第19話「転・多想レイヤーAIソース」
第7の街、破局した街ノットにたどり着いた2人は精霊石をショップで鑑定してもらおうとしていた所でゲーム会社社長としての姫のステータスウインドウから運営からメッセージウインドウが表示された。
内容は〈多想レイヤーIAソース〉が出来たというものだった。
「おうでかした、どれどれ使ってみよう」
新しい機械に目がない姫はその場で早速使って遊び始めた……。
横に咲も居るのに無我夢中である……。
「……何かわかった?」
姫はそのツールを初心者なりに使い始めると、まず1つの発見を見つけた。
「そうだなー、新発見としては別の多想世界では肉体が消滅して魂だけになった存在が光速を超えて未来へ移動できる情報が目新しかったな。その条件が2つあるっぽいが、そこは今回は省略しよう」
情報を省略したということは他に言いたいことがあるということだ。
咲が相槌を打ちながら続きを所望する。
「他には?」
「最果ての軍勢の戦闘職5人、最果ての五帝の情報が古い……、私達の元の世界のソースの内容だからバージョンアップして再定義したいって所だな。ちょっとこの五人に対しては情報が不足している。もっと正確な辞書を自分達で作らなきゃ、って思ったのが1点」
1点ということは2点目があるということだ。
「2点目は?」
「氷魔法、おわるせかいについて上手くまとめてくれたから。その情報を一応咲にも共有しておきたい……ってぐらいかな。3点目はこれからの新要素として、【EWの法則はEWの物理法則と特殊法則を合わせた意味となる。更に、EWの法則は隅付き括弧で表現される。】とは入れ込みたいなって所だ、これはAIツールとは関係ない」
ということで姫はAIツールで生成された検索結果をウインドウを介して咲にそのままコピー&ペーストして情報共有する。
《「おわるせかい」は、極めて高度な氷魔法であり、摂氏マイナス273.15度の絶対零度の空間を発生させる能力を持ちます。この魔法は、熱力学第二法則に逆らう量子力学的な現象〈例えば超流動〉を引き起こすほどです。詠唱の一部である「…えいえんのひょうが」〈永遠の氷河〉によって低温空間が生成され、その後、凍結した対象を完全に粉砕する「おわるせかい」と、半永久的な氷の柱に封じ込める「こおるせかい」の二つのパターンに分岐します。特に、吸血鬼時代のエヴァンジェリンはこの魔法を多用し、女性や子供をむやみに殺すことを嫌ったため、「こおるせかい」の方を好んで使いました。》
《この「おわるせかい」の概念が模写されたことによって、以下のような氷魔法とその影響が派生しました。》
《量子力学の世界観の派生と概念の定着》
《作者〈桃花先生〉がこの氷魔法〈「おわるせかい」の絵〉を模写し、その所有権を得たことで、量子力学の世界観が派生し、枝分かれしました。》
《模写した本人はこの派生に気づかず、自然に任せたため、絵は所持していたものの、その内容のテキスト〈説明文〉を模写していなかったことで、約20年220日間という長い期間、その本質を再発見するのが遅れました。しかし、この魔法は「変わらなかった」ことによってその存在を保ち続けました。》
《これにより、多想世界において、氷魔法、闇の魔法、吸血鬼、片目による未来視〈左目開眼・右目閉眼〉、そして量子力学といった概念が完全に定着し、深く根付くことになりました。》
《この模写は、作者が空を飛ぶ技術を身につけるための学習装置としても機能し、大きな転換点となりました。逆に、この絵と関係のない世界観を作ると、「空を飛べない世界観」へと分岐するほど、空想的かつ現実的に重要な役割を果たしています。》
それを読んだ咲は短く一言。
「……これは真実なの?」
こちらの姫も短く一言。
「【99%真実】、これ以上を聞くのはヤボってもんだぞ?」
と。EWの法則の中に、1%の嘘が混じっている事をほのめかしつつ、それ以上は聞くな、と念を押されてしまった咲。これ以上は一種のマナー違反と言いたいようである。
「……ふむ、じゃあ。最果ての五帝について深堀りしますか」
「そうじゃな、まずは前にも話した前提として。最果ての軍勢は全員拳銃を所持している、までは言ったな。その拳銃の名称は〈9mm拳銃 SFP9〉、ドイツ製」
