表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ドアの世界~少女は異世界ゲームで名を揚げる。~  作者: ゆめみじ18
第1章「エタニティー・サーガ」西暦2037年11月18日〈水〉

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

11/24

第11話「転・私のやるべきこと」

 エレメンタルワールド、第1の街ライデン、彼岸花の咲く川辺。


 湘南桃花は川辺で黄昏れていた。そへ日曜双矢が歩いてくる。

「目的を見失って、やりたいことも無くなって、自分の問題も綺麗さっぱり無くなって、行きたい方向もわからなくなって、出来ないことは全部手伝ってもらって、終わらない夢を追い続けて。それでそのあとどうしたいんだ?」


 桃花は川を眺めながら双矢の声色で察知する、顔は振り向かない、そんな心の余裕は無く、ダウナー気味だった。

「なんだ……ブロードか」

「今は日曜双矢って名前でやってるが、この名前もいつまで持つかな……」


「何しに来たの? 船ならあるでしょ?」

「何、今の桃花先生のやりたいことって何なのかな? とおもってさ」

 色んな人がお互いやりたいことがある状況なのは解っているが、双矢は桃花がやりたいことは何かは具体的に聞いていない。


「……、世界を見て回った。そこには悪役ばかりだった、自分が悪役を主役にした物語を主軸にした作品を作ったからだと後になって知った。……そのせいで大勢が不幸になった。皆不幸になった、それを防ぐために、守るために戦った。気づいたときには手遅れだった……。私の手には人々に幸福を分け与えることも出来たのに、出来なかった。それが凄く悔しい……」

 誰かに言われた言葉「今回もきっと後悔する」という言葉が桃花の脳裏を過ぎる。


「……」

「吸血鬼大戦だって、デート戦争だって、咲ちゃんのVRだって、結局自分の自己満足の為にやった。ただ良かれと思ってやってきた、その結果、自分も他人も苦しめた……、傷つけた、もう自分の闇に負けたくない」


「誰かに負けるんのは良い、だけど自分に負けるのは嫌だって奴だっけ? 先生が言ってた言葉は」

「そう、だから過去の遺産とか、未来の使命とかどうだっていいの。今はただ、自分の闇に負けない光が欲しい、光を育てたい」

「……それがあんたの願いか……」


「ヒーローを育てたい、いや。自分の闇に負けないような、光の勇者を育てたい。それが今の、私のやるべきことだよ……!」


 幾ばくかの間があった後に風が来た。風はそよ風、温かい。桃花の目的は決まった。


「気に入った、今のあんたの教えを受けるよ」

「いいの? 今のあたしは甘いよ?」

「だが、それがいい」

 桃花と双矢は一度、ギルド『四重奏』『非理法権天』『放課後クラブ』一部員を集めることにした。



 桃花と双矢は、咲と姫、戦空と鈴に再び第1の街ライデンで合流した。


 やっていた内容としては咲と姫がICレコーダーも使って音声を紙面化して、クールマに食べさせて世界規模で願いを叶える実験。

 戦空と鈴の方はその叶える材料として、今回、鈴の武器、詩分割刀(スプリット)を生成。


 具体的には鍛冶職人の前でICレコーダーをセットして、その音声を録音しながら詩分割刀(スプリット)を作る、という作業を簡単に10分間でやってもらった。


 作業中は「こうしてああして、よいしょ、こうでこうでこうで」という内容を得ない感覚最優先での作業だったので、具体的に論理的思考が混じった音声を拾えたのは五分五分ぐらいの感じであった。

 無いより良いとは言え、結構非効率的である。

 出来上がった納品物も、実験とは言え10分での納品物なので〈剣の設定〉こそ同じだが、品質は正直〈低〉である。職人さんと言えどほぼラクガキに近い。


 だが今回の主目的は完成武器とICレコーダーで録音した職人の思考を紙面化してクールマに食べさせる方が種目的なので。これで良い、というわけでクールマに食べさせて世界規模で願いを叶えた。


 そこまで聞いて、桃花先生は咲と姫にアドバイスをする。

「動機までは良かったけど〈心の定義〉が抜け落ちてたわね。あとICレコーダーを〈力として持つ〉のは別に構わないけど。設定欄に〈それを作る動機と心〉って欄さえあれば別に音声全部録音する必要無かったんじゃないの……?」


