表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ドアの世界~少女は異世界ゲームで名を揚げる。~  作者: ゆめみじ18
第1章「エタニティー・サーガ」西暦2037年11月18日〈水〉
1/1

第1話「起・ドアの世界」

 概念世界、神々が世界を構築・管理する宇宙空間。

 宇宙に星星が瞬きそれはランダムだ、天体観測用の星はない。そこには神様が2人居て、それを囲むように360度、紅蓮色の線の流れが左から右へ円形に流れていた。


 内容を〈元の世界の時間軸〉、名称を〈オリジン時間軸〉と呼ぶ。

 その毛糸や縄の網目のように無数に線が束ねてあるのが世界線と呼ばれる無数の線だ。時間と空間が可視化された物と思えば良い。

 そのオリジン時間軸の至る所、上下ランダム円形状に無数のドアが光り輝き浮かび上がる。それぞれは鏡になっており、眼の前に立つと己が〈今の時間軸に居る〉と明確に理解できる代物だ。


 その時、〈VR世界〉のドアから2つの光が飛び出してきた、2人はドアの世界へと入り込む。例えば、ゲーム機を起動した場合の、他のソフトへ移る時のホーム画面に居るような感覚だ。


 この世界のゲームマスター天上院姫(てんじょういんひめ)は今までのまとめをする。

「つまるところ、前回のVR世界のエネルギー源が電力だったのが、長期継続するのにキツかったって事だろ? 同様に幻想世界のエネルギー源が念動・つまりエスパーだったのも、よく眠れるが夢遊病みたいになると」

 一長一短あるがつまりはそういう事。


 つまり、その世界を動かすエネルギー源が物理法則上のその世界の弱点と成り得る訳だ。これが自然界の法則にのとっているのなら、長期稼働をすればどこかしらで綻びが出る。


 主人公、天上院咲(てんじょういんさき)はそれらを理解した上でGM姫に回答する。

「つまり、前回みたいにしくじらない為には。長期的に持続できるエネルギー源の設定・定義がまず不可欠な訳だ。そこの弱点をつかれるのは仕方ないにしても。エネルギー源が自然物なのか、人工物なのかで、または永久機関か有限物質なのかで今後の運用・運営が変わってくると……それを私達管理者が理解してないと後で〈何の話?〉という誤解・誤認識が発生すると……」

 咲はおおよその状況を把握できた。今までの世界、簡単に言うと〈エスパーな世界〉と〈電気の世界〉を捨てる訳では無いが、それぞれを別区分としてドアの世界の中に収納することは出来る。

 

 ドアの世界のエネルギー源は〈マナギア〉だ。

 マナは元は概念で。超自然的な力、霊的な力、権威、幸運、などを意味します。個人や場所、物に宿るとされる不可視の力。そこにギアという単語が入ることで歯車の形状をし、まるでグミみたいにエネルギーが固形化しているのが解る。


 間違っても電力じゃないし、念動力でもない、純粋なエネルギーそのもので。

 マナギアを変換した先にあるのが、この世界では電力や念動力なわけだ。

 エネルギーそのものと言ってもいい。


「ま、そんな感じじゃな。アンダーワールドを維持するためのエネルギー源は原子炉の核燃料で、外部からの干渉を防いでも4~5年間は持つ。確かそんな感じだったはずじゃ」

「ふむ、思考加速世界で時間がメチャクチャ伸びるとしても有限ではないと……」


「そうじゃな、ドアの世界はファンタジー要素だから。別にエネルギー源は無限でも問題はない、でもそれだとリアリティが無くて面白くない。かと言って、電力だと眠れなくなるから、身体的理由で電力は論外だ」

「ふむ……」


 色々考えた結果、やはり太陽光か水力が有力候補になりそうだった。咲が姫に提案する。

「太陽光は現実的に使えるし、使ってるからアリなんだろうけど。時間の流れとかの自然エネルギーの事を考えると〈概念水車〉とかが有力候補なんだよね、何もしなくてもエネルギーを供給してくれるから」


 概念水車というファンタジー要素が出てきたが。要するに〈運命の糸〉という名の〈時間の流れの線〉に水車を設置して、それでタービンを回してマナギアを得よう、という発想である。

