ひまじん
たぶん、風を聞いた。
スティーブ。そんな名前が、いい。マシンガンは、思った。花のくせに。
飛沫を、散らすのは、アザラシPhoca groenlandicaと、ホオジロザメCarcharodon carcharias、それに加えて圧力の壁のような「別」の水を押しのけるように、水面で「地球」を吐いたべつのどうぶつ、がいた。シャチOrcinus orcaだった。意味の解らないメンツ。どう考えても、捕食する方と、捕食されることを回避しようとするべき方、というような間柄だった。
そんな様子は全くなかった。
スティーブは、言葉を待っていた。
目の前に腰掛けた、二人の少年少女。。。
「この世界の王に、なりたくはありませんか。」
そう、言ったのである。
スティーブは、普通の人生を満喫している、練馬区在住の普通の男性である。
年齢は、24歳。
長年、目指し続けた、ラッパーとしての職業を見事、得るに至り、悪い気分ではなかった。本人の気持ち的には、「これから」の人生である。
ミュージシャンという人種は、バランスのとれたキチガイである。
どこまでも、ぶっ飛んだ、瞬間を、裸のハートで、目の前に発生させつつも、しかしそれを、受け取る側の方も、考えられずには、いられない。
相互作用は、クオリティを生み、商品価値を照らし出し、プロとして他と一線を引くに至る。
だから、スティーブは、本来なら馬鹿らしい、と取るような、たった今自分に繰り出された、台詞も、すぐには、笑わなかった。
一瞬、間を置いて、笑った。
その間で、スティーブは、次のことを考えた。
「いい、歌詞にはなるな。直接的で。」
_。がはははははははははははは。笑いを、遮ったのは、少女の声だった。
声じゃなかった。
しかし、少女が口を開いた時、それは発生した。風が舞った。
入口から、_ここはカフェである_吹き込んできたのである。それに乗って、帽子(麦わら)が、舞い込んできた。
ぱさ
眼前に、落ちてきた帽子を、少女は手に取り、スティーブは、その間、理由を超えて絶句し、落ちてきた帽子を、少女は、男の目の前に差し出した。
帽子には、Steve Jettoes 神岡と、書いてあった。スティーブの本名だった。彼の失くしていた、帽子だった。スティーブは、黙った。驚いたのだ。失くした、帽子だった。少女は喋った。
「えっへっへー。ありがとう、は?」
今、あったばかりの他人である。失くした帽子のことを知るはずも、なくその帽子が、ここにあるわけはなく、今、風と共に店に入ってくるわけもなかった。スティーブは言葉を口にした。
「何者だ?お前ら。」
少年は、返した。
「それだよね。待ってたよ、そのトーンとリアクション。おれら、ただものじゃないんですよ。」
「ねえ、レノン。思ったより、いい男だったね。ラッパーっていうから、黒人さんかと思ったし!」
「うるせえよ、かや。ミュージシャンなめんじゃねえぞ。」
「べつに、なめてないじゃん。ひく。」
「まあ、とにかくっ。」
ごほん、とレノン、そう呼ばれた少年は、切り返した。
「スティーブさん。」
言いなおした。
「この世界の王「それもう、言ったから、わたしが!」」
かやは、割り込んだ。
レノンは激怒した。
「うるっせえよ、アホ毛ぇ!仕切り直してんだよ!」
「はいはいはい、もういいよもう。はいはい。」
「ちょっと、いいか?」
スティーブは、目を固定して話し始めた。
「王ってどういう意味だ?」
二ヤリと笑う、少年レノンと少女かや。
「ついてきてちょうだいっ」
「ようこそ。」
どアップ。カメ厳密には、巨大なオサガメの顔。が、目の前にあった。スティーブの目の前である。キス可能至近距離である。
「ぅはオ!!!!!!!!!!!」
うしろに、華麗に飛び退いた、とは言えないスティーブの、高速あとずさりは、必死さを伝えた。
ぽろ。
現実が現れた。
「は!?」
たった今、自分が尻もちをつき、うしろにおいた腕それが空を切ったのである。陸がなかった。「な!?」
そこは、崖の上だった。切り立った、にも程がある。おそらく、広さは、直径8mほどだ。
馬鹿。
