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迷宮(ダンジョン)攻略⑤

 なんとかグレートウルフが率いる群れを撃破した俺たちは、再びエリアの探索を再開する。

 しかし──、


「何も見つからない、か」


 サントラのポツリとした呟きが全てだった。

 隅々まで探し回ったが、次の階層へと繋がる道は見つけられなかった。


「なあ、ここが最下層って可能性はないのか?」


「まあその可能性もあるけどな。でも、それにしては変なところもある」


 そう言って、カリアは首を竦めた。

 カリアはそのまま言葉を続ける。


「他の迷宮(ダンジョン)だと、最下層には迷宮主(ダンジョンボス)っつー強いモンスターがいるんだが、今のところそんなモンスターは見当たんねえんだよな」


 俺たちが今滞在しているニルヴァーナが迷宮(ダンジョン)都市という名を冠しているのは、ここら一体に多くの迷宮(ダンジョン)が点在しているからだ。

 ここ以外の迷宮(ダンジョン)の情報から考えると、ここが最下層というのは考えづらいということか。


「なるほどねぇ」


 俺はトスッと草原に腰を下ろして空を見上げる。

 その先では、不自然なくらいに青い空が俺の視線を柔らかく受け止めていた。


 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆


 翌日には、残る最後のエリアである岩山エリアの探索も行った。

 が、めぼしい成果を上げることはできなかった。

 岩山エリアを根城にするロックリザードの群れに囲まれた際にガレンが負傷する事態が発生したが、大きな怪我ではなかったのが不幸中の幸いだろうか。


 俺たちが肩を落として拠点に帰還したときには、既に夜の帳が下りていた。

 波が砂浜を打つ音だけが辛うじて聞こえるほどに静けさで満ちている。

 俺は黒いインクを落としたような海をぼんやりと眺めた。


「結局、今回の攻略では何も得ることができなかったね」


「……」


 隣に誰かが座った音がすると、その誰かは俺に話しかけてきた。

 顔を向けずともわかる。

 サントラだ。

 どこか寂し気な呟きが波の音にさらわれていく。


「少し、俺の話を聞いてくれますか?突拍子もない話なんですけど」


「え、別にいいけど……」


 予想していた返事と違ったのだろう。

 少し困惑したようにサントラは頷いた。


「赤いんです。空も、海も」


 ここは迷宮(ダンジョン)の中であるため、如何に外の景色と見紛うほどの風景が広がっていようが、地平には果てがあるし海も空も贋作に過ぎない。


 ある時、俺にはそれらが真っ赤に見えてしまったのだ。

 次の瞬間には青色に戻ってしまったから見間違えたのかと思ったが、赤色に見える現象は度々訪れた。

 そして、『赤い』と心の中で思い込んで見てみると、それらは本当に赤く見えたのだ。


 そのことを伝えると、サントラは難しい顔をして唸りだす。


「なるほど……それは今も赤いのかい?」


「はい、ずっと」


「むむむ……ダメだ。僕には夜の風景にしか見えないよ」


 こんなふざけているとしか思えない話を真面目に聞いてくれることに、俺は少し驚く。

 どうせ信じてもらえないからと今まで黙っていたのだが、これならもっと早く伝えればよかったのかもしれない。


 みんなが海で遊んでいるときも、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、俺は荷物番を務めていたわけだが、あるものを発見した。


「……あそこに島があるんです」


 俺は海の向こうを指さした。

 その先には、くっきりと島の姿が見えている。


「……何もないよ?」


 サントラは目を細めて、俺が指さした先をじっと見るが、少しして諦めたように首を横に振った。

 だろうなと、俺は思った。


「俺も周囲が赤く見えだしてからあの島を見つけたんです。多分、その状態にならないとあの島を見ることはできないんだと思います」


 幻覚、催眠、妄想……。

 手段も理由もわからないが、何らかの異常が起こっているのは明らかだ。

 それは()()()()()()()()()()()()()、それとも()()()()()()()()()()()()()()()

 なんにせよ――、


「あの島に手掛かりがあると思います」


 俺は言い切った後、ちらりと横目でサントラの様子を窺う。

 勢いで話してしまったが、虚言と切り捨てられればそれまでだ。

 俺が見たサントラの瞳はキラキラと輝いていた。


「君を……ルージュを連れてきて、本当に良かった」


 バッとサントラが立ち上がると、その場でくるりとターンをする。

 ニコッと咲き誇るような笑みで、俺に手を差し出した。


「ありがとうルージュ!明日、みんなにそのことを伝えて話し合おう!」


 どうすれば信じてもらえるか、そんなことを考えていたのが馬鹿らしくなるほどにサントラの言葉に疑いの色はなかった。

 俺は慌てて尋ねる。


「自分で言うのも何ですが……こんな話を信じるんですか?」


「え、そんなの当たり前だよ!ここまで一緒にやってきた中でルージュは信用できるってわかってるから!」


 そこまで言い切られてしまうと、これ以上何か言うのは無粋な気がした。

 言いようのない照れくささが足元から上ってくる。


「……ありがとうございます」


「なんでルージュが礼を言うんだい?助けられたのはこっちなのに」


 心底わからないといった様子で首を傾げるサントラが妙に可愛く見えて、俺は思わずフッと噴き出した。

 ここに来てよかったと、俺は思うのであった。



いいね、ありがとうございます!!

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