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ひなた  作者: ひまじん
7/19

ひまじん

 たぶん、風を聞いた。

 スティーブ。そんな名前が、いい。マシンガンは、思った。花のくせに。

 飛沫を、散らすのは、アザラシPhoca groenlandicaと、ホオジロザメCarcharodon carcharias、それに加えて圧力の壁のような「別」の水を押しのけるように、水面で「地球」を吐いたべつのどうぶつ、がいた。シャチOrcinus orcaだった。意味の解らないメンツ。どう考えても、捕食する方と、捕食されることを回避しようとするべき方、というような間柄だった。 

そんな様子は全くなかった。


 スティーブは、言葉を待っていた。

 目の前に腰掛けた、二人の少年少女。。。  

「この世界の王に、なりたくはありませんか。」

 そう、言ったのである。 

 スティーブは、普通の人生を満喫している、練馬区在住の普通の男性である。

 年齢は、24歳。

 長年、目指し続けた、ラッパーとしての職業を見事、得るに至り、悪い気分ではなかった。本人の気持ち的には、「これから」の人生である。

 ミュージシャンという人種は、バランスのとれたキチガイである。

 どこまでも、ぶっ飛んだ、瞬間を、裸のハートで、目の前に発生させつつも、しかしそれを、受け取る側の方も、考えられずには、いられない。 

 相互作用は、クオリティを生み、商品価値を照らし出し、プロとして他と一線を引くに至る。 

 だから、スティーブは、本来なら馬鹿らしい、と取るような、たった今自分に繰り出された、台詞も、すぐには、笑わなかった。

 一瞬、間を置いて、笑った。

 その間で、スティーブは、次のことを考えた。

「いい、歌詞にはなるな。直接的で。」

 _。がはははははははははははは。笑いを、遮ったのは、少女の声だった。

 声じゃなかった。

 しかし、少女が口を開いた時、それは発生した。風が舞った。

 入口から、_ここはカフェである_吹き込んできたのである。それに乗って、帽子(麦わら)が、舞い込んできた。

 ぱさ

 眼前に、落ちてきた帽子を、少女は手に取り、スティーブは、その間、理由を超えて絶句し、落ちてきた帽子を、少女は、男の目の前に差し出した。 

 帽子には、Steve Jettoes 神岡と、書いてあった。スティーブの本名だった。彼の失くしていた、帽子だった。スティーブは、黙った。驚いたのだ。失くした、帽子だった。少女は喋った。

「えっへっへー。ありがとう、は?」

 今、あったばかりの他人である。失くした帽子のことを知るはずも、なくその帽子が、ここにあるわけはなく、今、風と共に店に入ってくるわけもなかった。スティーブは言葉を口にした。

