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初迷宮(ダンジョン)

あけましておめでとうございます。


年末年始バタバタしてて更新できてませんでした……。

これからまたぼちぼち更新していこうと思いますので、よろしくお願いします!

「ここが迷宮(ダンジョン)の入り口だ」


 謎のエルフの少女、リシテアと会話した翌朝、俺たちはユグドラシルの根元まで来ていた。

 迷宮(ダンジョン)はどうしたと思うかもしれないが、その迷宮(ダンジョン)の入り口がここにあるのだ。

 正確には、ユグドラシルの洞が迷宮(ダンジョン)の入り口となっている。

 ユグドラシル自体の大きさに比例しているのか、洞と言えど人一人ぐらいは余裕で通れるほどの大きさだ。


「なんだ、これ?」


 何より不思議なのが、穴の表面をシャボン玉のような虹色の光沢がある膜が覆っている。

 そのせいで、中の様子は窺い知れない。


「ルージュは迷宮(ダンジョン)に来るのは初めてかい?」


「え、は、はい。そうです」


 不意にサントラから声をかけられたため、返事に詰まってしまった。

 正真正銘の王族であるサントラへの接し方がいまだにわかっていない。

 だからサントラと会話するのはどこか気後れするのだが、そんな俺の心情を知ってか知らずか、サントラはニコニコとした笑みをこちらに向けてくる。


「お、ルージュは迷宮(ダンジョン)が初めてか!でも安心していいぜ。俺たちは迷宮(ダンジョン)攻略に慣れてるからよ」


 サントラとは逆方向から声をかけられた。

 そちらを見ると、筋骨隆々との男が二カッと快活な笑みを浮かべている。


 この男の名前はガレン・アランド。

 俺たちと同じく、サントラが迷宮(ダンジョン)攻略のために集めたメンバーの一人だ。

 ロールエントリア学園の三年生でありながら、『巨人の鉄槌』というパーティのリーダーとして、積極的に冒険者活動を行っているらしい。

 ちなみに、『巨人の鉄槌』のパーティメンバーは三人。

 今回サントラが集めた迷宮(ダンジョン)攻略メンバーは、『巨人の鉄槌』の三人と俺とカリア、それにサントラ王子ともう一人の男子生徒で合計七名だ。

 あとの一人は、カリア曰くサントラの腹心…らしいが、謎の部分が多い。

 その男子生徒の名前はロイド。

 どこで改造しているのか、フード付きの制服で鼻のあたりまで顔を隠しており、ほとんど口元しか見えず怪しさ満点なのだが、当のサントラ自身が大丈夫と言っているので気にしないことにしている。


(それにしても、こんな面子の中に俺がいてもいいのだろうか?)


 そんな疑問が頭に浮かび、ちらりとサントラの方を向くと、相変わらずサントラはニコリと微笑んでいた。


「ありがとうございます。頼りにさせてもらいます」


 俺が苦笑しながら礼を言うと、任せろ!とガレンが俺の背中をバシンと強く叩いた。


「いッッ!?」


 あまりの力強さに思わず涙目になったが、既にガレンは近くにおらず、誰にも文句が言えなかった。


「そろそろ行こうか」


 サントラの言葉で俺たちは一か所に集まる。

 密集した俺たちを見て、サントラは満足そうに頷いた。


「ロイド」


 サントラは、脇に控えていたロイドに呼びかける。

 ロイドはこくりと頷くと、一歩前に踏み出て、躊躇うことなく光沢のある膜に身体を突っ込んだ。


「おお……」


 とぷんっと最後に表面を波立たせて、ロイドの姿が完全に消えていった。

 その後に続いてサントラ、『巨人の鉄槌』の面々が続いて迷宮(ダンジョン)に消えていく。

 それを見送っていると、ポンと背中を叩かれた。


「ビビってんじゃねえよ。いくぞ」


「……ビビってない」


 本心をカリアに見抜かれて、俺は少し恥ずかしい気分になりながらも言い返す。

 そんな反論に対し、カリアはけらけらと笑う。


「んなこと言ってねーで、早くいけって」


「うおッ!?」


 突如、背中に強い衝撃が走る。

 前に倒れこむように、俺は膜に突っ込んでいく。

 何とか首だけ後ろを振り向くと、ニィッと意地悪な笑みを浮かべたカリアが足をプラプラとさせていた。


「おま、蹴りやがったな!?」


「おめーがおせーからだ」


 思わず差し出した右腕は、何にも触れることなく膜にのみ込まれ、俺の身体は止まることなく膜が眼前に迫る。


「うッ!?」


 水に顔をつける時のように、俺は思わず目を瞑り息を止めた。

 俺の全身が膜を潜る。


 温かいのか冷たいのかもわからない不思議な感覚。


「大丈夫かい?」


 その言葉を聞いて、俺が恐る恐る目を開けると、もはや見慣れてすらきたサントラの柔和な微笑みが、弱々しい光源に照らされていた。

 地面についた手からは、ゴツゴツとした固い感触が返ってくる。


 一言で言えば、そこは薄暗い洞窟だった。

 周囲に突き立っている不思議な光を放っている鉱石により、最低限の視界は保たれている。

 洞窟自体はかなりの広さで、横も縦も十メートルぐらいはありそうだ。

 もっとも、天井付近には光る鉱石がなく、暗闇に覆われているのだが。


「よいしょっと」


 後ろから声が聞こえて振り向くと、両手を組んでふんぞり返ったカリアの姿があった。

 俺が膝をついてるため、その目は俺を面白そうに見下ろしている。


「おら、早く立てよ」


 そう言って、カリアは俺に手を差し出す。

 俺は反射的にその手を掴む。

 すると、相変わらず体躯に似合わない力強さで引っ張り上げられた。


 無理やり立たせられた俺の胸に、カリアがぽんっと拳をぶつける。


「ようこそ新人(ニュービー)迷宮(ダンジョン)へ」


 カリアはニヤリと口角を吊り上げながら、そう言った。


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