13 光輝の戦い
部屋に戻った俺を迎えたのは、三人の息ぴったりな声だった。
「「「乙」」」
「はぁ」
「まぁ、今回は運が悪かったよ。事前情報にも障壁の情報は無かったし、それにあれを突破したらそれこそ任務に支障をきたすし」
光輝のフォローが身に染みるぜ.... しかし、やらかしたのは俺の不手際だ。対異能者の戦いは相手の異能が不透明な状態からそれを詳らかにしていく戦いであり、その思考を放棄した俺の不徳でしかない。
「勝負に勝って、試合に負けたって感じ」
「「乙!!」」
「うっせぇ!」
そうして俺たち三人は、ソファーにて駄弁りながらDクラス戦を観戦していた。
「へー こんな感じで見ていたのか」
「そうやで」
リモコンのチャンネルボタンを押すと、次の生徒の三人称視点の映像が映し出される。そうして次々とチャンネルを切り替えていくが、その手が止まることは無かった。
「なぁ」
「でもさ、あんまり目に留まる奴がいないじゃん」
「まぁ」
そうして一時間はそんな無意味な行為を繰り返しているうちに、いつの間にか試合は終了していた。
「終わっちまったよ」
「あれ? 光輝は?」
「もう10分前には行ったよ」
そうして、30分後にCクラス戦が開始された。
◇ Side 光輝
転移された場所は木が一本も生えていない平原だった。そこで俺は、始めに異能によって自身の姿を隠した。
ここは俺の異能にはミスマッチだな。場所を変えよう。
【光学迷彩】
自身の全方位の光を操作し、それらを透過させることで実質的な光学迷彩を実現しているのだ。本来は【隠身】なども併用するところだが、それだとやりすぎになる。
そうして周囲を警戒しつつ走っていると、早速一人の生徒が見つかった。
「....アレは、華族のヤツか」
アレはダメだ。次に行こう。と、そんなことを2回繰り返し、やっと一般の生徒が見つかった。光学迷彩は解いておき、その標的へと狙いを定める。
「やりィ」
【望遠】【太陽光線】
太陽光を収束させ、その光をレーザーのように解き放つ一撃。操作系にとって、その異能の対象となる物質の生成はかなりの労力が掛かるが、やはり俺の異能は昼間に限ってとても燃費が良い。
加減して放った一撃により、その標的は一瞬で脱落した。
「......あれ?」
少し待ってみたが、点数が加算された事を知らせる音がなることは無い。健人の悪ふざけか? いや、アイツはこんな性格の捻じ切れたコトをするタイプじゃ無いな。むしろ、やられてガチギレするタイプだ。
「てことは、距離が遠すぎたか」
確かに、500メートルの狙撃はやりすぎか。であれば接近戦でカタをつけるのが無難だな。
そう考えた俺は腰の双剣を引き抜き、生徒が乱戦を繰り広げる元いた広場に躍り出た。
そこでは、10人ほどの生徒達が互いに牽制を行っていた。そんな中で、俺は端に陣取っている一人を、掛け直した【光学迷彩】の利を生かして奇襲する。
綺麗に首を掠めた一撃は致死と判断され、標的は仰々しい光を放って消え去った。
「これで1キル!」
そうして、広場の均衡は崩れ去る。一人が不意に討たれたのを見て、全員が警戒心を引き上げた結果だ。
そのまま、俺は追加で三人を倒して離脱した。
◇
「いやぁ、鮮やか」
俺はそんな言葉で、帰って来た光輝を迎え入れた。
「あれ? 哲郎は?」
「AとBは人数が少ないから、合同での試験なんだそうな」
「へぇ」
そうして俺たち二人は、一つのソファを占領した。テレビからは解説役らしき生徒の声が聞こえており、その声色からは次の試合への期待が伺える。
「今年の新入生は粒揃いと聞き及んでおりますが、果たしてその実力は学園で牙を研いできた先輩に届くのか!? 期待が高まりますね!」
「えぇ。また、今回は生徒会の面々が全員参加するという情報も入ってきました。その強者たちに新入生たちがどれほど食い下がれるのか、もしくは下剋上を果たすのか。そんな興味や期待があります」
「生徒会長である輝夜様や、生徒会書記である嵐山さんの戦いはとても見応えがありますからね! 注目です!」
そうしてABクラス戦は開始された。まずは、バカ二人がどの程度に異能を開示しているかを確認するところからだ。
「嫌な予感がする」
「あー わかる」
そうしてチャンネルを合わせると、初めに見れたのは守の方だった。
「いま、何かしたか?」
そんな言葉と共に、極太の棍棒にも見える大剣が一人の男子生徒の腹にめり込んでいた。続けて鎖のような物が守を縛ろうとするが、それは守に触れようとする瞬間に自ずと引きちぎれた。
「あれは、異能を体表に纏わせてる?」
「あー…. ギリ防御系の異能に見えなくも無いな」
守の異能は弱化系に分類される【失効】というモノ。その詳細は、霊力や瘴気を含むありとあらゆる力の影響を失わせるという力であり、守の異能練度であれば周辺一帯の異能行使や霊気戦闘術を妨害することも可能となる。
しかし、今はそれを自分に着弾した異能だけに絞っているということだろう。アイツの異能を知らないで見れば、確かに異能を無効化するバリアに見えなくも無い。
「意外と大丈夫そうだな」
「あぁ、本当に意外だ」
そう言い合っている合間に、守は鎖使いの女子生徒の腹に大剣をめり込ませていた。容赦ないなアイツ。まぁ、異能使い相手に容赦するほうがおかしいんだけれども。
「よし、次は…. お、これは」
そう言った光輝がチャンネルを合わせたのは、見覚えのある二人だった。正確にいうと、この前の寮の食堂で見た顔だ。
「面倒なことをしてくれましたね。ですが、由緒ある華族家の一員として、申し込まれた決闘から逃げるわけには行きません」
「性根は腐っていようが、その矜持だけは認めてやろう。いざ、尋常に勝負!」
そう啖呵を切った侍娘は、腰の模擬刀を澱みなく抜き放った。対するドリルも、短めの双剣を手に構えを取る。
バトルロワイアルが繰り広げられる最中で、決闘の火蓋が切って落とされた。
リアクション 喜び Lv.1
ブックマーク 喜び Lv.2
評価 喜び Lv.3
感想 歓喜
レビュー 狂喜乱舞
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