第27話「転・無力なままでは終われない②」★
♪――忘れたい、誰も消せない、忘れない、天使と悪魔、みんな友達――♪
〈繋がりの山脈〉その空域。
エネルギーが枯渇するまで残り9分30秒。
光の勇者である咲と闇の勇者? である姫はそろそろ武器を構えた方がいいか、と臨戦態勢に入る。
「そろそろスペクタウルズでも使う?」
「そうだな、相手のスペックが解って無いと攻め手も搦め手もやりずらい」
というわけで、姫は解析系アイテム、スペクタウルズを使った。
《スペクタウルズが使われました、対象の敵を解析します》
桜愛神武ステータス
知性◇科学と魔法を極めしもの。
力◇一般成人並み。
速度◇一刹那単位、あらゆる科学と魔法を0.0133秒で執行可能。
耐久力◇自身の心が折られまで不死身。始祖の闇を封印できるほどの耐久力。
エネルギー放出◇パルパティンみたいな電撃放出。
戦闘スキル◇信条戦空の父親、信条戦人のライバルだったので、知性的な戦闘スキルで互角だと思われる。
始祖の闇エクスパイモン
知性◇本能、禁忌、欲望、ルール違反に忠実。
力◇マルチバースの暴走化、運命論の暴走化、人間の努力ではそれを変更できない。
速度◇一般成人並み。
耐久力◇霊体であり、サイコキネシス系か光の力でないとダメージが入らない。
エネルギー放出◇現実世界の金星の力、自転と公転をエネルギー源とする。それは例えると、太陽が1秒間に放出するエネルギーの約30倍、または地球上のすべての核兵器を同時に爆発させた場合のエネルギーの数十億倍以上となる。
戦闘スキル◇対象は過去に目を向けてしまい、奇跡的に未来を向くことは絶対にない。
詳細◇あらゆる科学、芸術、哲学、秘密に関する知識を与えます。地上の組成、水の成分、風向きまでも知っています。
結論、どっちか片方を相手にするだけでもヤバイ相手だとわかった。
咲は表示された情報を元に絶望を覚える。
「言語化されると希望が霞むわね……」
姫は今まで上手くいかなかった根本原因はこの闇のせいだと確信する。
「なるほど、桃花と相性が悪い訳だ。人間の努力をこの始祖の闇は運命論で全否定している……のじゃ」
「え? 私ってお荷物?」
やっとの事で空を飛んでいる人間、湘南桃花はこれから先のプレイングをどうしようかを悩み、迷った。
「それを〈変えられる〉のがお前の仕事だよ桃花」
レジェンドマンが空中で飛び、静止しながらフォローに入る、そのためのヒーロー。
言っちゃなんだが自分で巻いた種を自分で治せないはずがないのだ。他の人間ならともかく彼女は違う。もっと別の意味で……否、正しい意味で普通の人間なのだ。
アナザーならともかくオリジンなら治せる、むしろオリジンしか治せない。
「ふーむ、そういう意味での責任感だったら要らなかったな~……」
罪や責任感では飛べないと誰かに考察されていた記憶はあるが、だからといって希望を求めて飛んでいるか言うとそれも違う。
だってそれは結局〈過去〉を見ているからだ。
では今の彼女にとって〈飛ぶ意味〉とは何なのだろうか?
