第41話「起・無力なままでは終われない⑯」
ドアの世界。
天上院姫がVP動画を観ている間、先で起こった事象について理解している近衛遊歩は質問する。
「ところでさ、ルーキーズ相関大学で授業を受ける〈要注意再教育人物〉って誰なの?」
「ん~~……、運命論のアリス、世界種クールマ、守護霊獣マイ、最果ての軍勢軍司令官真城和季、創造神ミュウだな」
「ん、咲と姫は含まれないのか?」
近衛遊歩は天上院姫の事を〈責任逃れじゃね?〉と思って言った。
「私や咲は転んでも治そうと、コントロールをしようと努力はしているが。この5名はそうじゃない、明確に違う、真城なんてコントロール出来てるように見えて囲ってただ流されてるだけだからな。そこら辺の違いじゃな、境界線としては」
「なるほど解った」
話の皿を変えて……。
「……ところでさ〈清めの塩〉は有効なのか?」
清めの塩とは、お相撲の用語で。地中の邪気を追い払うために力士が土俵にまく一握りの塩のこと。
「当たり前じゃん、家族の善神である咲が許すわけないだろ? 取り憑いてるものは全部祓ってヨシ! あと本物は器とは言わない、皿って言うんだ、誤魔化さないからな! 兵器なら兵器ってちゃんと言うし、家具なら家具ってちゃんという! 隠語は入れてない!」
「……そこも純化作業をしたらそうなるってことか? 汚染想子だと」
「……不本意だがそうなるな、手助けをしてるのは解ってるが……。それはそれとして〈盗ってるのか祓ってるのか〉区別がつかん……!」
不本意なご都合主義が入ってしまった。
ここで解説を交える。
一般常識的に考えて、まず作者がキャラクターに憑依して感情を表現してキャラの気持ちに成りきって表現をする、ここまでは良い。善の心も悪の心も感情を表現する以上演技役者なら当たり前だ。
だが、客観的に観て見えない何かを憑依させている人物を他人が観たら気味悪がられるのは判る、正直ドン引きするだろう。それが自分の知らない未知の何かなら尚更だ、だから毎日お祓いをしたくなる。その行動も解らなくもない。だがお祓いされている本人がソレを知らなかったら……?
彼にとって大切な宝にも似た友達を盗られているように映るだろう。それが一般常識的人間には判らないのだ。目に見えない相手の心だから尚更だ。滅したくなる、お祓いしたくなる、自分達の行動は正義だと錯覚する。
彼にとっては善も悪も無害なのにだ……。
近衛遊歩は、感情的になった天上院姫をフォローする。
「ふむ、つまり今の一般人は〈盗ることと、祓うこと〉の区別の定義が出来ていないわけか……、まあ俺達が自分でやるのもアリなんだが……」
器と皿の違いでこの溝である。姫の感情が熱しすぎたので冷ますことにする遊歩。
そこでまた一つ閃く遊歩。
「ん? てことは生物も非生物も倒したい、いや、滅っしたいって事なんじゃないか? 人間側は害のある方の桃花や群を倒せなくて困ってるんじゃないのか?」
その考えは相手の立場になれば解らなくもない。……が面白さとはかけ離れていた。
何より姫にとっては二度手間である、せっかく憑依したのに離れるという行為が発生しているからだ。
「……つまりアレか? 桃花と群が不死身すぎて毎日倒せないと……なら言えば良いじゃないか、何故言わない? 干渉できないからか?」
まあその話は置いておいて……遊歩が原因を助言する。
「一般人にとっては桃花と群の毎日の倒し方の提示が欲しいんじゃないか? だから困ってると」
「だから寿命で死ぬって言ってるじゃないか……あいつら別に不死身じゃないぞ?」
イメージでは殺せたとしても、肉体が滅んでいないから死んだ判定になっていない、問題はそこだろう。むしろ設定的には弱点だらけである。ヒーローでもない。
「じゃあもし、仮にだぞ? 姫がもし毎日桃花と群を倒したいとしたら方法はどうなる? あいつら自然再生するんだ」
「それは~……話し合いかなあ~? 離れてくださいって言ったら〈あ、はいわかりました〉って譲るよな? 人間だし……? 薬なんて使わなくても話し合えば憑依は取れるよ……?」
「……今までのやり方からしてもうちょっと間接的なやり方無いわけ? 直接的じゃなくて?」
「じゃあ、設定を追加するならば。テレビ側的には塩を使った料理の時が桃花と群の浄化のトリガーになる。とか、作者側からすれば音楽を聴いている時は浄化作用が働くとか……そういう追加要素は入れても良いかも知れないかな? ……マジで面白さとは関係無いが……。ただ今までの経験から言って、部位による弱点は無いんじゃないかな? 例え親が瀕死になったとしても、桃花の親が瀕死になるって法則性が働くから……つまり物理型での正攻法では意味が無い、鏡映しに書きかわる。毎日倒したいんだったら、塩とか音楽とか、特殊型のトリガーの弱点を付加しないと方法はない、が……そもそもあいつら自体はそんなに害はないぞ……??」
ご都合主義にもほどがある、というより限度があるというものだろう。
近衛遊歩は再確認のために復唱要求をする。