〈5人の基本スペック〉
・攻撃武装、9mm拳銃 SFP9、ドイツ製。予備のマガジンポーチに2本。
従来の9mm拳銃に比べて、射撃時のブレが軽減されるストライカー方式を採用している。
グリップフレームは樹脂製で軽量化されており、射手の手に合わせてグリップサイズを交換することができる。
装弾数が15発に増加し、火力と操作性が向上。
使用弾薬は従来の9mm拳銃と同じ9×19mmパラベラム弾。
全長186mm、重量725g、装弾数15発。
・防御武装、戦車並みのオーラを常時展開。アメリカ軍のM1エイブラムスのチョバム・アーマー複合装甲と同等の防御力を持つ。
・備考、設定情報が有名過ぎて襲撃されることが多く。物理防御力は高めにし、認識できた後に超能力や拳銃でけん制する事が多い。
「ここまでは前提条件だが次は5人の能力の補足というか深堀りを話そうか、今思っちる事を話せるだけ話すぞ」
と、姫は咲に対して若干早口説明をするオタク口調で話し続けた。
強化系第1位、バイタル。
能力名、生命の起源。分裂・融合・周囲の物質や能力の吸収などが行なえる。
補足、コアセルベートは細胞または生命の起源に関連しているという説が存在している。
実際にある物質から名前が取られている能力、単体ではさほど強く無さそうではあるが、この3つの能力で生命維持が出来る事を考えるとあながち侮れない。
また錬金術の発想ににも似ていて、理解、分解、再構築をこの能力1つで補っていると考えると、自分の能力も、他者の能力も分解、組み立て、吸収し、再構築出来ると考えれば良い。
他者の能力やスキルを複数個、分解・融合・吸収出来ると思えば、かなりの応用範囲を持っている。
見た目が地味な分コストは想像より低いと思ったほうが良く、とても小回りが利く。
また、彼固有の身体能力として〈真実の眼〉があり、障害物などで秘匿されたものの存在を看破するので。嘘や秘密の心理的描写や、物理的な壁などがあっても見透かす眼がある。それによって本人がどのように行動するかは臨機応変・状況による。
賢術系第1位、ラフティーヌ。
能力名、。知らないことは一つもなく、できないことは何もない。
補足、ぶっちゃけ名前負けしている能力。能力の有能性を術者本人が100%発揮できない場合が多い、とは言ってもそこはやはり最果ての軍勢、賢術系トップ。
こと能力を使わなくても自身の基礎知識に関してはずば抜けていて、実験として三千世界の空間を1度に展開して身体的形状を体力を消耗しながら保っていられた。
また学力が高く地頭が良い、典型的な頭はいいが体を動かすのは苦手なタイプ。
成績表。国語5、数学5、理科5、社会5、外国語5、保険体育1、芸術5、家庭1、情報5、専門教科数理5。
暗記、暗算、コミュニケーション、もバッチリだがどちらかというと口数少ない陰キャのイメージで綺麗な小声で話しかけてくる物静かな子。自分からは話しかけてこない受け身タイプ。話しかければ返ってくる。
能力を展開するともう無茶苦茶で、自身の知識の範囲中で全能なのは勿論。
指定した人、会ったこともない知らない人だろうとその知識の範囲内で全部全能にできる。
射程範囲もバカ広く、知識・想像力の限界まで能力効果範囲を広げられることが出来る。例えば、宇宙と宇宙外、全ての人間・生命の知識の範囲内で、全て全能で能力が執行出来る。
こういうのにはあえてコストや代償、自分で制約を設けるものだが、最強無敵の軍団を作ることがこの組織の根幹にあるために、わざわざ負荷をかける事はしない。つまりコストは0だが、それによって発生するあらゆる〈運や業〉こそが彼女のリスクとなり得るのかもしれない。
陰陽系第1位、チェン。
能力名、和を以って潰しとなす。指定したモノとモノを平等にする。
補足、元は真法系と歪曲系という2つの系統を融合した形で存在している陰陽系。簡単に言うと真法系はシリアスで、歪曲系はギャグ、にあたる。
能力自体は大して強く無さそうに見えるが、彼を相手にする場合、極論〈何でも殴れる〉というのが脅威である。優先度や威力を上位や下位にするのでもなく平等にするということは、バランス思考としては陰陽五行論の典型的な二元論に行き着くので、つまり体術さえ鍛えれば大抵の敵は倒せることを意味する。