 つまり、時間の流れ〈水力〉が止まらない限り、ドアの世界のエネルギー源は供給され続ける、という考え方である。

 元々、いち個人が運営する世界観であり。大規模に他者が介入しないのであれば、水力は十分確保出来る。


「つまり、前もってこのドアの世界の弱点を提示するのなら。時間の流れで概念水車を回しているので〈時間停止すると充電出来なくなる〉ってこと?」


「このドアの世界自体を狙う〈敵は存在しない〉が、概念水車の弱点をあげるとするならば、それだな」

 GM姫はそれで良いと思うし、水力というより〈時間流動力〉に対して〈概念水車〉を設置するだけなので、特に問題なくイメージも出来るし、稼働できるはずだ。

 何より自身は安眠できる。


「じゃあ〈概念水車〉は四輪設置しよう。12時・3時・6時・9時に設置する感じで。時間の線は〈円環(えんかん)〉形状な」

「設置おっけい、つまり時間さえ止めなければ動き続ける訳ね……。確認だけど時間が止まって水車が動かなくなったらマナギアが供給されなくなって、そのマナギアの蓄積が無くなったら、ドアの鍵が開かなくなる感じ?」


「ん~それだと面白くないから。マナギアの蓄積まで切れちゃったら非常用処置として〈全部のドアが開く〉とかどうだ? 面白そうだろ。基本電動ドアのオートロック式……アナログの鍵も必要になるな」

 咲はなるほど、と姫の言ったことを飲み込んだ。


 天上院姫は自由の悪神、創造神と人々から言われるようになり、崇められている。元々は星明幸(ほしあかりさち)=ミュウ=天上院姫(てんじょういんひめ)という、肉体は別の世界に居るのだが情報は連結している神様だ。


 片や天上院咲は家族の善神、過去に人間体になって自由に遊んでいた姫がいきなり神降ろし出来るようになって困惑する中。咲はなんやかんやあり、自分も同じ地位につき、喜びも悲しみも一緒に分かち合おうと思い。姫と同じ〈神様〉となった。

 

 この神様はゲームマスターと同義であり、姫はゲームマスターで、咲はサブマスターという立ち位置である。よって管理者の能力は同じであるが、日常業務はそれぞれ別のことをやっている。

 姫は管理者としてのトップ、咲はそれを遊ぶエンジョイプレイヤーである。


「姉ちゃん、このドアの世界を狙う敵は存在しないって言ったけど。内部的なシステムの不調や、世界の自己修正作用によってトラブルが引き起こされる可能性は?」


「ふむ、今は敵は存在しないっていう意味で、物語が流動的に進む以上、内部的なシステムやトラブルは起こると思う。つまり内部的なメンテナンスは居ると思うが、管理者が2人だとちょっと管理はキツイな。まあ、だから自然放置しててもエネルギーが供給されやすい概念水車を採用したわけじゃが」

 咲の疑問に姫は答える。咲や姫には他にもやることがある、つまりドアの世界だけを管理する管理者が必要になる。


 咲が管理者候補の名前を提示する。

近衛遊歩(このえゆうほ)くんにも手伝ってもらおうか? 私達の同期だし」

「でも、この世界観に加わって貰うってことは神々の世界に片足突っ込むことになるぞ? いいのか」

「でも、前の物語で遊歩くんは私の花婿候補にまでなったよ? 私のお手伝いだと思えばやってくれるんじゃないかな? 神様にはなれなくても、眷属とか、神官とかそこら辺の立ち位置でさ……」


 というわけでドアの世界の〈VRの世界〉から近衛遊歩が咲たち姉妹の宇宙空間の前に〈眷属〉として引っこ抜かれた。

「……、お、咲と姫じゃん。今度は何やってんの? ここはどこ?」


「ここは物語を形作る前の空間ですね」

「ドアの世界の物語はもっと前からあったからその再定義と、エネルギー源の再確認中じゃな。その中で私達姉妹は別のやることがあるから、このドアの世界の管理者が必要になって近衛遊歩をこのドアの世界の管理者として神の眷属にしようか? って流れになってるな」

 遊歩は「勝手にそんな話になってるんかーい!?」とツッコミを入れる。


「まあやりたいことは解ったし、眷属になるのは了解したけど。具体的に何を任されるんだ?」

 姫はまず、ドアの世界を渡れるマスターキーを2本渡す。

 1つ目のマスターキーは鍵型ではなく、電子マネーとかで今はよく使うカードキー型だった。

 2つ目は普通の鍵穴に差し込むようなアナログの一本の鍵。何故か可愛げのない戦車のキーホルダーがくっついていた。


「まずは、各世界を何時でもどこでも移動できるマスターキーを渡す。次に〈オリジン時間軸〉と〈マナギア〉の蓄積量のコントロール、〈概念水車〉への〈管理者アクセス権〉じゃな。好きにいじっていいよって事になる」