形容しようのない、異常な場所に、彼は居た。
目をあげると、カメの他にも、そのうしろに、ネッシーのような生き物も、なんと、浮いている。「、、、、、。」
スティーブは、しりもちをつき言葉を発せずにいられずにそして、それがただ一つ可能な「行動」だった。今の彼にとって。
「ようこそ、スティーブ様。」
カメはしゃべった。
「カメが喋った。。。」
カメは、しゃべってしまった。
カメは、しゃべるものでは、ない。
「この世界の王になられる、スティーブ様で間違いありませんね?」
「おう。」
なぜ。このとき肯定したのか、あとになって考えてみると全くの謎である。しかし、スティーブは「その、スティーブだ。」と言った。
STEVEは、カメの前にいた。
「ヒマ。。。潰し?」
聞き返した。
「ヒマを、ここで潰すのか?」
同じ内容を聞き返した。
「、、、なんで?」
カメは、返事をした。
「頼みます。スティーブ様。これが、貴方の使命なのです。」
「使命?あの、、、ここで、ヒマを潰す、、、つぶすことが??」
カメは、声色を変えない。
「そうです。」
「そうか。」
ああ、そうなのか、と小声で彼は、反芻した。
「シャチ、」
突然、カメは、別の動物の名を、口にした。
「シャチという動物をご存じですか?」
「シャチ?水族館にいるあの黒白のでかい知ってるよ?」
「貴方様のうしろに」
「っぎゃあああああああああああああああ」
振り返ると、そこには、とぐろを巻く様な、いびつな恰好で、これまた宙に浮いたシャチ、がスティーブの真後ろで、口を開けていた。
しかし、一瞬、間を置いて、冷静さを取り戻すと、目の前に現れたシャチは、どこか愛らしくも見えた。
「どうも!ねくた、と申します!よろしくで~す。」
「、、、。」
シャチまでもが、喋った。
「スティーブ様、お聞きくださいませ。」
「おう、、、。」
「スティーブ様には、なにがなんでも、ここで2年間ほど、ヒマをつぶしてもらわなくては、なりませんが、ヒマをつぶすためのものなら、こちらでいくらでも用意致しますので、なんなりとお申し付けくださいませ。そのシャチは、わたしの補助係でございます。」
「いや、たぶん、だけどいらないぜ?特に。シャチがおれに、ほしいものをくれるとは、ちょっと思えねえ、、、し。ってわりいけどさ。」
「そう言わず、これはこう見えて、なかなかできるシャチでございますので。」
「できるシャチ??そうか、、、。」
スティーブは、笑いをこらえた。
とりあえず、両ほほを両腕で抑えて、どうしよう、と叫びたいムンク的気分を抑えられずには、そう、いられなかった。
「ほしいものをくれるのか?」
「さようで。」
「ものだけか?」
「、、、。説明の補足を、お続けくださいませ。」「、、、。女!」
「人類の若い女性で、構いませんか?」
「人類以外の女は、いらねえや。」
「かしこまりました。少々お待ちください。」
「いいの!?」
あと一年間と、364日。
「お待たせいたしました」
「わあああお、わあお!」
目の前に、現れたのは確かに、アジア系の女性だった。というか、日本人であるようだ。口をきいた。
「、、、?あれ?」
「わああお。」
「スティーブ様。いかがですか?」
「いや、すげえな、すげえけど。わああお。」
白衣を着、こわばった顔には、何が何やらわからない、というように辺りを、警戒、かつまったく回ってない思考を、安定させるため、手を地面へぺたぺたとくっつけ始めた。
「では、スティーブ様。良い一日を。」
「、、、?なになになに、なにこれ。どこなの、ここは。」
女性は、誰にでもなく、しゃべり続けていた。
スティーブは、先ほどの自分に降りかかった混乱を思い出し、彼女に同情した。
「ねえ、あ、あの、すいません、誰ですか?」
我に返ったように、スティーブに、むきなおした。今まで、まったく気づいてなかったような、表情である。
「、、、。」
スティーブは、返事が出来なかった。
誰だったっけ、おれは。えっと。
「あ、スティーブです、あ、いや名字でいいや、カミオカっていいます、そう呼んでください!」
「カミオカ、、さん?ああ、どうも。えっと、これは、、、。」