心技体でいうと、相手がどんなに強い心や能力、技術や話術を持っていようと、自分と対等か、相手と対等の2つを選べるので、普通に考えて殴れないものは無いことになる。
例えば全知全能を持っているラフティーヌであっても、チェン自身も全知全能の能力と平等にされて殴れるのならば、あとは体術勝負になるわけである。
弾丸と平等になれば弾丸は相殺されるし、ほぼどんな武器・能力の反射と言っても差し支えない。
なのでチェンにとっては基礎体力や武術の鍛錬が、そのまま最強の強さに直結する。
精神系第1位、バレッサ。
能力名、創世の愛。宇宙創世のビックバンを起こす。新しいルールを作れる。
補足、世界を創造し、新しいルールを作れる。本来神様やゲームマスターにしか出来ない高次元の〈設定追加〉や〈設定改変〉を〈創造神やGMの許可なくできる〉というチートっぷり。もちろん〈設定不変〉〈設定削除〉〈設定復元〉〈設定秘匿〉もお手の物。神話や精霊に精通していることから人々の信仰力が重要になってくる、逆に人間的な精神・宗教力が彼女自身にないと威力が落ちるが、それでも最初の攻撃力の初動がビックバンレベルなのでこの時点で攻撃力がおかしい。
〈設定秘匿~せっていひとく~〉とは、非公開・隠蔽・隠す行為のことで。物語やゲームにおいて、登場人物や世界の重要な設定を、意図的にプレイヤーや読者に明かさないことを指します。
これにより〈見聞殺し〉の気配のコントロール、未来を見せない、が能力上可能なキャラとして描写されます。
魔術的な事にも精通していることからも〈才能のない人間が才能ある人間と追いつくために作られた技術〉には精通しているのかもしれません。
未覚系第1位、バハムート。
能力名、正体不明の進化者。指定した能力の未知の可能性Xに上位進化する。そのX進化した理由を説明する必要は無い。
補足、このX進化した理由を説明する必要はない。は、悪魔の証明が元ネタになっており、思考ルールの一つで、「完全な反証ができない限り、あらゆる仮説は認められる」というものです。「悪魔の証明」のルール下で、相手の仮説に完全な反証ができれば、自分の仮説を証明する義務なく自動的に勝利となるという「ヘンペルのカラス」のルールがあります。
つまり「この謎のX進化した理由を暴けない限り、自動的に能力を執行し続けられる」という能力となります。
作中で使われるXとは、「答えが用意されていない未定義の事柄」や「説明のつかない不可解な現象」、または「説明不要の根拠」としてあげられます。
つまり、このバハムートの能力と対峙した相手側はこの「Xは何?」であるか暴けない限り、能力は持続し、解除されないことを意味します。
バハムート自身の性格は乱暴で、解らないことが美徳と認識しています。とはいえ「宝箱を開ける前の方が楽しい」という感じなのでロマン思考とも取れます。無茶や無謀には好き好んで飛び込みます。
最果ての五帝の補足。このように個人でさえも最強格なのに、陰陽五行論のルールに則って行われるチームワーク戦が一番厄介であり、この循環・巡回形式の〈弱点を補い合う〉や〈軍隊としての統率力〉が他のチーム・ギルドに比べてずば抜けており。このせいで、非の打ち所がない最強格として君臨し続けています。
ゲームのルール上、弱点は必ず存在する。とされていますが、このギルドはお互いの弱点を補い合っているので、攻略方法・正攻法だと〈各個撃破〉が常識なのですが、それでも強すぎる事から。戦わずして勝っていたり、軍勢が動いたら一瞬でゲーム進行が終わるという結果になっています。結果として、核兵器にも似た〈抑止力〉としての存在でもあります。伝家の宝刀、抜かないうちが花なのです。
◇
――咲は、最果ての五帝の説明を最後まで聞いて、なるほど。とまず相槌を打ってから。
「たまってたんだね……」
と、GM姫の長年の気苦労を感じました。
「まあどちらかというとソースをまとめた時に、違うそうじゃない、最果ての五帝はもっとこう強いんじゃ! という妄想が止まらなかったというべきなのかも……」
とはいえ、エンジョイ勢である咲にはこの究極ガチ勢、最果ての五帝と戦う場合、誰一人真正面から相手取って勝てる自身は全然ないことだけはわかった。