 咲は自由奔放に次の冒険へ心踊らせる。

「私達は冒険で忙しいからね、人手が足りない訳ですよ」


 咲のオールラウンダーとして何でも出来る状況下でお荷物になっている劣等感から考えると、料理以外に取り柄がなかった遊歩にとっては大きなアドバンテージである。


 つまり世界の管理者としての立ち回りだ。神々の眷属というのも良い。何より花嫁である咲の手伝いが出来るのが何よりも嬉しいのだ。

「なるほどね、ここに居て、異変がないか様子を観て調整すれば良いわけだな」

「そういうこと」


「まあドアの世界としての世界観の土台作りとしてはこんなもんかな? 何か他に質問ある?」

 と、GM姫は咲と遊歩に再確認する、無ければ物語のスタートだ。


「ドアの世界を守る上で、具体的な注意点はあるか?」

 遊歩が眷属・管理者として話しかける。

「ふむ、オリジン時間軸の枝分かれが起こったら、バッサリ剪定(せんてい)して構わない。〈元の世界の時間軸〉が無事ならとりあえずそれでいい。概念水車は基本止めないこと、つまり時間は止めないこと。マスターキーはどの世界のどの時間軸のどの場所でもドアを作って出入りすることは出来る。注意点があるとするならば、余計な敵は作らない事だな、ここは遊び半分で敵役を作る空間じゃない」


 エンターテイメントとしては敵役を置いても良いが、そんな余裕はこの3人には全然ない。ドアの世界の中でのアクシデントは必要ない。敵役が必要なのはドアを入ったあとの各世界だ。宇宙人とかここに侵入されても困るだけでデメリットしかない。

 つまりここは〈安全地帯〉だ。


 ここでサブマスである咲が補足を入れる。

「絵の描写的にはピンクスズちゃんと蒼スズちゃんの糸は〈分岐時間軸〉になってるけど、今はその2つの線はオリジン時間軸に含まれてるから剪定しちゃダメだからね? 間違えないでちょうだいね? 紅蓮色の糸で繋げた後の世界だからね?」


 遊歩が質問を投げる。

「無駄だと思って剪定したオリジン時間軸の糸? はどうする? 捨てるのか?」

 ……、そこまでは考えていなかった姉妹はお互いの顔を見合わせてから。

「特に行く宛がないなら、旅のリサイクルショップにあげていいよ」

「そうだな、方法はそっちに任せるがとりあえずリサイクルショップ行きじゃ」


 近衛遊歩は追撃で更に質問する。

「あともう1つ質問、このドアの世界という名の空間には、時間織り機みたいな負荷がかかり過ぎると、自動で枝分かれを剪定する機械は存在しているのか? 全部手作業か?」

 ……、再び、そこまでは考えていなかった姉妹はお互いの顔を見合わせてから。

「機械ってことは湘南桃花(しょうなんももか)先生が作った時間軸の事だよね? とりあえず存在はしているよ、〈有ったり消えたり〉しているけど」

「そうじゃな、昔は電子空間しか無かったが今は紙でも印刷し終わったあとじゃし……、一回メンテナンスで長期間見えなくなったけど、とりあえず〈機械は置いてあるし存在はしている〉あまりにも手作業が面倒だったら〈その機械〉を使っても別にいいよ。判断は任せる」


 遊歩はここぞとばかりにもう1つ質問をする。

「概念水車でマナギアを蓄積したエネルギータンクは、ドアの管理以外に有効活用しても良いのか? 簡単に言うとこのドアの世界の開拓・発展だ。あと風車の件はどうなった?」

 1つはマナギアのエネルギーが余ったら別のことに使ってもいいのか? という点と、もう一つは昔からある風力発電系の件はどうすれば良いんだ? という判断だ。


 とりあえず質問が多すぎるので「こりゃ会話出来る通信デバイスが居るな……」と思ったGM姫。移動や冒険途中でも質問がバンバン来そうである。

「エネルギーは余ったら使っていいし、村開拓もしていいよ。風力の件は要するにドアの世界に風は通っているのか? って事だろ?」


 そこまで聞いて、咲は遊歩の言いたいことと姫の答えたことを察する。

「ああ! アレか! 確かに元ネタは〈風〉だけど、後に発展して〈波動〉って意味にもなってるから……とりあえず宇宙空間に風は通らないけど、波動は通ってるって解釈にしておいて!」


 遊歩は今ある限りの不安材料を払拭して、自分の職務を理解した。

「……、わかった、頑張る」

「よし! じゃあ咲! ハイファンタジー世界のエレメンタルワールドのドアをくぐって行くぞ」

「おっけい、ドアの世界のEWバージョンだね!」

 そう言って。近衛遊歩にドアの世界の管理を任せて、2人は冒険の旅に出かけた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