第18話「承・精霊石」
西暦2037年11月19日〈水〉、午後。
エレメンタルワールド、エウローパ大陸、第7の街、破局した世界ノット。サバイバルクラフトエリア。
夜が明けて、あれから5分くらいが経っただろうか? とはいってもこのエリアにはデジタル時計の数値表記も無いので太陽の上がった位置で大体の時間感覚を養う必要がある。
咲はバケツを持って川へ行き、水をくむ、くんだ水をリンゴの種を蒔いた畑へ持っていき水を与える。ゲーム感覚だから現実世界より成長速度は速いだろうが、それでもどれぐらいで木の実が生るのかは未知数である。
ついでに道中焚き火用の木の枝を大量に集める。
姫は穴を掘っている、石器時代の炭鉱虚しく、石のシャベルで良さそうな鉱石や雨風を防げるほどの空間を作るのが仕事だ。
「ワンワン!」
「なー!」
ペットである子犬のマイと、子亀のクールマに見守られながら作業を続ける。
まずはこのサバイバルクラフトエリアで衣食住がまともに出来る拠点を作らなくては冒険も出来ない、ぶっちゃけ生きるのに必死だ。
だって今日明日の夜を生き抜けるのかも解らないのだから。
――カアン!
広い洞窟空間を作ろうと思っていた姫は何か硬い鉱石と自分の持っているシャベル型の石がぶつかった。
ソノ鉱石は青色の水晶のガラスのように透き通っていたが硬度はダイヤモンドみたいに硬そうで、石のシャベルの耐久値が一気に減った。石にヒビが割れた。
「ん? 何じゃこれ?」
何かいつも見ていたような物体であるが、どこか懐かしい。そんな感想を抱かせる鉱石に疑問から、掘れば掘るほど核心へ変わっていった。
「おーい! 咲ー来てみろー! 天然の精霊石だぞー、エレメンタルだよこれ!?」
ぶっちゃけ咲にとっては始めて見るソレは、とても不思議というかスピリチュアルな感じが漂っていた。入念にくっ付いた土と泥を水で洗い流すと綺麗な鉱石を掘り当てた。まだ何にも加工を施していないその鉱石は大自然の赴くまま不格好な規則性のない天然な石の結晶として存在していた。
初めて見るその鉱石を、咲は何処かで感じたことがあるな? と疑問に思ったが、アレだ。最古来歴の洞窟に設置して最未来歴でどうなるか実験した〈文法型の心氣〉を纏った石コロと〈似たような波動〉を感じたのだ。
「まあ、創造神であるわしは手品みたいに何も無いところからパパッと手から生成出来るが、流石に天然の精霊石を掘り当てるのは初めてじゃな……!」
もっと昔の記憶を遡れば、加工され、崇め奉られた精霊石の祭壇を1度か2度は見たことあるが、流石に天然物の鉱石は初めての姫だ。
もっともっと昔に遡れば、この精霊石はかの有名な〈飛行石〉の子孫という事になるのだろうか……?
勿論、咲は見たことがないし、知るのは今が初めてだ。
「えっと、つまりこれは……。元祖エレメンタル・ストーンって事なの? へーこんな所で発掘出来るんだ……」
その貴重性というか重要性というか、やはり前知識が皆無な咲にとって、透き通った青く輝く綺麗な石にしか見えない。
が、文法型の心氣を纏った石と似た波動や波長を感じる事からも。〈何かワケありな代物なんだろうな〉という感覚だけは薄々感じ取れる。とにかく説明や解説が無いと咲には何も判らない……。
「お姉ちゃん、解説して。これは文法型の心氣の石コロと同じ物なの?」
姫は少し考える、確かに精製方法は一緒だが、そもそも心氣の石と精霊石では歴史がそもそも違う。
「同じ物ではないな……。ま、簡単に言うと心氣の石は人工物じゃが、精霊石は完全に天然物に分類される。心氣の石は技術で生成されたものだが、精霊石は心で生成された物って事にもなるし……あ、心技体で言うのならって話な?」
姫は、必死に差別化したいのか区別化したいのかわからないが、とにかく言語化に務める。
「んん~……。例えば金塊で言うのなら、同じ金塊なんだけど……、んん~何て言えば良いのかな……出た所が違うというか、出てきた鉱山が違うって言い方になるのかな……? 同じ純度100%の金塊なんじゃが……」
姫本人もわかっていないようなので、その言葉の糸口から咲は姫のフォローをする。
「つまり、技鉱山で発掘出来たのが心氣の石で、心鉱山で発掘出来たのが精霊石ってことかな……?」
「あー、まあそれそれ、そんな感じ。まあ同じ金塊って例えたが、効能も違うし、そこで崇め立てられてる伝承や伝統も違う金塊って事になるのかな……?」
同じ物なのに意味が違う、みたいなニュアンスだろうか……?
結局同じものなのか違うものなのか解らず要領を得ない。
「はっきりしないなあ~……じゃあ元素としては同じ物質なの? その精霊石って」
またもや考えを巡らせて長考する姫。果たしてこれは元祖・元素・元来的に同じものなのか?
