かえってくる人形
ある朝、菜々美は焦っていた。大切にしていた人形がないのだ。その人形は、おばあちゃんが子供の頃から家にあったものだ。菜々美も大切にしていた。いつも同じ所にあったのに、どこにあるんだろう。
「あれっ!?」
その様子を見て、菜々美の母、すみれがやって来た。菜々美の様子がどこかおかしい。何かを探しているようだ。何があったんだろうか?
「どうしたの?」
「人形が消えてる!」
それを聞いて、すみれは驚いた。家では宝のように大切にしてきたのに、どこに行ったんだろうか?
「本当?」
「うん」
菜々美は机を指さした。いつもここに置いてあるのに、今日はない。昨夜もここに置いてあるのを確認した。なのに、朝起きたらなかった。
「いつもここに置いてたんだけどな」
「お母さん、どうして鍵が開いてるの? 戸締りしっかりしてるでしょ?」
菜々美の父、敏男の声だ。それを聞いて、すみれは驚いた。昨日はしっかり戸締りしたのに、どうしてだろう。
「うん。って、あれ?」
それを聞いて、菜々美は思った。もしかして、人形が奪われたのか?
「まさか、人形が奪われた?」
それを聞いて、すみれは思った。ひょっとして、泥棒が家に侵入して、人形を奪った?
「そうかもしれない。警察に連絡しよう」
「そうだね」
すみれは警察に連絡した。これは大変な事だ。この家の宝物のような人形が奪われたかもしれないのだから。
だが、夕方になっても見つからない。どういう事だろう。なかなか犯人が見つからないんだろうか? それとも、家のどこかにあるのでは? 今日1日探しても、全く見つからない。
「どうだった?」
「まだ見つからないのよ。心配だわ」
菜々美は不安になってきた。おばあちゃんからもらった宝物のような人形なのに、どこにあるんだろう。もし見つからなかったら、おばあちゃんに申し訳ない。大切な物だったのに。
と、敏男が菜々美の肩を叩いた。どうしたんだろう。励まそうと言うのだろうか?
「大丈夫大丈夫。絶対に見つかるから」
「そうだね、希望を捨てない事だね」
「うん」
菜々美は下を向いてしまった。物心つく頃からそばにあった人形だ。大切にしていたのに。毎日かわいがっていたのに。どうして消えてしまったんだろうか?
「大事にしてたのに・・・」
「つらいよな・・・。早く見つかってほしいよな」
「うん・・・」
敏男は1階に戻っていった。なかなか立ち直らない。どうしたらいいんだろう。全くわからないな。
敏男は1階に戻ってきた。そこにはすみれがいる。すみれは晩ごはんを作っている。すみれは、落ち込んでいる菜々美を心配していた。立ち直るには、早く見つかってほしいのに。
「どうだった?」
「落ち込んでる」
「そっか」
やはり落ち込んでいるのか。どうしたらいいんだろう。全く打開策が見つからない。やはり、人形がまたここに戻ってくるしかないんだろうか?
「早く立ち直ってほしいね」
「ああ」
2人はうなだれていた。早く立ち直ってほしい。元の菜々美に戻ってほしい。
翌朝、菜々美はいつものように目を覚ました。1晩ずっと人形の事を考えていた。人形は果たして、どこに行ったんだろう。早く見つかってほしいな。
菜々美は机を見た。すると、そこにはあの人形がある。まさか、また戻ってくるとは。どうして戻ってきたんだろうか? まさか、この人形には何かが宿っているのでは?
「あれっ!? お母さーん」
その声を聞いて、すみれがやって来た。元気な菜々美の声だ。何かあったんだろうか?
「どうした?」
「人形が戻ってきた!」
それを聞いて、すみれがやって来た。まさか、人形が戻ってきたとは。本当だろうか? そんな事、ありえないと思うんだが。
すみれは机を見た。机の上には、人形がある。まさか、人形が戻ってくるとは。どうして戻ってきたんだろうか?
「えっ!? どうして?」
菜々美は首をかしげた。どうして戻ってきたんだろう。まさか、何らかの力だろうか? 誰も入った形跡はない。しっかり戸締りをしているのに。
「わからない」
「よかったじゃないの」
菜々美は何事もなかったかのような表情だ。人形が戻ってきたから、それでよしと思っているようだ。
その人形は、盗難に遭っていた。だが、誰も知らなかった。盗んだ男は、この近くに住んでいる佐藤という男だ。佐藤はお金がなくて、この近所で宝物として扱われている人形を盗んで、売ればなんとかなると思っていた。明日にでも、オークションサイトに掲載しようかと思っていた。
その夜、佐藤は家に帰ってきた。だが、あの人形がない。佐藤は驚いた。
「あれっ!?」
佐藤は焦った。どこにあるんだろう。確かにここに置いたのに。佐藤は首をかしげた。
「どこ行ったんだろう。確かに盗んだはずなのに・・・」
佐藤は辺りを見渡した。だが、どこにもない。まさか、誰かに発見されて、持ち主の元に戻った? だとすると、もうすぐ逮捕されそうで怖いな。
「わからないな」
もう今日は疲れた。もう寝よう。明日も仕事だ。
「まぁ、寝よう」
佐藤は布団を敷き、寝入った。
佐藤は煙の匂いで目を覚ました。何だろう。火事だろうか?
「えっ!?」
佐藤は眠たい目をこすりながら、辺りを見渡した。すると、周りが火の海になっている。まさか、家が火事になるとは。どういう事だろうか?
「火事?」
佐藤は窓を開け、助けを求めた。だが、誰も助けてくれない。みんな、冷たい目で見ている。まるで何かにとりつかれているようだ。どういう事だろうか?
「助けて! 助けて!」
「もう助からないよ・・・」
佐藤は振り向いた。そこにはあの人形がある。まさか、人形がしゃべったんだろうか?
「えっ!?」
「大好きな菜々ちゃんから私を奪ったでしょ? だからそのお返し」
人形は不気味な笑みを浮かべた。まさか、人形が生きているとは。佐藤は震えあがった。
「そ、そんな・・・。やめて!」
「いや! もう許さない!」
そして、人形は口から激しい炎を吐いた。炎は瞬く間に佐藤を包み込む。
「やめて! ギャーーーー!」
佐藤は目を覚ました。どうやら夢だったようだ。夢だと知って、佐藤はほっとした。かなりリアルな夢だったな。本当に起こったかのような雰囲気だ。
「ゆ、夢か・・・。何だろあの夢は・・・」
突然、佐藤は何かに気付いて振り向いた。そこには人形がある。どうしてここに人形があるんだろうか? また戻ってきたのかな?
と、佐藤は煙の匂いに気付いた。まさか、本当の火事だろうか?
「えっ!?」
佐藤はまた振り向いた。そこには、燃えさかる炎が見える。
「燃えてる! そんな!」
「フフフ・・・」
何かを感じて、佐藤は後ろを見た。あの人形が不気味な笑みを浮かべている。
「うわぁぁぁぁぁ!」
そして、佐藤は焼け死んだ。だが、遺体は見つからなかったという。