「確認のために聞いておくが、毎日倒さなきゃいけない法則はGM姫は聞いてないよな?」
「……うん、聞いてない。それこそ〈零時迷子〉の設定自体が汚染想子ってことにならないか? 毎日倒したいならそう言えよって話になるし……言っちゃ何だがそれこそこの世の歪みだよ……まあ、その話に合わせようと調整は出来るが……」
なんとも歪みまくった話ではある。
姫は桃花と群の攻略方法の調整は約束しつつも、だからといって毎日倒すというルールは聞いていないのでそのあたりのルールの調整をする。
「えっとつまり、追加ルールで〈零時迷子の法則性はキャラクターの感情や物語内の倫理を無視して強制的に行うと都合の良い設定が世界の歪みを引き起こす〉とかになるのか?」
「まあ、事実としては実際そうなってるな」
現実と幻想での歩み寄りをしようと、お互いはしていることは判る。
「よし、じゃあそれは教訓として追加しておこう」
EWの法則
【零時迷子の法則性はキャラクターの感情や物語内の倫理を無視して強制的に行うと都合の良い設定が世界の歪みを引き起こす】
で、本題に入る。
「あとは、身体測定ならぬ体内時計測定がいるってところか……」
湘南桃花と日曜双矢の時系列の齟齬がどうしても埋まらない、このままでは破局する。ので、言語化することにした。
「寿命や誕生日じゃ当てはまらないもんな……。暦基準じゃなくて、個別の人物によって経過時間がまるで違う」
今一番判りやすい体内時計の測定例だと、湘南桃花の体内時計は約38年、日曜双矢が約2年という所だろう。創造神ミュウなんて宇宙創世から現在まで約138億年を何回かやってるかもしれない。そこら辺の測定はまだやっていない、厳密には全員不明のままである。
暦は、皆が同じ時間を平等に過ごしていることが大前提にあるので、個別に時間が経過している場合その限りではない。誕生日は1個人に対しては機能しているが皆ではない。
何とかSFのVR機器、魂寿命なるもので拡張・延長・省略は可能だが。キャラクターごとに体質的な法則性が違うので、ちょっと当てはまらない。
時間という〈今〉や太陽・月を基準に動いている物理型もいるが、想像の範囲で縦横無尽に駆け回るゴーストとかの特殊型が居て、それぞれ体質的に法則性が違う。ので経過する体内時間が違うのだ。
体内時計の特徴としては、誕生日なら一方通行で進むだけなのだが、活動していないと体内時計が〈止まる〉という傾向がある。その人物の先の時間軸が無い状態だ。人によっては時系列を巻き戻したり、ループしたり、リセットしたりする現象が発生する、この例は特殊であるが存在する。
あと、体内時計を1個ではなく複数個、持ち物として所持している存在も確認出来た。
「あと、生まれる前の体内時計が存在するとかだね、最近多い異世界転生とかまさにそれだ。前世の記憶を持っている状態で体内時計が進行し続けている」
前世の体内時計はそのままに、本体が死亡したとしても異世界で転生して記憶を所持している場合などである。この場合体内時計は継承、または転移しているので誕生日が通用しない。
「てことは、今回取り扱う体内時計測定は。魂レベルの時間軸の測定で。止まったり、異世界を越えて進んだり……と言った、人生測定機みたいな感じになるのか?」
姫は長考した末に結論を出す。
「ふむ……じゃあ〈人生測定機〉と呼ぼう、懐かしいな、賭けるものは人生って言ったのがまさかここで役に立つとは……」
◇
名前◇人生測定機
希少◇SR
分類◇魂の体内時計_止まる・異世界転生_物理型・特殊型
解説◇懐中時計のペンダント。身体測定ならぬ、体内時間測定機として元来からある魂の経過時間を測定するために作られた魂の時間軸測定機。ただし、個別に測らないといけないし、細かな測定は出来ないので〈〇〇型約何年何ヶ月〉という表示になる。
暦、寿命、誕生日が通用しなくなってきたので開発された。
この測定機は本人が活動していないと〈止まる〉、本人が活動し続けた場合は例え本人が死亡し転生したとしても〈活動し続ける〉特性がある。
これにより、暦や年齢でしか測定不可能だったが〈魂元来の経過時間〉が表示されることとなる。
例えば、湘南桃花の人生測定機は約38年、日曜双矢が約2年という差が生まれている。創造神ミュウは宇宙創世から現在まで約138億年を何回かやってるかもしれない。
VR機器、魂寿命なるもので拡張・延長・省略は可能だが。キャラクターごとに〈体質〉的な法則性が違う。
時間という〈今〉や太陽・月を基準に動いている〈物理型〉もいるが、想像の範囲で縦横無尽に駆け回るゴーストなどの〈特殊型〉が居る、それぞれ体質や法則性が違うので時間経過が異なる。
人生測定機が止まると、その人物の先の時間軸が無い状態になる。
人によっては時系列を巻き戻したり、ループしたり、リセットしたりする現象が発生する、この例は特殊であるが存在する。
また、体内時計を1個ではなく複数個、持ち物として所持している存在も確認出来た。
問題点として、1人1人個別に測定しないと元来の魂時間が測定表示出来ない点である。