「ああ!そうっすね、意味わからないっすよね、無理ないっすよ!おれもっす!」
「、、、。な、、、なんなんですか?ここは。」
少しも、戸惑いを落ちつけさせる様子のない、女の子にスティーブは、さらに戸惑った。
「し、知らないっす!あの、おれもよく知らないんです。」
「どこですか?」
「知らないっす。」
「知らない?あなたはなんでここに、あの、いるんですか?」
「えっと。、、、。ヒマを潰すためです。」
時が止まった。
女性は、これほど、男性と目を合わせたことは、今までになかった。しかし、ひとつもドキドキとするような感覚はなかった。
「、、、。ヒマを潰す!?」
「そうです!いや、そうらしいです!あのカメに、言われました」
「???」
女性は下を向いた。
目を剥いていた。顔は、美人なのに、見れた顔ではなくなっていた。
「ヒマを潰してるんですか?」
女性は、何か怒りを持ち始めていた。
「あたしは、そのために、あなたのヒマを潰すために」
女性の声量が、急速に増し続けていた。
このままでは、彼女の血管が危ない。
「いや、違うんです!なんていうか、わかんないです!ちょっと言ってみたら、こんなことになっちゃって!」
「言ってみた?誰に何を言ったんですか?」
「いや、それは言えないですけど。」
「は???」
「とにかくですね!落ち着いてください!考えましょう、これからどうするべきか!」
「、、、!あのですねわたしはね!いきなりワケも分からず、意味のわからない理由で、こんなとこに投げ込まれて、もう、精神おかしくなりそうなんですけど、あ、、、!あなたは、、、!え、あなたがわたしをここに、連れてきたんですか?」
「違います違います!なんか否定のしようがないけど、本当おれにはわけがわからないんです!おれは、あのカメに女が欲しいって言っただけで、、!」
「は!?なんで私なんですか!?」
「だから、わかんねえんだって、クドいな、あんた!」
「く!あのさあ!なんなのよ、あなた!ちゃんと答えてよ?これは、あなたのスティーブさんのせいなんですか!?わたしが今、ここにいるのは!」
「そうだ。」
カメだった。
「スティーブ様が、女性を求めた。若い女性だ。だから、お前をここに連れてきた。」
言うなり、カメはまた消えてしまった。
ぽつん、と残された二人の人類。
こうして、どういうわけか、こういうことになり、どういうわけか、口も聞かず、そのまま、5時間が過ぎた。沈黙の気まずさのようなものは、不思議と一切なく、にんげん開き直ってしまうと、意外と、感じられなくさせてしまえるようだ。自身の感覚も。ただ他人、その空気だった。
ここは、崖である。見渡しても、何も見えない。ただ単に高すぎるのだ。雲は、一切見えないが、ただ蒼が見渡す限りに、残酷なほど、広がっているのみなのだ。余りにも、物質が、なかった。スティーブは開口した。
「トイレとか、どうすんだろうな。、、、風呂、、、とか。」
「あのカメさんが、欲しいものは、くれるんでしょ?頼んでみれば?」
「そうだな。、、、あはははは、その前に、女、とか、おれどんだけ、たまってるんだって言う、な!?」
「、、、。」
女の子は笑わなかった。
スティーブは、目を閉じた。小声で、しまった、と唱えた。
「名前は?なんていうんだ?」
「、、、。」
「おい。」
無視していたわけではなかった。
単に、集中して考え事をしている様子だった。
「おいって。」
今度のは、聞こえていた。
女の子は、自分のペースで、ゆっくり返事をした。「なんでしょうか?」
「名前はって言ってんだろ。」
「八千草仁美」
「、、、へえ。」
会話は、終焉を迎えた。大団円だった。おまけシーンや、特典映像の匂い、それらしい空気はなかった。「あのさあ。」
「、、、。」
再び、自分のペースで返事をする仁美。
「なんでしょうか。」
「仁美ちゃん。、、、せっかくまあ、、、。」
「、、、何をどう考えたら、せっかく、っていう切り口になるんでしょう、この状況で。」
「、、、。」