「何者だ?お前ら。」

 少年は、返した。

「それだよね。待ってたよ、そのトーンとリアクション。おれら、ただものじゃないんですよ。」

「ねえ、レノン。思ったより、いい男だったね。ラッパーっていうから、黒人さんかと思ったし!」

「うるせえよ、かや。ミュージシャンなめんじゃねえぞ。」

「べつに、なめてないじゃん。ひく。」

「まあ、とにかくっ。」

 ごほん、とレノン、そう呼ばれた少年は、切り返した。

「スティーブさん。」

 言いなおした。

「この世界の王「それもう、言ったから、わたしが!」」

 かやは、割り込んだ。

 レノンは激怒した。

「うるっせえよ、アホ毛ぇ!仕切り直してんだよ!」

「はいはいはい、もういいよもう。はいはい。」

「ちょっと、いいか?」

 スティーブは、目を固定して話し始めた。

「王ってどういう意味だ?」

 二ヤリと笑う、少年レノンと少女かや。

「ついてきてちょうだいっ」


「ようこそ。」

 どアップ。カメ厳密には、巨大なオサガメの顔。が、目の前にあった。スティーブの目の前である。キス可能至近距離である。

「ぅはオ!!!!!!!!!!!」

 うしろに、華麗に飛び退いた、とは言えないスティーブの、高速あとずさりは、必死さを伝えた。

 ぽろ。

 現実が現れた。

「は!?」

 たった今、自分が尻もちをつき、うしろにおいた腕それが空を切ったのである。陸がなかった。「な!?」

 そこは、崖の上だった。切り立った、にも程がある。おそらく、広さは、直径8mほどだ。

 馬鹿。

 形容しようのない、異常な場所に、彼は居た。

 目をあげると、カメの他にも、そのうしろに、ネッシーのような生き物も、なんと、浮いている。「、、、、、。」

 スティーブは、しりもちをつき言葉を発せずにいられずにそして、それがただ一つ可能な「行動」だった。今の彼にとって。

「ようこそ、スティーブ様。」

 カメはしゃべった。

「カメが喋った。。。」

 カメは、しゃべってしまった。

 カメは、しゃべるものでは、ない。

「この世界の王になられる、スティーブ様で間違いありませんね?」

「おう。」

 なぜ。このとき肯定したのか、あとになって考えてみると全くの謎である。しかし、スティーブは「その、スティーブだ。」と言った。


 STEVEは、カメの前にいた。

「ヒマ。。。潰し?」

 聞き返した。

「ヒマを、ここで潰すのか?」

 同じ内容を聞き返した。

「、、、なんで?」

 カメは、返事をした。

「頼みます。スティーブ様。これが、貴方の使命なのです。」

「使命?あの、、、ここで、ヒマを潰す、、、つぶすことが??」

 カメは、声色を変えない。

「そうです。」

「そうか。」

 ああ、そうなのか、と小声で彼は、反芻した。

「シャチ、」

 突然、カメは、別の動物の名を、口にした。

「シャチという動物をご存じですか?」

「シャチ?水族館にいるあの黒白のでかい知ってるよ?」

「貴方様のうしろに」

「っぎゃあああああああああああああああ」

 振り返ると、そこには、とぐろを巻く様な、いびつな恰好で、これまた宙に浮いたシャチ、がスティーブの真後ろで、口を開けていた。

 しかし、一瞬、間を置いて、冷静さを取り戻すと、目の前に現れたシャチは、どこか愛らしくも見えた。

「どうも!ねくた、と申します!よろしくで~す。」

「、、、。」

 シャチまでもが、喋った。

「スティーブ様、お聞きくださいませ。」

「おう、、、。」

「スティーブ様には、なにがなんでも、ここで2年間ほど、ヒマをつぶしてもらわなくては、なりませんが、ヒマをつぶすためのものなら、こちらでいくらでも用意致しますので、なんなりとお申し付けくださいませ。そのシャチは、わたしの補助係でございます。」

