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第4話

 店をですぐフードを被ると中にいたネべはエレノアの髪を掻き分け肩にやってくる。


「うちにあんな高価なものがあったんですね。」

「…昔、色々やっていたので、そのお詫びでいただいたものですよ。」

「そうでしたか。」


二人が共に行動するようになってからしばらく経つがエレノアはあまり昔のことを語りたがらないのでネべはそれ以上聞く事はしなかった。


「お腹も空いたし、宿も探さないといけませんね。宿はどこにあるんでしょうか?誰かに聞きましょう。」

「人っに伺う時は、十分にお気をつけください。」

「わかってます。」


先ほどからこちらを見ている輩が視界に入る。おそらく店にいた人達でエレノアを待ち伏せていたのだろう。


「エレノア様」

「大丈夫、ネべは手を出さないように。」


少し早歩きで大通りを進み、すぐ近くの路地に入る。


ガシッ


「っ!!」


路地に入ってすぐ後ろから肩を掴まれ、ネべは肩の上で体制を崩しフードの中に転がった。エレノアは後ろによろけそうになるのを堪え同時に両手を構え背と同じぐらいの白い杖を出す。そして後ろに振り返り勢いよく杖を振りかざす。


パシッ


しかし、相手は簡単に肩を掴んでいた反対の手で掴む。


後ろには夜を切り取ったかのよな青年が立っていた。


スラリとした体型で黒のロングコートに黒いシャツを着ている。その中から漆黒の細い剣が覗かせていた。なにより目を引くのは高い位置に束ねられた黒髪に黒い瞳を覗かせる整った顔立ち。


今は眉間に皺が寄って歪んだ表情で面倒くさそうな態度が窺える。


グッと杖を引くがぴくりともしない。


(この人、お店でタオさんと揉めてた人)


「…ここはガキが来るような場所じゃない。」


もう一度、杖を引く。


「おい、聞いてんのか。」

「…ごめんなさい。……怖そうな人たちがついてきていたので逃げようと。」


男は杖を放し、エレノアを見下ろす。


「連れは居ないのかよ。」

「はい、私と…ペットのこの子と一緒に今日この街に来たばかりなんです。」


エレノアは杖を消し、被っているフードに手を突っ込みネべを男の前に突き出す。掴んだ際、悲鳴のような鳴き声が聞こえたが、今は手の中で真っ白の丸い塊が男に向かって威嚇している。


(ごめんなさい、ネべ)


「…ペット?」


(モモンガにしては魔力みたいなの感じるんだが)


男は眉間の皺を更に深くしネべを観察するが、威嚇が治らないのでエレノアはフードに突っ込む。しばらく大人しくなったが、今度はぐぅぅ〜と音が鳴った。


エレノアは少し恥ずかしそうにお腹辺りの服を両手でギュッと掴み、男を見る。


「……あの……お腹が減りました。」


男は上目遣いになっているエレノアを見て軽く仰け反り溜息を溢した。


「ついて来い。」

「!!はい。」


二人は大通りに出るとエレノアを追いかけていた男たちの姿はもうどこにも無かった。


小走りでついていき、気づいた男はゆっくりと歩幅を合わせエレノアの隣を歩く。お陰で余裕ができたエレノアは歩きながら辺りを見渡す。いろんな店が立ち並び夢中になっていたので、周りの人たちが二人を見ていたことは知る由もなかった。


正面に噴水のある広場が近づいていきその手前のお店で男は立ち止まった。そこは食堂のようでいい匂いがより一層強くなる。エレノアのお腹から今日1番の音が鳴った。


中に入ると、多くの冒険者たちが酒を飲んでいた。人が多く食堂というより居酒屋状態になっていた。男は軽く後ろに引っ張られた感覚がし、見るとエレノアが店の中を見つめながら小さな手で黒いコートを握っていた。二人は店の奥に進み、客たちがこっちを見て何か言っているのに気づいたエレノアはコートを握る力を強める。


一番奥の端の席に着きエレノアは壁側に。その正面に男が座り、ちょうどエレノアが男に隠れるようになった。ネべもフードからテーブルに移り毛繕いをする。男に対して威嚇はしていないが、睨みつけている。


店員が水の入ったコップをもってテーブルにやってきて男は慣れた様子で注文する。ようやく、エレノアはフードに手をかける。


現れたのは、色白の肌にゆるい毛先のホワイトブロンド。そして、紫がかった青い瞳の姿をした幼い少女。


その姿は、どこか現実離れした美しさが窺えた。


「お前、絶対に一人であんな路地に行くなよ。」

「分かりました。気をつけます。それでもしよければ名前聞いてもいいですか?」

「ルークだ。」

「ルークさん。…ルークって呼んでもいいですか?」


ルークの眉が一瞬動いた。


「好きに呼べ。」

「ありがとうございます、ルーク。私はエレノアと言います。エレノアでもエリーでも好きに呼んでください。それと、この子はモモンガのネべです。私の大切な友人です。」


ネべは変わらず睨みつけていたが、ルークは気にする様子はなかった。


「お前、これからどうするんだよ。」

「お前ですか…。まぁいいでしょう。この後、宿を探して今日は休もうと思います。その先のことはこれから考えていきます。」

「…なら宿までは案内してやる。飯食ったら行くぞ。」

「いいんですか?」

「あぁ、かまわない。」

「ありがとうございます。」

(じゃないと、あいつがうるさいからな)


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