第44話「結・咲の教え子達」
ドアの世界、エレメンタルワールド、アース018。現在ドアは閉まっている。
今現在歴2037年11月26日〈水〉
第7の街ノット。
湘南桃花の読解力が上がったと言うべきなのか、独りだった頃の、それこそ闇雲に走り抜けた思考の結果なのか、そうなってしまったのは仕方が無いとしてだ……。
「で、かくかくしかじかだったわけですよ」
オーバーリミッツは湘南桃花が知らなかった事を解説する。で、我に返った桃花の返答は。
「あーいいって、つまり出来ちゃったんでしょ? 当時のアレじゃあしょうがない……。そっちの都合は知らないけど、〈色指定〉だけは今後の制作進行では合わせてね? 今までと、その後で、が解んなくなっちゃうから合わせてちょうだい」
「うん、わかった」
それは、桜愛蒼葉の〈色指定〉の話だった。
とりあえず、オッドアイであることは確定である。
「左眼が桃色、右目が緑色、髪が黄色で、服装が蒼色、……こうじゃないとイラストもアニメも、映画もオーケーが出せないな……」
桃花は実際に隠されていたので、流石にこの2人で喧嘩にはならないが悩みの種にはなっているのが現状である。
創世源種として扱うならばやはり髪の色は黄色のほうが良いし、だからといって名前に蒼が付いているので接合性が取れない……、といってもオーバーリミッツはどうしても産みたいと思ったから、という気持ちは理解できるが。
では色の配色どうなるの? という所で世に発表されていないし原作者もOKを出していない、という所も、今の状態ならなら何となく判る。
あとは、何故〈蒼〉の名を冠していて、蒼い服を着ているのか? ぐらいの理由付けぐらいだろう。
親が〈何となく〉で子供に名前を授けるのは、流石に不謹慎である。
「えっと~……。生まれがEWルミネ市だから髪が黄色で、育ったのが第2の街、雲の王国ピュリアだから蒼い服を冠して着ている……とか。名前の由来は蒼い空のように自由に遊んでほしいとか、そんな感じで産まれた時に付けられた、そんな感じでいいよね?」
「任せるって言ったじゃん」
「いや、聞いてない、今知ったし!?」
喧嘩はしていないが、外から見たらイチャイチャしているように見えるかもしれない。
とにかく、そんな感じで今の接合性は取れた。
◇
第1の街ライデン、8時地区、8時ギルド学校、天上院中学校舎。
あのザ・ユニティ戦から1週間が経過していた。桃花先生も生きてるっちゃ生きているが、いかんせん本人が何をやればいいのかもうわかんなくなっちゃったらしく。とりあえず事後処理として第7の街ノットにしばらくは滞在するようである。
そこで世界種クールマと守護霊獣マイの再教育でもするのだろうか? と咲は思ったが、こちらはこちらの心配をしなければならない。あっちはあっちでやってもらうしかない。
なにせ突然、高校1年生なのに中学1年生の教育を任される形になっていた。
人手が足りないとは桃花先生から聞いたが困ったものである。
天上院咲はため息をついていた。
「はあ、なんでこうなったのか……、まあEWの内界の問題じゃなくて、外界の問題を教育するにはこうするしかないか……」
自分自身がエンジョイフェイズを満喫するためには、この教育は避けられないフェイズなんだろうな、巡ってきたんだろうなと思い決意を胸にした。
とりあえず、咲は職員室で生徒の名簿という名の情報を開く――。
名前◇流転のウオヤ〈魚家〉
希少◇R
分類◇四重奏一門_騎家の子_咲の教え子
解説◇天上院中学校の1年生、現実主義者、体質、自然。性別、男性。12歳。要望書・自然天候学を教えてあげて頂戴。人間種、日本人。
名前◇紡ぎ手のカナイ〈金亥〉
希少◇R
分類◇非理法権天一門_干支家の子_咲の教え子
解説◇天上院中学校の1年生、努力主義者、体質、政治。性別、女性。12歳。要望書・運命の糸の扱い方を教えてあげて頂戴。人間種、ギリシャ人。
名前◇伝言ゲームのカミムシ〈紙虫〉
希少◇R
分類◇最果ての軍勢一門_始祖家の子_咲の教え子
解説◇天上院中学校の1年生、感情主義者、体質、賢術。性別、男性。12歳。要望書・指揮系統の伝達係を育成して頂戴。人間種、中国人。
名前◇渡り燕のタネドリ〈種鳥〉
希少◇R
分類◇放課後クラブ一門_天上院家の子_咲の教え子
解説◇天上院中学校の1年生、夢想主義者、体質、文法。性別、女性。12歳。要望書・言語化学を言語化してあげてちょうだい。あとこの二神教の流派。人間種、南アメリカ人。
名前◇忠義のイヌゾウ〈犬像〉
希少◇R
分類◇守護の一門_犬神家の子_咲の教え子
解説◇天上院中学校の1年生、合理主義者、体質、時空。性別、男性。12歳。要望書・守護犬としての立ち回り方を教えてあげて頂戴。人間種、北アメリカ人。
名前◇桜愛蒼葉〈さくらあおば〉
希少◇SSR
分類◇四重奏一門_鈴家の子_咲の教え子
解説◇天上院中学校の3年生。説明不要。要望書、大切に扱ってね。
「ふむ、なるほど、このパターンか……てか最後……」
生徒の名簿を見て考えに耽る咲。言語が一致しない壁は都合の良い魔法でカバーするにしても、種族は6人とも人間であり、ただし国籍が違うというパターンらしかった。
ファンタジーな種族の教育ではなく、リアル側の教育を要求される現場なようだ。
あと、最近プロや大人達と揉まれているが、今回は子供と知識ゼロでこちらが教えるのが前提条件なので。
意識高い系に合わせるのではなく、意識低い系、もっと言うと無関心な子供に教育をする、という自分の認識を下げる必要性がある。もちろん相手を見下して、レベルを下げる……なんてことはしない。今の対戦環境に合う形で話をするつもりだが……さてはてどうなることやら……。
ということで、教室の中に入るドアの前で立ち止まった咲。
「すー……はあー……」
一呼吸置く、そして咲は教室のドアをガラリと開けた――。




