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迷宮(ダンジョン)攻略⑦

『巨人の鉄槌』と別れた俺たちは、一列となって島へと続く道を歩いていた。

 島との距離が近づくにつれ、肌をピリピリと刺す緊張感が強まっていく。

 空気が粘り気を帯び、重りのように身体に纏わりついている。


「何ともまあ、異様な雰囲気だね」


 サントラがぽつりとそう言った。

 どうにも落ち着かないといった様子で、そわそわと視線を動かしている。

 俺はふと疑問が生まれ、口を開いた。


「そういえば、王子は島が見えているんですか?」


「……うん、見えてる。ルージュが言ったような赤い空も海も、見えてる」


 俺の問いかけにサントラは頷いた。

 サントラ曰く、海が割れて道が出来た時を境に景色が一変したらしい。


「あの島には何がいるんだろうね」


 その言葉は恐らく答えを求めたものではなく、単なる独り言のようなものだったのだろう。

 しかしたまたま、俺はその答えを持ち合わせていた。


「多分……魔族だと思います」


「……魔族だって?」


 サントラは驚いたようにその金色の眼を瞬かせている。

 その反応からして、魔族という存在自体は知っているようだった。


「なんで、そう思うんだい?」


 当然と言えば当然の疑問。

 サントラが僅かに首を傾ける。


「実は――」


 俺はサントラに、迷宮(ダンジョン)に来る前に魔族と遭遇したこと、その魔族から迷宮(ダンジョン)に来いと言われていたことを話した。

 話を聞き終えると、サントラはむすっと不機嫌そうな表情を浮かべた。


「……そういう話はもっと早くしてほしかったな」


 サントラが怒ったように眉を寄せる。


「……すみません」


 確かにそうかもしれない。

 そう思った俺は素直に謝罪した。


「次から気を付けること!いいね?」


 サントラはぴっと人差し指をたて、俺の顔を覗き込んだ。

 いきなりのことに驚きながら頷くと、笑顔を浮かべたサントラが満足そうに頷く。

 その後何事もなかったようにくるりと身体を正面に向けた。


 俺たちがそんなやり取りをしているうちに、やがて島の前へとたどり着いた。

 道中で何かあるのではと警戒していたが、あっさり到着したことに肩透かしを食らった気分だ。


 島に一歩踏み入ると、湿った砂がじゃりっと音を立てる。

 そこは島と呼んでいいか迷うほど小さな陸地だった。

 周囲にはまばらに生えている木や岩々が転がっている。


「……なんだこれ」


 それは一言で言うなら門だった。

 巨人用と言われても納得するほどに巨大な門。

 よく見ると表面には華美な意匠があしらわれており、より一層その門の重厚感を増していた。


「それにしても……なんで門だけ?」


 サントラの疑問はもっともだった。

 門の裏側に回り込んでみても何もなく、それは門としての役割を果たしていないように見える。


「んなの決まってんだろ」


 不意に、ずっと静かだったカリアが声を上げる。

 俺たちがカリアに注目しようとした瞬間、ギギギッと何かをこすり合わせるような音が響いた。


「も、門が……」


 サントラが門を見上げながらあっけにとられたような声を発する。

 俺もその光景を固唾をのんで見守ることしかできなかった。


 門が開いていく。

 重苦しく閉ざされた内側には、もはや見慣れてきたような虹色の膜が張られている。

 俺はようやくカリアの言ったことを理解する。


「次の階層への入り口……!」


 もしくは、自分たちの想像を超える何か。

 どちらにせよ、この先に俺たちの求めるゴールがあるはずだ。


 やがて完全に門が開ききると、ズンっと体の内側にまで響くような轟音を立てて沈黙した。


「……入れってことか」


 誘われている。

 こめかみを伝う汗がやたらと冷たく感じた。


「オレはいくぜ」


「ちょ、待てよカリア!?」


「あん?」


 ずかずかと門の方へ歩み寄っていくカリアがあまりに無警戒過ぎて、俺は思わずその小さな背中を呼び止める。

 俺の呼びかけに対して、カリアは不機嫌そうな表情を浮かべながら、顔だけ振り向かせた。


「……罠かもしれないだろ?一度どうするか考えた方が……」


「何を考えるんだよ?ここで尻込みしてたって埒が明かねーだろ。そういうのは慎重じゃなくてビビってるっつーんだよ」


 俺の言葉を一蹴すると、カリアはそのまま門を潜っていった。

 俺はため息をつきながら、サントラの方を見る。


「ははは、行ってしまったね。僕たちはどうしようか」


 渇いた笑いを浮かべながらサントラは肩を竦める。


「……行くしかないでしょう。カリアを見捨てるわけにもいきませんし」


「うん、そうだね」


 サントラは俺の言葉に一つ頷く。

 ロイドは相変わらず無言だが、何も反応しないということは賛成ということでいいだろう。


「よし、では行きましょう」


 カリアがすでに中に入っている以上、あまり時間をかけていられない。

 俺は意を決して、門の中へと飛び込んだ。


 迷宮(ダンジョン)の入り口や移動短縮膜(ショートカット)を通った時と似た、少しの酩酊感に視界がぐらりと揺れた。

 少しすると視界が定まっていき、自分が立っている場所を認識する。

 そこは壁から天井まで岩肌に覆われたような空間だった。

 様々な場所に光る鉱石があるおかげでかなり明るい。

 そのため、その全貌がよく見えた。


「街、なのか……?」


 周囲にはたくさんの建造物が立っていた。

 それはどう見ても家にしか見えず、規則正しく並んだ建造物に沿うように道が引かれている。

 そして家があるということは当然住人がいた。


「……これ全部魔族か!?」


 その辺を走り回る子供たちや、荷物を抱えて道を歩いている大男。

 道端で会話している女性たちすべての額に角が生えている。


「魔族の街、という感じだね……」


 普段冷静なサントラの声も少し震えている。

 それだけ驚くべき出来事ということだろう。

 魔族の街…。

 確かにそれは目の前の光景をわかりやすく表していた。


「こんな場所が――」


 ドォンッッ!!!


 サントラの言葉は、突如聞こえてきた轟音にかき消された。

 音の方に目を向けてみると、そこには見慣れた桃色の人影がある。


「カリア!……それと、モルドレッド!?」


 数メートル先。

 そこには先に門を潜ったカリアと、以前戦った魔族のモルドレッドの姿があった。

 カリアの大剣と紅の鉤爪がギチギチと拮抗し火花を散らしている。


「たく、俺を見るなりいきなり斬りかかってきやがって……気持ちはわかるが一回落ち着けよ。カリア・ランページ」


 戦闘か!?と身構えたところに、平坦な声がモルドレッドから発せられる。

 以前の獰猛さは随分と鳴りを潜めており、俺やカリアは怪訝な表情を浮かべた。


「……チッ」


 本当に戦う気がなさそうだと判断したカリアは、一度剣を下ろして距離を取る。

 モルドレッドがつまらなさそうに鼻を鳴らした後、カリアから視線を外しこちらを見た。


「……王がお前たちを呼んでいる。大人しくついてこい」


ブックマーク・いいね、ありがとうございます!


先ほど確認したところ、総PVが9999回でした笑

ここまで来られたのも本作にご興味を持ってくださった皆様のおかげです!

これからも頑張っていきますので、何卒よろしくお願いします!!

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