スティーブは、まだすべてを言い終わる前に、心の鍵を閉められてしまった。エンドロールが、頭の中に流れている。いい、バラードだった。エアロスミスだった。
「せっかくさあ、まあ、会えたんだし。」
ちら、と様子を確認しながら、スティーブは、言葉をつなげた。彼女の表情次第で、次の瞬間の、自分の言葉を組み直すつもりだった。
「、、、。」
仁美は、あさっての方向を見ている。
「あ、仕事とかは?なにやってんの?」
「、、、。研究所。」
「、、、?え?」
聞き違いかと思った。
余りにも、声が小さかったので、しかしスティーブの耳は、正しく、音を拾っていた。
「鯨類研究所です。」
「、、、。、、、おう!そっか。なんかすげえな。頭良さそうだもん。」
「なあなあ、おれなんだと思う?」
スティーブは、返事をせがんだ。くす、と仁美は笑った。
「さあ。」
「ラッパー。あの、ほら、ミュージシャンなんだよ、おれ!実は。」
その次の瞬間、スティーブは、ひとってここまで興味ない、っていう顔をできるんだ、と思った。
「ねえ、あんた。仁美ちゃん。あんた、日本人?」
「そうですけど?」
「あ、ならいいんだ。いや、すげえ、反応とかわかりやすいからさ、全部、顔に出てるもん。なんか、そっか、ならいいや。」
「、、、でも、今は、日本にはいません。」
「おお、海外で働いてんだ?」
「はい。」
会話は終焉を迎えた。あれえ、とスティーブは思った。べつに、続いてもいい、感じだったけどなあ、と思った。
カメだった。
「うわお!!!!「わあ!!!」
二人は、同時に声を出した。
「スティーブ様!お告げがあります。」
驚いた反動で、スティーブは、声がうわずった。
「は!?」
女性並みの、高い声になっていた。まあ、それはよかった。
「大変失礼致しました。」
「何が?」
失礼なことなら、もう十分、やってくれたような気がするが、とスティーブと仁美は思った。法に触れる勢いで。だって、これ、完全に軟禁である。
「おトイレ、お風呂、洗面用具、それから布団でございます。たったいま、こちらで最高のものをご用意致します!」
また、カメは消えてしまった。なんだ、人間の生活を知っているんだ、と思った。ちょっと意外で吹いた。
ぷは。
「くす、、、。」
仁美はつられて笑った。
「あっははっははははっは」
二人は目を合わせて、勢いよく笑った。今まであった、緊張と摩擦が和らいだ、気がした。
「このまま、すんげえ高い服とかも、買ってもらおうぜ。」
「、、、。」
仁美は、何かのツボに入ってしまったようだ。もう、完全に笑いの基準が、ずれてしまっている。「、、、、。」
声も出ない程、笑い転げているのだ。
それを見てスティーブは、更に可笑しくなった。
「ひゃはははははははははっはははは!」
あと、1年と363日
ゴジラそう、聞こえた。空気は伝えていた実は、ゴジラとは、言ってなかった。
「誇りとはなんだろ!」
スティーブは、思わず言った。
寝言だった。
「?」
3m先で、寝ていた仁美は、「え??」と言った。
スティーブは、寝ていた。
マシンガンは、意識を灯し始めていた。ろうそく、のように。遠くで、声がした。ここは、朝日寸前、どこかもわからない、浜辺。
「シャチのために生きるんだろ!!?けい。」
「生きねえよ!」
マシンガンは、完全に目を覚ました。
シャチでは、なかった。
静寂の中、二つの声がする。
視覚を現在、持たぬマシンガンは、ただ、意識を声に、聞こえてくる二つの声に、集中させた。と思ったら、止んだ。と思う間もなく、目の前に、何かが、現れた。
「あら、きれいなお花!立派な海綿だこと!」
木村優美。心の中で、マシンガンは、その存在を認めた。目の前に現れた、少女の名前に違いなかった。笑い、その微笑は、あたりのものを優しく包み込むように、控えめに、しかし咲き、言わば誇っていた。
少女は、美しかった。
「また、おれを殺すつもりか?」
しかし、マシンガンが放った、と思ったその言葉は、空気中には伝わらなかった。花に、声帯は、無かった。マシンガンは、ぶち、とつみあげられた。
「うふふ。」