「ん~……手で作った金塊と、心で作った金塊だから~~~~、元素的にも同じ物質だと思う……」
自信が無さそうに言う姫だったが、どうやら出どころは違うが本質は同じ物らしい、と咲は独自解釈した。
「ふーん、で、この鉱石どうするの?」
「ん~エレメンタルワールド的にレア度は良く出て来るR何だけど、本当はSSRぐらい珍しい代物だからな~……1回、第7の街に戻って〈鑑定〉してもらおうか。このサバイバルクラフトエリアじゃ宝の持ち腐れだ……生きるのに必死で石どころの話じゃない」
「……そうだね、石よりも食べ物が欲しいもんね……」
流石に持ち物が2人合わせて、バケツとナイフと高級鉱石だと釣り合いが悪い。
今欲しいのは石より鶏の肉とか牛の牛乳とかそんなのだ。
このエリアで死んだら高級鉱石、精霊石もロストする。
というわけで2人と2匹は精霊石を持って第7の街へ引き返す事にした。
サバイバルクラフトエリアを脱出できれば通常装備に戻れる、テレポートも飛空艇も使いたい放題になった2人はさっさと街に戻ったのだった。
◇◇◇
名前◇精霊石
希少◇R
分類◇精霊鉱石_氷河期の隕石_エレメンタル
解説◇
【精霊石の特性・性質】
・精霊石の歴史。
紀元前2万年頃、地球が最終氷期最盛期を迎え、生命が存亡の危機に瀕していた時代。
宇宙から飛来した巨大な隕石が地球に衝突。この隕石こそが、後の「精霊石」の起源。
隕石の衝突は、地球に甚大な環境変動をもたらし、さらなる寒冷化を加速させた。しかし、この絶望的な状況下で、隕石に宿っていた知的生命体である精霊が、人類という存在の「強い生への意志」に共鳴し、精霊石として進展します。
精霊は、人類を救済するため、自らとシンクロできる「選ばれし者」を選び始めます。これにより、人類は精霊石の力を借りて氷河期を生き延び、文明の火を繋いでいくことになります。
・知的生命体としての特性。
精霊石は単なる鉱物ではなく、太古から存在し、意思を持つ知的生命体です。
現代の技術で加工は可能。自らとシンクロ率という波長が合う者が「選ばれし者」として精霊石が持ち主を選びます。選ばれし者には「声」が聞こえ、精霊石と会話することが出来ます。
・精霊石の「声」の性質。
基本的に所有権を持った人間にしか精霊石の声は聞こえず。他人が観たらその人間は幽霊と会話しているように見え、錯覚する。
声に個性はあり、名前、精神年齢、性格は存在する。
声は所有権を持てば、一般人でもヒーローでもヴィランでも平等に聞くことはでき。
ヒーローだから良心的な声が聞こえるとか、ヴィランだから悪心的な声が聞こえるとかではない。
・記憶の有無。
精霊石の所有権を失った人間は自分が精霊石を使用・会話した事等の記憶が一切なくなる。
しかし、精霊石を持ってから失うまでの全ての記憶を喪失するのではなく、自分のしてきた行動は精霊石の所有者であった事が絡まない形で残る。
なので太古から存在していたにも関わらず。精霊石を持っていたとしても、一般人には「霊の声が聞こえる」とか、スピリチュアルな謎のままに終わるか、不思議な夢みたいな出来事として片付けられ、近代まで未知数なまま技術も情報も進展しなかった。
・共生と等価交換のシステム。
「選ばれし者」しか精霊石を砕くことは出来ません。精霊石は精霊粒子となり、持ち主と共生します。この状態は「シンクロ状態」と呼ばれます。このシンクロ状態は、等価交換に見合った魔法・実力・超能力を発揮します。この等価交換は「先払い」か「後払い」かを「声」と会話し選択することができるが、必ずコストを払わないと。時間経過と共に利子が膨れ上がります。
・自己修復能力
シンクロ状態が解けると、精霊粒子は持ち主の体内で再集合し、元の精霊石へと自己修復します。この「砕けて元に戻る」ナノテクノロジーのような性質がこの鉱石です。
・道具としての側面
精霊石自体は加工が出来る。一般の武器や道具に転用可能。ただし共生しない「選ばれし者」ではないので、持ち主の心に反応することはありません。
硬度値の変化。
「選ばれし者」が精霊石を使うとモール硬度1、チョークのような柔らかさ。
選ばれし者ではない者が精霊石を使うとモール硬度7、ガラスより硬い。この時の融点は日本刀と同じ約1500℃。
精霊石に精霊が居ない状態だと、モール硬度10、ダイヤモンドのように最も硬い。
導電性は「半導体」であり。精霊が宿っていないと〈絶縁体〉になり、精霊が宿っていると〈導体〉になります。
・精霊が宿っていない状態。
精霊が宿っていない状態では、精霊石はただの硬い鉱物として存在します。
精霊石に宿らない・または宿れない状況は。
精霊との絆などのシンクロ率が0に成った時、またはジャミング〈精霊波〉による妨害などで精霊の力が一時的に使えなくなった時。
・まとめ
精霊石は持ち主を選び、共生することで力を与えるが、利用には等価交換が伴う。という命を宿した神秘的な鉱石。




