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星の降る夜に、僕は何を願うのだろうか  作者: 大澤陸斗
星の降る夜に僕は何を願うのだろうか・上(幼少編)
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第四章「蛹」2

 自室に戻ると、僕は外出用の衣服に着替えた。硬貨袋を懐にしまう。護身用の実剣を握り、部屋を出た。


 今は人手の少ないお茶の時間。この時間は少数の衛兵以外、全員が休息をとる。僕はこの時間を狙ってリオラの部屋を訪れた。


 部屋の扉をノックすると扉が開き、その隙間からルカが顔を覗かせた。


「来たか。待っていたぞ。入れ」


 僕が部屋の中に入ると、ルカは僕にある要求をした。


「今日は私が見張りなんだ。連れだすなら代わりの人形とかを置いて行ってくれ」


「人形ってそんな簡単に……」


「リオラできるよ」


 リオラは、燭台から蝋燭を一本外し、床に置いた。その上から手をかざす。


「ぐぬぬぬぬぬ——」


 と、唸るような声を出し、かざしていた手を振り上げる。


 途端に蝋燭がボコボコと発泡し大きさがどんどん増していく。やがて人型に変形しはじめると、それはリオラの姿形になった。見た目が全く一緒で、どちらが本物のリオラなのか全く判別がつかない。


 偽物のリオラは窓辺の椅子に腰掛ける。低卓に置かれた取ると、本物さながらの動作で絵を描き始めた。試しに僕はその子に話しかけてみる。


「なあ、リオラ」


「なあに、ラルフ? どうかした?」


 目の前のリオラはいつものように微笑む。喋り方といい、仕草表情といい完璧だ。本物のリオラとしか思えない。


「これなら十分だ。誰が来ても人形だなんて気づきまい」


「ルカ、本当にいいのか?」


「何がだ?」


「僕達に星の子を任せちゃって」


「まあ、正直なことを言うと、私たちよりも魔法が使える君の方がずっとずっと適任だと思っている。この子も私達、おっさんなんかといるよりも君たちと一緒にいた方が幸せそうだしな。それに今は一年前と状況が違うだろ? 君は戦士並みに魔法を使いこなせるようになった。剣術だって申し分ない。私たちの代わりに守り抜いておくれ」


 ルカは僕の肩に手をポンと置く。僕はルカの顔を真っ直ぐ見つめ言った。


「ありがとう。ルカ」


 僕はリオラの手を繋ぎ、部屋の外へ出た。リオラは部屋から出ると同時に透明化して見えなくなる。兵舎の外で待つエミリーと合流し、僕らは城門へ向かった。


「リオラは?」


「もう、透明になっている。悟られないように振る舞って」




 僕らが一番不安だったのは、門兵に外出許可を取るときだった。


 一時間を超える長時間の外出の場合、外出申請用の札に、外出理由や目的を書き記し、門兵に見せないといけない。そこで判を押されることで初めて長時間の外出が認められる。


 僕は札を門兵に渡す。門兵は札を受け取ると、記載内容を凝視し、僕とエミリーを順に見やる。


「その腰の剣は? 巡回を任されているとはいえ、お前たちの役割は近くの衛兵に知らせるだけのはず。必要ないのでは?」


「これは護身用だよ。僕もエミリーも元々住んでた村の人達に殺されかけたからね。民をあまり信用していないんだ」


 実剣を持ってきたのは、万が一を考えてのことだった。襲いかかってくるのは人だけではない。去年、モーゼスから教わったモンスターの姿は、一時も頭を離れたことがない。衛兵にそこまでの説明をするわけにはいかないのだけれど。


「なるほど。まあ元々、お前たち領主候補は剣の携帯を許可されている。収穫祭にはまだ時間が早いが、外出を認めよう」


 僕はなるべく愛想笑いを浮かべながら判子を押された札を受け取る。


「ありがとうおじさん。良い一日を」


「君こそ、ラルフ。良い一日を」


 門兵が愛想笑いを見せることはそうそうない。今日はそれだけおめでたい日なのだ。


 国土南西部の小麦が無事収穫され、王都に税として納められた分——、それと交易で集まった分の小麦は他国へ輸出するために貿易港がある王都に集められる。港には朝から大きな船が出入りし、海側は朝から晩まで賑わう。あらゆるところで出店が開かれ、中にはこの収穫祭のためだけに渡国し、店を開く人までいる。それが今日の収穫祭なのだ。


 僕らは城から出た後、幹道をしばらく進み、城から見えづらい脇道に入る。


「リオラ、どこに行きたい?」


 リオラは姿を現すと、辺りをキョロキョロ見回す。ある一方向で顔を止めるとその方角を指で指し示した。


「あそこがいい」


 リオラが指差す方向にあったのは風車だ。一年前、塔に登った時に遠くの風車を見て興奮していたことを僕は思い出す。


(あの時からずっと行きたかったんだろうな……)


 リオラにとって城の外の街を見たのはここへきた時と塔に登った時だけだ。ずっと城の中で想像していたんだろうなと思うと、胸が痛んだ。


「わかった。ずっと近くで見たかったんだもんな」


 僕らは風車の方に歩いた。

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