 そりゃ、全部の音声を録音していたら聞き漏らしはない、が、雑音も多すぎる。

 10分でコレなら、1時間だと音声文字量は10倍になるし……。とその労力の見合わなさ、クールマの食事としての食べにくさを指摘した。不純物が多すぎる。


 鈴の刀の方は〈名前のない木刀よりはマシ〉と言うことで今回は満足しているとのこと。


 咲と姫はやりたくなかった覇道を抜け、王道の道に戻ってきた感じである。

 理由こそ不純であったが、その行動結果はマズマズやりたいことは出来たという感じだった。


「とはいえ、どれが決定的な動機として取り上げられるか判らない今の状態じゃ、これが最良なんですよね……網漁業みたいな感じ? 全部の小魚を網で拾えばどれかは当たるみたいな……」

 咲は桃花先生に困惑しながら言う。咲自身だってこんなことやりたくはないが〈無いのは困る〉という内容だからだ。


 動機や心を、思考や音声を紙面に残す、までは良かったが。その手段がICレコーダーという〈何でもかんでも音声拾う機械〉と〈何でもかんでも音声言語化ソフト〉だったので、1時間作業したら1時間待ち時間が発生する。

 今回は10分間と10分間で、合計20分間だったが。

 3時間とか6時間とかだと同じことが起こる。

 とてもじゃないが効率的とは言えない。むしろ手間をかければかけるほど、もっと手間が倍々的に増える……。


「まあ、1時間までの作品絵までは容認出来るけど、3時間作品には向いてないなあ~……ICレコーダーで出来るし、可能になったのは評価出来るけど……」

 桃花は、咲の発想は善行だとは思うが、3時間録音ぐらいまで行くと〈やり過ぎだ〉という判断をする。

 効率的じゃない、というより毎日継続する、持続可能性が低いからだ。


 そこまで黙っていた鈴が、咲と桃花に提案する。

「その〈それを作る動機と心〉まで前もって書いておけば良いんじゃないの? 〈それ以上は歩み寄れません〉ってちゃんと相手に断っておいて。じゃないとクールマに6時間なら6時間分の不純物を一杯食べさせる事になって、クールマだってどれを叶えればいいか解んなくなると思う……」


「まあそうだね〈こちら側としてはコレ以上は歩み寄れません〉と、きっぱり切り替える方が良いかもしれない。現実問題、6時間頑張った後に〈あと6時間頑張ってください〉とか言われたらやっぱ嫌だもん」

 桃花も、思考内容が倍々的に増えるのなら当然そういう予測は立てられる。


 結論として、1~2時間までICレコーダーは有効だが、3~6時間まで行くと逆に邪魔になる、という結論になった。


 双矢が今後の話をする。

「じゃあ、結局、もう一個、発注書に〈それを作る動機と心〉って欄を作って、それを記入するっていう落とし所にするのか?」


 咲と姫は自分達の労力が、ちょっと的ハズレだった事に残念がる。

「残念だけっど、毎日継続してやる作業としては……」

「そうじゃな、現実的じゃないな……続かないことが予想出来る」


 何よりクールマに雑念、雑なパンを大量に食べさせる感じもして、それも咲と姫にとっては忍びない……。

 で、桃花先生はもう一度気持ちを切り替える。

「じゃああとは、クールマ育成計画の中に。その〈動機と心の定義〉を私達なりに噛み砕いて教えなきゃいけないわね」

 飼い主である姫は頷く。

「そうなる」


 で、皆で色々思考をこねくり回した結果、第6条が出来上がった。

「ほーい、今回のは食べていいよクールマちゃーん!」

 最終的に姫が飼い主としてOKを出し、再びクールマに餌を与えた。クールマは「な~~~~!」と、喜んで食べていた。



 【クールマ育成計画、絵画編】

 第1条、1枚の紙でも文字と絵では性質が違うことを認識する。

 第2条、世界種に紙を食べさせる時は。〈発注書〉または〈ネーム〉と〈完成絵〉を食べさせてから願いが叶う。

 第3条、お絵描きの作業時には、工数と思考数が存在する。

 第4条、発注書には〈設定〉以外に、〈発注金額〉と〈作業思考時間〉と〈5段階思考重要度〉が存在すると世界種は食べやすくて嬉しい。

 第5条、感覚の先には意識と物質が出会い、思考が現実を作る。世界種は意識的に〈動機=感情+結果〉の式があり、感情は内的要因・結果は外的要因である。〈絵には必ず描く理由がある〉ということを意識して行動すること。

 第6条、人間は、絵を世界種に食べさせる際に、自らの『心』を込めて『動機』を明確に言語化し、世界種に提供すること。

 その際、人間側は表面的な感情に囚われず、絵を描く根源的な願いや信念を明確に提示し心の質を重視する。世界種側はこれを理解することを期待する。提供された動機と心は、世界種が願いを叶える際の判断基準の一つ道標となる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