第30話「承・無力なままでは終われない⑤」★
♪――今壊せ、常識越えろ、今創れ、本気のあなた、本気の私――♪
今現在歴2010年2月前、現在地不明の森の雨の結界の中。
湘南桃花は、ゲーム知識とスマホでの知識により、地図がない状況で自分の位置を把握する方法を探した結果。
どうやら〈不自然なくらい高い目標〉は異世界でも有効なようである。この場合遠くからでも位置が確認出来る人工物なら何でもいい。
サバイバルゲームで雲より高い柱を目印に色んな所へ移動して、行って帰ってを繰り返した経験がある。その場合なら地図は不要だ、太陽の位置とその目標があれば迷子にはならず拠点に帰ってこれる。
山の上に居ようと海の上に居ようと森の中に居ようと、その不自然な柱が見える範囲までなら帰って来れる。
「……今思うと、よくあんな迷宮を気分と勢いで脱出できたな……」
そう思うのは、桃花にとっての絆の数が増えたからである。
とりあえず、風船とか凧とかそんな感じで高く登る人工物を紐を繋げて上げれば、自分が遠くへ行っても帰ってこられる。
もしくはドでかい山を自分で作って目印にする……。
オーバーリミッツとの万有引力の件は、自然法則の設定なので焦らなくても〈離れない〉ことは解っている。だが早く出会いたいのも事実だが……。
遠心力と引力による力が均等に保っていることの保証なので、いずれは惹かれ合うことだけは解っている。……それでもやっぱり会いたいが……。
方位磁石でも作りたい所だが、生憎自分自身が〈南〉なので、他者にとっては便利かもしれないが……ほとんど当てにならない……。自分で言ってて悲しいが……。
なので、一番手っ取り早いのは〈地形操作〉である。
ここには魔法があることは確認済みなので魔法が使えるアリスとかに不自然な地面の塊を雲の上まで伸ばしてもらえば……、あとはそれを座標0にして起点にすればいい。
流石にこの世界全土の座標は今の段階では無理なので。
簡易版のX軸、Y軸、Z軸となる。
ただ、度数は無理なので、歩数とかになるのだろうか……?
「キロメートル使ってもいまいちピンと来ないんだよな……」
と、自分の無知さを嘆きながら自分の出来る範囲の事をする。
「あーもう! 追いたいけど戻るしか無いか! 合理的になっちゃった自分が憎たらしい……!」
本当に本当にこのタイミングでは追いたい所だが、後々のことを長い目で考えるとまずは座標0地点を設定しないとヤバい事が、長き時の旅と記憶のせいでヤバいと解っているので、まずはそれを優先する。正直言って悔しいが。
「あと解っている事といえばここが〈獣人族の国〉って事ぐらいか?」
秩序の魔法のせいで〈幻想郷〉というワードが出てこない。
〈アリスの館〉まではそんなに離れてはいないはずだ、自分の背中、反対側の方向にUターンすればいいだけなのだから。
そう思い、今来た道をとりあえず逆走して戻って行った。
10分後、現在地不明の森の雨の結界の中。アリスの館。
「ただいま! す、すまねえ! オーバーリミッツ見失った!」
秩序の魔法のせいで〈シャフラン〉というワードが出てこない。
で、まず魔女であるアリスは彼女を視て仰天した、その湘南桃花に〈くっ付いている〉膨大な可能性の光の量に驚いた。
「桃花、あんた未来で何したの……?」
「へ? は!? ……いやちょっと待って!? 未来から来たなんて一言も……」
「……は~あんた本当に嘘が下手ね、私は魔女に育てられたの、目に見えるもの以上のものが見えるのよ……今のあなたなら解るでしょ? あと、運命の糸を繰ってるのは私だからね? 忘れちゃったの?」
その言葉に、桃花は身に詰まる感情を覚えた……。さっき泣いてたのにまた別の意味で泣きそうである……。
立っているのがやっとだった、否、もはや我慢の限界を超えて泣き崩れてしまった。
「……――!!!!」
――言葉が出ない、感情の涙が溢れだした。辛かった、本当に辛かった。
さっきまで考えてた理論がどうでもいいように吹き飛びそうだった。
でもやらねば、だってそれは、後から続く人達の灯台になるのだから。