「いや、たぶん、だけどいらないぜ?特に。シャチがおれに、ほしいものをくれるとは、ちょっと思えねえ、、、し。ってわりいけどさ。」

「そう言わず、これはこう見えて、なかなかできるシャチでございますので。」

「できるシャチ??そうか、、、。」

 スティーブは、笑いをこらえた。

 とりあえず、両ほほを両腕で抑えて、どうしよう、と叫びたいムンク的気分を抑えられずには、そう、いられなかった。

「ほしいものをくれるのか?」

「さようで。」

「ものだけか?」

「、、、。説明の補足を、お続けくださいませ。」「、、、。女!」

「人類の若い女性で、構いませんか?」

「人類以外の女は、いらねえや。」

「かしこまりました。少々お待ちください。」

「いいの!?」

 あと一年間と、364日。


「お待たせいたしました」

「わあああお、わあお!」

 目の前に、現れたのは確かに、アジア系の女性だった。というか、日本人であるようだ。口をきいた。

「、、、?あれ?」

「わああお。」

「スティーブ様。いかがですか?」

「いや、すげえな、すげえけど。わああお。」

 白衣を着、こわばった顔には、何が何やらわからない、というように辺りを、警戒、かつまったく回ってない思考を、安定させるため、手を地面へぺたぺたとくっつけ始めた。

「では、スティーブ様。良い一日を。」

「、、、?なになになに、なにこれ。どこなの、ここは。」

 女性は、誰にでもなく、しゃべり続けていた。

 スティーブは、先ほどの自分に降りかかった混乱を思い出し、彼女に同情した。

「ねえ、あ、あの、すいません、誰ですか?」

 我に返ったように、スティーブに、むきなおした。今まで、まったく気づいてなかったような、表情である。

「、、、。」

 スティーブは、返事が出来なかった。

 誰だったっけ、おれは。えっと。

「あ、スティーブです、あ、いや名字でいいや、カミオカっていいます、そう呼んでください!」

「カミオカ、、さん?ああ、どうも。えっと、これは、、、。」

「ああ!そうっすね、意味わからないっすよね、無理ないっすよ!おれもっす!」

「、、、。な、、、なんなんですか?ここは。」

 少しも、戸惑いを落ちつけさせる様子のない、女の子にスティーブは、さらに戸惑った。

「し、知らないっす!あの、おれもよく知らないんです。」

「どこですか?」

「知らないっす。」

「知らない?あなたはなんでここに、あの、いるんですか?」

「えっと。、、、。ヒマを潰すためです。」

 時が止まった。

 女性は、これほど、男性と目を合わせたことは、今までになかった。しかし、ひとつもドキドキとするような感覚はなかった。

「、、、。ヒマを潰す!?」

「そうです!いや、そうらしいです!あのカメに、言われました」

「???」

 女性は下を向いた。

 目を剥いていた。顔は、美人なのに、見れた顔ではなくなっていた。

「ヒマを潰してるんですか?」

 女性は、何か怒りを持ち始めていた。

「あたしは、そのために、あなたのヒマを潰すために」

 女性の声量が、急速に増し続けていた。

 このままでは、彼女の血管が危ない。

「いや、違うんです!なんていうか、わかんないです!ちょっと言ってみたら、こんなことになっちゃって!」

「言ってみた?誰に何を言ったんですか?」

「いや、それは言えないですけど。」

「は???」

「とにかくですね!落ち着いてください!考えましょう、これからどうするべきか!」

「、、、!あのですねわたしはね!いきなりワケも分からず、意味のわからない理由で、こんなとこに投げ込まれて、もう、精神おかしくなりそうなんですけど、あ、、、!あなたは、、、!え、あなたがわたしをここに、連れてきたんですか?」

「違います違います!なんか否定のしようがないけど、本当おれにはわけがわからないんです!おれは、あのカメに女が欲しいって言っただけで、、!」

「は!?なんで私なんですか!?」

「だから、わかんねえんだって、クドいな、あんた!」

「く!あのさあ!なんなのよ、あなた!ちゃんと答えてよ?これは、あなたのスティーブさんのせいなんですか!?わたしが今、ここにいるのは!」

「そうだ。」

 カメだった。

「スティーブ様が、女性を求めた。若い女性だ。だから、お前をここに連れてきた。」

 言うなり、カメはまた消えてしまった。

 ぽつん、と残された二人の人類。


 こうして、どういうわけか、こういうことになり、どういうわけか、口も聞かず、そのまま、5時間が過ぎた。沈黙の気まずさのようなものは、不思議と一切なく、にんげん開き直ってしまうと、意外と、感じられなくさせてしまえるようだ。自身の感覚も。ただ他人、その空気だった。

 ここは、崖である。見渡しても、何も見えない。ただ単に高すぎるのだ。雲は、一切見えないが、ただ蒼が見渡す限りに、残酷なほど、広がっているのみなのだ。余りにも、物質が、なかった。スティーブは開口した。

