集長の田村からだった。


「水島、お前に伝えたいことがある」


「何ですか?」


「お前、クビだ」


「......何ですって?」


「上からの指示だ。お前は、会社にとって厄介すぎる。これ以上、権力と戦う記者は必要ない」


電話は切れた。


私は、呆然とした。


「クビ......」


桐島が肩を叩いた。


「気にするな。予想していたことだろう」


「でも、これじゃ記事が書けない」


「他の方法がある」立川が言った。「フリーランスになるんだ。そして、私たちと一緒にフリーのジャーナリストとして活動する」


「フリーランス......」


「そうだ」桐島が言った。「組織に属さないからこそ、本当の真実が書ける。私たちのような、権力と戦う者たちと共に」


私は考えた。


会社員としての安定を失う。だが、得るものもある。


自由と、真実を追い求める権利。


「分かりました。やります」


その日から、私は新しい道を歩み始めた。


桐島、立川、そして森田。私たちは、『真実追求グループ』を結成した。


次々と権力の不正を暴き、告発していった。


だが、代償も大きかった。


私は、何度も脅迫を受けた。家に侵入され、資料を盗まれた。尾行され、暴行を受けたこともあった。


桐島も、襲撃を受けて重傷を負った。


立川の事務所は、放火された。


それでも、私たちは止まらなかった。


なぜなら、誰かが戦わなければ、この国の腐敗は止まらないからだ。


高野美咲が命をかけて守ろうとした真実。それを、私たちが受け継ぐ。




一年後


私たちの活動は、少しずつ成果を上げていた。


複数の政治家が辞任し、企業の不正が暴かれ、制度改革が進んだ。


だが、まだ足りない。


権力の闇は、深く、広い。


私は、今日も取材を続けている。


新しい汚職事件の証拠を掴むために。


カフェで、私は情報提供者と会っていた。


「これが、次の証拠です」


若い女性が、封筒を差し出した。


「ありがとうございます。これで、また一人、腐敗した政治家を告発できる」


女性は、不安そうな表情で言った。


「私、大丈夫でしょうか。告発したら、報復されるんじゃ......」


「大丈夫です。私たちが守ります。高野美咲のように、誰も死なせません」


女性は安心したように頷いた。


カフェを出ると、夕暮れの街が広がっていた。


この街の、どこかで、今も不正が行われている。


どこかで、権力者が私腹を肥やしている。


どこかで、真実が隠蔽されている。


だが、私たちは戦い続ける。


ペンで、言葉で、真実で。


「高野さん、見ていてください。あなたの死は、無駄にはしません」


私は、新しい記事を書き始めた。


タイトルは、『沈黙の代償——失われた正義を取り戻すために』


この国の闇は深い。


だが、光を灯す者がいる限り、闇は必ず晴れる。


私は、そう信じて、今日もペンを走らせる。




エピローグ


それから五年が経った。


私たちの活動は、大きな広がりを見せていた。


フリーランス記者のネットワークが全国に広がり、各地で権力の不正が暴かれていた。


だが、代償も大きかった。


仲間の一人が、取材中に事故死した。


別の仲間は、名誉毀損で訴えられ、破産した。


桐島は、再び襲撃を受け、右足に障害が残った。


それでも、私たちは止まらない。


止まれば、高野美咲の死が無駄になる。


止まれば、この国の腐敗が進む。


私は今日も、取材を続けている。


次なる権力の闇を暴くために。


これが、私の選んだ道。


沈黙を破り、真実を語る道。


その代償がどれほど大きくても、私は進み続ける。

本作を最後まで読んでいただきありがとうございました。

今回は、社会派ミステリーを書いてみました。

ラプ太郎先生の次回作にも乞うご期待ください。

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