第23話「転・ザ・ユニティ発動準備①」
最未来歴2年、第7の街ノット。
「多元宇宙先行調査部隊が交戦を開始したことを確認いたしました!」
「ふむ、わかった、引き続き調査を頼む、こっちに影響しないようにな」
神武海賊団の隊員らしき、海賊服の男は船長である桜愛神武に魔法で報告してきた。報告を終えた隊員は姿を消す。喫茶店のテーブルの向こう側には天上院咲と天上院姫が神武の過去回想聞き終わったあとでも座っている。
「……まあこんだけ派手に準備してたらそりゃ皆も心踊るか……」
GMである姫も、もう見慣れた光景で、慣れっこである、元よりこんな大多数が運動会のスタートダッシュで「よーいドン!」なんて出来る訳が無いのだ……。皆社会や生活や締切がある中でむしろよくやっている方だと褒めてあげたい所である。
「うーん、こりゃあ今回のイベントは荒れそうだねえ~~~~」
他人事みたいに言っているが今回に限っては主役級の活躍をする2柱になっているんだぞ、天上院咲。
天上院姫は腕組&足組みしながら今後の展開を考える。
「この流れだと、もちろんBIG4は集結させるつもりじゃが……、今回の敵さん相手が、元々わしの闇から分岐して生まれた存在、始祖の闇ならば。当然、光の力が有効になるので、自動的に信条戦空と天上院咲の〈2人の光の力〉が一番効くことになる。有効打・効果抜群だな」
ちなみに改めて言うが、今始祖の闇を体内で封印&制御しているのは桜愛夜鈴の父親、桜愛神武である。
始祖の闇の封印を解いたら、自動的に桜愛神武に依り代として憑依するので、今回のイベントのラスボスは始祖の闇&桜愛神武となる。
始祖の闇が顕現したら再びインカージョンが発生、闇の力が尽きるまで暴走し、時間軸がスパゲッティの糸のようにグチャグチャになる予定だ。
GMの姫はぼそっと呟く。
「まだイベント告知もしてねーんだよなー……」
まずイベント告知の文言をゲーム風に宣伝してからでないと〈こちら側〉は動けないんだよね、と影で愚痴る。
「あの、確認で言質を取りたいんですけど桜愛神武さんを攻撃しても大丈夫なんですか……?」
老体にムチを打つようで申し訳ないが、咲は神武お爺ちゃんの身体の方を気にする。
「心配ない、多少死んでもすぐ元に戻る。伝統的な風習〈心が折れたほうが負け〉というルールが今回は適応される、あまり深いことは気にするな」
という論理的でも感情論的でもない〈ざっくりやる〉という認識を確認できた。
とはいえ動機の基盤がしっかり出来ているので今回はたぶん戦いやすい。
「残る不安材料といえば、信条戦空の武器装備が未だに〈素手〉って所なんだよな~、咲は真昼ノ剣と真夜ノ剣でバリバリに装備固めてるのに。ぶっちゃけ戦空が〈設定負けしてる〉のが気がかり……」
最長文学少女と化した天上院咲とその土俵で信条戦空がこの条件下で戦うとなると、いよいよパワー不足が否めないのが姫の気がかり。
その問題に咲が姫に妙案を投げつける。
「じゃあさ、さっき発掘した精霊石を戦空くんのガントレットとして作っちゃうのはどうかな? 余裕があれば桜愛夜鈴ちゃんの刀の方も」
まずは最優先として、光の勇者の武器がカッコよくないと〈カッコがつかない〉という問題点から解決することにする。
「うん、そうじゃな、まずは戦空の武器じゃ。それを作ってからBIG4、四重奏、非理法権天、最果ての軍勢、放課後クラブを召集しよう」
イベント告知や皆を呼ぶ前にまず、伝説のマスターソードばりの武器を作ってから呼ぼうという形になった。
というわけで鍛冶屋でのイベントを~中略~……して、さっさか両腕用のガントレットを作ってもらった。色は青。
名前◇ザ・ユニティ
希少◇SSR
分類◇武器・ガントレット_精霊石_光属性
解説◇信条戦空の装備品。天上院咲と天上院姫が、第7の街の未開拓の地、サバイバルクラフトエリアで採掘した天然の精霊鉱石から作られたガントレット。日本語訳だと「団結」を意味する。
光風の精霊が宿っている。自然界から派生する、光の守護者達のあらゆる全ての願いや夢が結実した終着点。
元の世界より更に希少、〈戦空がいる世界〉と〈戦空自身〉と〈この装備〉により、世界にとっての特異点でもあり、光の勇者にとっても特異点である。特異点とは元の世界に自立&自動的に備わっているプログラム、即ち修復機能。
このガントレットは、世界の〈歪み〉を修復する『特異点』として機能する。この世界と勇者『信条戦空』が持つ復元能力を強化し、元の世界EWの姿を保つための『制御装置』となる。
能力1「光源のコントロール」
まず心の光の吸収とそれに伴う〈引力〉の自動調整コントロール。繋がる心による絆の力。友達や仲間の可能性の光が全ての多元世界にどこか1つでも存在すればそれを説明不要・条件無しで執行できる。彼個人の光の心のみに頼るのではなく、彼を信じる仲間の光もエネルギー源として、収束しこの特異点に繋がり集り、執行できる星と光と風の力。
能力2「バタフライ効果のコントロール」
空気の振動による〈疎密波〉による音楽と歌声のコントロール、無風や真空、宇宙空間でもコントロール可能。カオス理論の気象学のコントロール、最終的な未来結果の予測制御が可能になる。初期状態の波動関数による指数関数的な増幅による〈嵐の始まりと終わり〉も制御可能になる。小さな選択や行動が未来に与える影響を任意で操作する。
能力3「世界線の流れのコントロール」
通常時間の流れは過去・現在・未来へ向かっているが、時間を未来・現在・過去へ流すことも可能。時間の静止・運動もコントロール可能。これは多想世界と現実世界の両面で実行可能である。
ただし、出来ないことは〈時空間の切り貼り〉、〈多元宇宙への移動〉である。空間の切り貼りに関することは桜愛夜鈴に任せて。多元宇宙に一点として存在しているのは湘南桃花でありここは役割分担している。つまり信条戦空は特定の条件下で〈単一宇宙&世界のコントロール権〉に秀でている。
一通り第1段階の下ごしらえ。準備が終わったのであとはイベント告知の文言をGMである姫が考えて文字として打つだけである。
「こういうのは毎回やるけど最初の書き始めはいつだって緊張するな~~」
毎回やって慣れているはずなのに、こればっかりは慣れないと愚痴るGM姫。
「えっと~、最初は何て書けばいいんだこれ~……?」
と、愚痴りながらとりあえず手を走らせて、プロットを作り、雑な文言をまとめ上げてゆく……。
◇イベント名「無力なままでは終われない」
エレメンタルワールド大型アップデートによる目玉イベントか発表された。
全ての因縁と全ての運命に終止符を。今、BIG4と全てのプレイヤー・NPCが集結する。敵は始祖の闇、四獣王ジゲンドン、そして全ての時間軸の全ての自分達。
桜愛夜鈴の父親にして科学と魔法を極めしもの、生まれながらの王である桜愛神武が伝統に則り「想像できる全力で、でなきゃ相手に失礼だ」の精神で静かに全力を出す。1人の魔術師を皆で手助けする作戦名「ザ・ユニティ」の幕が切って落とされた。




