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こんな心地いい場所を自分から手放すなんてできそうになかった。だから、ヨルアから離れてくれるように接しようと考えたのだ。
それから、ヨルアにひどい態度をとった。見つからないように棺桶から出なければいいのに、俺はわざわざ村の近くに行ったり、2人でよく会う場所に現れたりした。ヨルアに会うたびにここを離れたくないという気持ちが大きくなっていった。
「最近なんかあったのか?元気がないような気がして、悩みとかあったら聞くぜ。」
「よおー今日もご機嫌ナナメちゃんなのか?」
「ほらラガ、今日は菓子持ってきてやったぞ、甘いの好きだろ?これ食って元気出せ。」
どんな態度をとってもヨルアは会うたびに何度も何度も甘やかしてくれた。
なんだかもうどうでも良くなってしまったので、ヨルアに抱きついてみることにした。冷たい態度をとる作戦は一ヶ月にも満たないけれど、やっぱり寂しかったのだ。
「おっ、今日は甘えただな!よしよしよし」
「……うるさい。」
あーあ、俺に抱きつかれてもドキドキしないのか。いつも通り、余裕のある態度のヨルアに落ち込んだ。でも、このままじゃ悔しいから手を繋いでやったのだ。
そうしたら、少しびっくりした顔をしてこっちを向いたので、俺はやってやったぞと得意げに笑った。
もう、月もだいぶ降りてきて、すぐに朝がきそうだった。ヨルアと離れなくてはならないと分かっていたけれど、あと少しだけ、このままでいたかった。俺は心の中で3秒だけ数えて離れることにした。
(……3、2、1)
俺は手を離そうと思ったけれど、ヨルアがそれを許さなかった。俺の手を強く引いて、そのままヨルアが近づいてきて、彼の唇と俺の唇が触れ合った。俺はびっくりして、そのまま逃げるように帰った。
初めてのキスだった。
幸せなのは一瞬で、あとは幸せよりも苦しさの方が強くなった。その夜俺は初めてベットの上で泣いた。こんな気持ち消せるわけがなかった。叶わないことを願うなんてと他人事のように考えていた。