木村優美は、マシンガンを持って、そこから離れた。ギターが海に、濡れていた。ギターは、瞬く間に、別の何かになった。月の光は、一瞬、ぼんやり、光を強調させ、それに導かれるように、姿を消してしまった楽器の、その場所から、生物が発生した。ギターは、シャチになった。シャチは、若いメスだった。名前を、ゆし、といった。
マシンガンは、解らなかった。一体、この女は、どこに連れていくつもりなのだろう、とただ、思った。
スティーブは、目をこじ開けた。なぜ、こじ開ける必要があったのか、というと、思わぬ状況に、その身がさらされていたから、だった。
スティーブには、腕がある。当然のごとく長い腕がある。この腕はスティーブがラップを、する、その上で、リズムを正しく取るのに必要不可欠な、アイテムだ。そのアイテムが、思わぬところに置かれている。女性の、腹の上だった。
「っ!よっとぉお!!」
しかし、音量はしぼって、スティーブは、飛び起きた。
「なんで!?」
これも小声だった。
八千草仁美は、ぐっすりと寝ていた。
マシンガンには、まだわからなかった。兎瓦けいが、心配だった。実は、泣き出してしまいたいほど、このシャチだった花は、あの女子高生のことが、心配だった。マシンガンは、視界が皆無の中、自分にかけられた声をきいた。
「貴方は、マシンガンじゃないよ?」
私は、マシンガンだ、と彼は思った。
「くすす。」
木村優美の声だった。
ここは、岩の上だった。全開、そう形容できる、見晴らしの良すぎる切り立った細い、危険な崖の上だった。この少女が、よじ登ったとは、考えにくい。
「あなたは、ハンダあさり様よ。」
物語は、別の産声を上げ始めていた。
愛田屋。そう名付けられた、店の看板が、海中に在った。ただようくらげは、その看板にキスをした。
ギターから、発生したシャチは、何食わぬ顔だった。
「目を閉じろ!」
マシンガンは、ジェットコースターの中にいた、ようだった。
「おす、兄弟!!あたし、無節だよ!」
「、、、ああ、こんにち、は。」
ゆしはかわいかった。マシンガンには、この世のものとは、思えぬほど、魅力的だった。それは、初恋、のジェットコースターだった。ちょっと、待ってほしい。この表現は、撤回する。ちょっと恥ずかし過ぎた。_夜が、完全に明けた。
マシンガンは、一頭のシャチに会わされていた。野生。マシンガンは、思わぬ行動に出た。
「ゆし!愛している!」
ちょっと時間を戻して説明する。
崖から降りてきた、木村優美は、マシンガン、ただ今の外見は一輪の、ゆりの花に、話しかけながら、ある場所へ向かった。
「会わせたいやつが、いるんだよね~。」
優美は、この上なく楽しげだった。マシンガンに抗う術は、なかった。
スティーブは、仁美に殴られた頬をさすりながら、考え事をしていた。ただ今、この場所には、それなりの、布団、台所など、必要最小限のものは、そろっている断崖絶壁の、頂上である。ここに、二人の人間が、こともあろうか、
「今度、あたしに触ったら、突き落とすからね。」
可能だった。暮らしていた。スティーブは、自分をこんなところに追放した、ちょっとどんな方法で、一瞬にして、自分をこんなところに連れてきたのか、は想像の及ぶ範囲外であったが、あの少年少女を想い出していた。不思議と、恨む気になれない。名は、なんといったか。確か、、、
「レノン!意味わかんないんだけど!対バンってなんのこと!?」
「そのままだよ!違う音楽グループがな!同じハコでな!順番にライブを」
「知ってるよ!そうじゃなくて、なに!?音楽グループってわたしらの、他に誰よ!」
「いやお前なんでそんなに、だるまみたいに怒ってんだよ!!だらしない、たわしみたいな頭しやがって。」
「そっちこそ、ただのガチャピンじゃん。頭にフクロウ乗っけた気味悪い。」
「ああ!?」
我に返ったマシンガンはすでに、マシンガンではなかった。
兎瓦けいが、そうでなくなってしまったように、今、マシンガンは、反蛇求喰だった。
月と呼ばれた少女は、正気だった。
マシンガンの見かけと女子高生けいの影は、今、兎瓦家の家を出た。 月は、名を、
「桂!、、、久しぶりじゃない。」
「久しぶりです。」
桂、と言った___。