「今の桃花にとって飛ぶとは何くぎゅう?」
真城のフォロー役、キャビネットが聞いてきた。
「私は……」
彼女は緑玉の瞳を輝かせながら自分自身に問いかける。
「やっぱり、今の私は未来を歩きたいかな、またコロコロ変わるかもしれないけど」
気持ちがコロコロ変わるのが人間だ、真っ直ぐ信念を曲げないのもカッコイイが、それで周りに迷惑がかかっているのなら、そういう物はもう〈いらないゴミ〉だ。
彼女は昔の感情を、思想を捨てると選択した。
想い出のアルバムは大切だけど、毎日見る物だとは想っていない。語り継ぐ事は大切だけど、そこにはやっぱり、未練があり。未来や夢にとってはむしろ障害物になってしまうのだ。
原因が解ったのであとは対処するだけである。
「うちから行かせてもらっていいか?」
確認したのは信条戦空だった、皆挑戦者、それは変わらない。
「確かめてみたい、こいつとの本当の距離を……!」
戦空がいつにもなく前向きである。
「よし、行って来い!」
姫がゴーサインを出した。
桃花も合わせて言う。
「戦空、あたしの代わりに、飛んでちょうだい!」
今ももう飛んでるが、桃花は物理的にではなく、もっと心の底から自由に飛んでほしいと、――願った。
それに対し、頼んでもいないのに世界種クールマは呼応する。
「なー!」
「うし! 行くぞ!」
そうして戦空は全速力で天空を駆ける――。
「では、あいさつがわりだ……」
始祖の闇と桜愛神武は拳に心氣を纏う……。
あいさつ代わりに全王型を放つのは違うな、と彼は思い。最初の初手は自然型に決めたらしい。雷の型だった。
対する戦空も自然型の心氣を纏う、単純明快な彼は。元より一番慣れている風、一番訓練した風、一番読みやすい風の型を選択する。
光風ではなく〈ただの風の型〉だった。ただし心氣が乗っている。
両者、轟音の激突と共に衝撃波が響く。
――風と雷が激突する――。
両者、相性、効率、合理的な初手か、どうかとかは考えていない。
頭を使っていないと言うよりむしろ逆、余計な雑念は払い集中力が極限まで高まっている。
行動と意思が一致した一撃を彼らは選択した。ただ本能と自然のままに――。
始祖の闇&桜愛神武とBIG4の戦闘もいよいよ開戦した。
♪――守りたい、歩き続けて、いつまでも、歩幅を合わせ、手と手を重ね――♪
第7の街ノット。
あっという間に激しく移り変わる戦局は、説明している内に別の戦局に変わっているほど目まぐるしかった。
今はアナザー地球防衛軍の陸軍・海軍・空軍がオリジンの100倍、枝分かれして
増殖して敵が増えている状況下である。
それを食い止めているのは、残っていた最果ての軍勢、軍団長不動武と副軍団長不動文である。
彼らの能力はバランスを保つ事に特化しているので、地球防衛軍が100倍居ようが100倍増やして相殺するだけなので大した労力にならない。
……と、バケモノじみた思考回路感覚で本人達は思っている。
『こちら不動武と不動文、どうやら最果ての五帝がヘイト値高すぎて俺達2人は忘れられてたみたいだ。俺と文は防御力は高いがそんなに攻撃力は無い、今の間だけは時間稼ぎができるということを共有しておいてくれ。オーバー』
『こちら真城和季、了解した』
どうやらあっちは〈時間の問題で数に押される〉と認識で合っているだろう。
「さて、どうしたものか……」
あっちもこっちも人手が足りない、数が多すぎる……。
「長考ですか真城さん?」
話しかけてきたのは桜愛夜鈴。
「ん、ああ……どう見ても滅茶苦茶不利だよな……」
「では一緒に考えましょう!」
接点がないのに夜鈴にいきなり背中を押された真城はきょとんとした。
「一応、古来と未来の図書館を崩さないと第7の街のバリアは突破されない作りになっているが……。流石に手数や圧倒的人数の敵に押される事は想定していなかった」
「ん~……とりあえず割り算します?」
真城もソレ……同じ事は考えていたが、その場しのぎにしかならない仮の案だと思って保留していた。
だが、状況が刻一刻と変わる戦場で迷っている時間も惜しいし、命取りになる。なので夜鈴に対して「そうだな」と言って出せる手札は今すぐ出す事にした。
真城は強化系第3位、旅団長アインに連絡する。
『アイン! 数字絶対主義で割り算しろ!』
『えぇ!? 割り算って何ですか!? 美味しいんですか!?』
そう、このアインはバカなのだ。能力は凄いのに足し算と引き算しか出来ない。それが今、最大のネックだった。
『他の人に手伝って貰え! 今すぐ割り算を覚えろ! 算数ドリルとか出してその場で勉強しろ!』
『んな無茶苦茶言わないでよーーここ戦場だよーー!?!?!?!?』
そりゃそうなるだろうなとは思ったが今可能性があるとしたら〈割り算〉ぐらいしか無いのだ。もしくは思い浮かばない。
「戦空! 可能性の光を辿れ! アインが割り算を覚えた世界の光を辿るんだ!」
真城が伝令を叫ぶ。
「おっけーい!」
ノリに乗っている戦空はバカっぽい笑い声を上げる、実際やっている事もバカっぽいのだが、こっちは真剣だ。
咲は判ったと、真昼ノ剣を下へ下げて真夜ノ剣を天高く上げる。
「じゃ真夜ノ剣展開するか! いっくよー! 真夜ノ剣! 展開!」
すると、戦場全体が一瞬で夜空に風変わりした。あとは可能性の光が1つでも出現すれば良いだけである。
『光の守護者達の準備は整った! さっさと割り算覚えろアイン!』
『ええええええええええええええええええええ!?!?!??!』
判ってはいたが等の本人は大混乱である。果たして彼女はこの戦場で割り算を暗記することは出来るのだろうか……?????
♪――わからない、欠片の翼、わからせる、全ての空は、繋がっている――♪