「アリス姉……お願いがあるの、光の塔を作って……」
なおも彼女は泣き崩れている。それでもアリス姉は察して……。
「解った」
とだけ言った。
あと、アリスはささやかながら助言をする。
「桃花、オーバーリミッツに全てを打ち明けなさい。彼女なら解ってくれる、そのあとが本番よ……!」
なおも桃花は意表を突かれる、隠し事をせずに全てを話す、その先に光は有ると、優しい魔女は教えてくれた……。
「この状況下で?」
「この状況下だからこそよ」
ギイ……と、不思議なドアが開く音がした。オーバーリミッツが淡い朝日の中から飛び出してきたかのようだった。
「桃花……ごめん、勝手に出て行ったりして……」
桃花は眼を見開き、そこに有る確かな存在を、ゆっくりと、ギュっと抱きしめた。
「? どうしたの桃花?」
強く、強く抱きしめた。このタイミングしか無いと思ったからだ。
「ごめん、ごめん、本当にごめん……」
「……?……」
リミッツが悲しくなって出て行った意味とは違う、もっと違う桃花の謝罪だとリミッツは思った。
そうして桃花はリミッツに全てを話した、長い物語になったが、解る範囲を時間が許す限り全て話した……。
流石に1日じゃ足りなかった、だけど時間は有った、時間はこっちの味方だった。
湘南桃花はオーバーリミッツに対して話した、彼女は最初は疑心暗鬼になり、次に半信半疑になり、最後に信じ貫く大切さ、信じなかった場合や1人になった場合にどうなったかを事細かに教えてくれた。
そう、何も隠さずに……。光も闇も、裏も表も、善と悪も隠さず話した、見透かされる事はもう解っている、それでも桃花は自分の口から言いたかったのだ。
まずピンクスズのこと、蒼スズのこと、秘十席群のこと、映画館のこと、最果ての軍勢のこと、天上院咲のこと、お婆ちゃんの死、お父さんの死、そして最後に桜愛夜鈴と信条戦空のこと……。
運命の糸、運命論、絶対点、不可逆なリアルタイム、魔法科学高等学校、他にも沢山たくさんの専門用語を彼女に全部話した……。
そして、今ある桃花の状況をリミッツに教えた。ザ・ユニティ戦の真っ最中だと。
今現在歴2010年2月前、その7日後、アリスの館、森の雨の結界の中。
地獄の7日間を抜けた……。
〈ゴーレムの騎士〉と〈亡霊の騎士〉がアリスの館の扉を守って居てくれた、その狭間から3人が不思議なドアを開けて外へ出る。
「お役目ご苦労、休んでて……」
2人の騎士は、今こそ自分の役目や使命を全うできたのだと知り、力尽きるように崩れ落ちた……。
湘南桃花、アリス、オーバーリミッツはアリスの館の外へ出る。
そして3人は空を飛んで、エウローパ大陸へと飛んだ――。
目的地へ辿り着いたアリスは〈地形操作〉の魔法を使う〈不自然なくらい人工的な雲より高い光の灯台〉を、そして後から続く希望達の道標となるように〈光水色の存在の炎〉を灯した。
名前を〈不自然な光水の灯台〉と言う。
ここが仮の座標0地点となる。
桃花、リミッツ、アリスは言う。
「普通に考えれば灯台の場所はアシアー大陸の何処かになると思うんだけど……」
「それじゃあ今の戦場から遠すぎて道標にならないってことでしょ?」
「そうね……今ある桃花のことを大切にするならば、リュビアー大陸も飛んで、エウローパ大陸にするべきだわ。そうしなきゃ本末転倒になる」
そう言って、ザ・ユニティ戦局図のど真ん中に〈不自然な光水の灯台〉を設置した。
今現在歴2010年2月前のこととなる。
そうしている内に、未来からお迎えが来たようだ。
時空を超えて展開する、アカシックレコードを積んだ未来の新幹線だ。
中から伝説のヒーロー、レジェンドマンが出て来る。
「時間だ、桃花、アリス、リミッツ、皆で一緒に未来へ行くぞ!」
「解ってる……!」
「今度は3人一緒だね!」
「絶対に離れたりなんかしないから!」
そう決意を新たに、皆で最未来歴2年へ飛んだ――。
始祖の闇のエネルギーが枯渇するまで残り8分00秒。
♪――何のため、位相の花火、愛すため、星座を繋げ、名前を紡げ――♪




