2入学二日目
学校生活二日目...
いや、ほとんど初日みたいなものだが、一旦置いておいて。
事前にメールで配布された日程表を見た所、今日の予定には技能測定があるらしい。しかし、どんな測定があるのかは告知されていなかった。昨日の先生の発言が不穏だが、さすがに入学二日目で死人が出ることは無いと信じたい。
教室の中は、昨日の雰囲気が嘘のように活気に満ちており、クラスメイト達の一部は集まってグループを形成し始めている。
そして、8時50分を時計が指すと同時に、教室のドアが音を立てて開かれ、見ると、昨日と同じ先生が大きな箱を小脇に抱えており、教卓の周囲の生徒は、蜘蛛の子を散らすように席に着いてく。そして、ドシッと教卓の上に箱を置き、こちらに向き直った先生はHRを始めた。
「さて、今日の技能測定だが説明する前に、この学園で日常生活をするのに必要な端末を配布する」
そういって最前列から回ってきたのは、簡単に言えばリストバンドのようなものだった。一見するとただのゴム製だが、それを見て気づいた一人の生徒がつぶやいた。
「まさかこれって第五世代の...」
「その通り、この最新型の第五世代 特殊腕輪型端末は、対妖魔の戦闘を想定した特殊素材で作られていて、国防軍の隊員の多くが愛用している優れモノだ」
俺も、試しに腕に巻いて表面を触ると、眼前に画面が現れ、そこには、一般的なスマホと同じアプリが大体入っており、他にも、見慣れないアプリも何個か入っていた。
「この端末には年間予定表と学校専用の連絡アプリ、それと校内序列戦用のアプリが入っていて、本人確認もこの端末で行われる。すでに生体情報は自動登録されているので問題ないが、これを無くすことは、野良の異能者と同じ扱いになることと思え」
学校用の連絡アプリには、マイページに電子決済の欄があり、校内のショッピングモールでは、この機能での決済が基本となっているそうだ。他にも、一部施設に入場するときにも必要で、就寝時以外は肌身離さず持っているようにとのこと。
「そして今日のメインイベント、皆も気になっている測定内容は以下の通りだ」
静まり返った教室内で、黒板に走るチョークの音だけが聞こえる中、書かれた内容はこんな感じだ。
異能評価 異能練度 戦闘技能 妖魔知識
「今回測定されるのは、入学前に測定が行われた身体強度以外の四項目、詳細な説明は測定室で行われる、E クラスは左から順に測定が行われるので、一限目は実習棟 A - 1に集合するように。以上でHRを終了する、気を付け!」
「気を付け」の一言に条件反射で席を立った生徒たちに、「礼」と一言だけ残して教室を去っていった。
今の時刻は8時57分といったところだが、この教室から実習棟 A まではスマートバンドで確認したところ約一キロほど、この八剱学園がどれだけ大規模な施設であるかを痛感したが、それはつまり、一限目の授業開始に間に合う可能性が全くないということだ。
「早くいかないと!」
焦ったように俺含めたクラスメイト達は、席を立ち教室を出て行った。
〇 解説コーナー
校内序列戦とは
校内で行われる異能者同士での決闘により決まるランキングのこと。
自身よりも順位の高い者に決闘を申し込み、勝つことで順位が入れ替わる。
回復や精神系の異能者はこの序列戦に含まれていない。
野良の異能者とは
自身の異能を国に申告せずにいる異能者の事。
法律上、異能は発現した後、1週間以内に国に申告して異能者証明書を発行する決まりになっており、
自身の異能を秘匿する行為は国家反逆罪並びに異能隠匿罪として低ランクであれば死刑、
高ランクであれば精神に作用する異能により戦闘兵器として扱われる。