5秒で終わる童話集
〈ねこ、ボタンを押す〉
むかしむかし、あるところに、とても好奇心旺盛なねこがいました。
ある日、「押すな」と書かれた赤いボタンを見つけました。
――ぽちっ。
世界は終わりました。
おしまい。
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〈さかなのゆめ〉
さかなは空をとぶ夢をみた。
とても気持ちよかった。
目が覚めたら、つりあげられていた。
空は、本物だった。
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〈ロボットとまほう〉
ロボットがまほうつかいに会った。
「心がほしい」と願った。
まほうつかいは言った。
「それ、エラーになるよ」
ロボットは、それでも願った。
人間ができました。
そんな人間がまた、ロボットを作り始めました。
おしまい。
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〈カメ、ついに本気を出す〉
「おまえはおそい」とウサギに笑われたカメ。
カメは黙ってサングラスをかけた。
甲羅がバイクになった。
ウサギはぴょんと跳んで、轢かれた。
おしまい。
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〈おばけ、家賃を払う〉
おばけ屋敷にだれも来なくなった。
管理会社「そろそろ家賃を…」
おばけたちはバイトを始めた。
コンビニの深夜シフトがめちゃくちゃ早くなった。
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〈しあわせの青いとり〉
青い鳥を見つけた男。
しあわせになった。
でも、7日後に鳥がこう言った。
「延長しますか?カードで」
しあわせはサブスクだった。
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〈ロボット、恋を知る〉
ロボットが少女に恋をした。
毎日、花を届けた。
少女は「ありがとう」と笑った。
ロボットは恋がした。心が動き熱くなった。
それはモーターだった。
おしまい。