「トイレとか、どうすんだろうな。、、、風呂、、、とか。」

「あのカメさんが、欲しいものは、くれるんでしょ?頼んでみれば?」

「そうだな。、、、あはははは、その前に、女、とか、おれどんだけ、たまってるんだって言う、な!?」

「、、、。」

 女の子は笑わなかった。

 スティーブは、目を閉じた。小声で、しまった、と唱えた。

「名前は?なんていうんだ?」

「、、、。」

「おい。」

 無視していたわけではなかった。

 単に、集中して考え事をしている様子だった。

「おいって。」

 今度のは、聞こえていた。

 女の子は、自分のペースで、ゆっくり返事をした。「なんでしょうか?」

「名前はって言ってんだろ。」

「八千草仁美」

「、、、へえ。」

 会話は、終焉を迎えた。大団円だった。おまけシーンや、特典映像の匂い、それらしい空気はなかった。「あのさあ。」

「、、、。」

 再び、自分のペースで返事をする仁美。

「なんでしょうか。」

「仁美ちゃん。、、、せっかくまあ、、、。」

「、、、何をどう考えたら、せっかく、っていう切り口になるんでしょう、この状況で。」

「、、、。」

 スティーブは、まだすべてを言い終わる前に、心の鍵を閉められてしまった。エンドロールが、頭の中に流れている。いい、バラードだった。エアロスミスだった。

「せっかくさあ、まあ、会えたんだし。」

 ちら、と様子を確認しながら、スティーブは、言葉をつなげた。彼女の表情次第で、次の瞬間の、自分の言葉を組み直すつもりだった。

「、、、。」

 仁美は、あさっての方向を見ている。

「あ、仕事とかは?なにやってんの?」

「、、、。研究所。」

「、、、?え?」

 聞き違いかと思った。

 余りにも、声が小さかったので、しかしスティーブの耳は、正しく、音を拾っていた。

「鯨類研究所です。」

「、、、。、、、おう!そっか。なんかすげえな。頭良さそうだもん。」

「なあなあ、おれなんだと思う?」

 スティーブは、返事をせがんだ。くす、と仁美は笑った。

「さあ。」

「ラッパー。あの、ほら、ミュージシャンなんだよ、おれ!実は。」

 その次の瞬間、スティーブは、ひとってここまで興味ない、っていう顔をできるんだ、と思った。

「ねえ、あんた。仁美ちゃん。あんた、日本人?」

「そうですけど?」

「あ、ならいいんだ。いや、すげえ、反応とかわかりやすいからさ、全部、顔に出てるもん。なんか、そっか、ならいいや。」

「、、、でも、今は、日本にはいません。」

「おお、海外で働いてんだ?」

「はい。」

 会話は終焉を迎えた。あれえ、とスティーブは思った。べつに、続いてもいい、感じだったけどなあ、と思った。 

 カメだった。

「うわお!!!!「わあ!!!」

 二人は、同時に声を出した。

「スティーブ様!お告げがあります。」

 驚いた反動で、スティーブは、声がうわずった。

「は!?」

 女性並みの、高い声になっていた。まあ、それはよかった。

「大変失礼致しました。」

「何が?」

 失礼なことなら、もう十分、やってくれたような気がするが、とスティーブと仁美は思った。法に触れる勢いで。だって、これ、完全に軟禁である。

「おトイレ、お風呂、洗面用具、それから布団でございます。たったいま、こちらで最高のものをご用意致します!」

 また、カメは消えてしまった。なんだ、人間の生活を知っているんだ、と思った。ちょっと意外で吹いた。

 ぷは。

「くす、、、。」

 仁美はつられて笑った。

「あっははっははははっは」

 二人は目を合わせて、勢いよく笑った。今まであった、緊張と摩擦が和らいだ、気がした。

「このまま、すんげえ高い服とかも、買ってもらおうぜ。」

「、、、。」

 仁美は、何かのツボに入ってしまったようだ。もう、完全に笑いの基準が、ずれてしまっている。「、、、、。」

 声も出ない程、笑い転げているのだ。

 それを見てスティーブは、更に可笑しくなった。

「ひゃはははははははははっはははは!」

あと、1年と363日


 ゴジラそう、聞こえた。空気は伝えていた実は、ゴジラとは、言ってなかった。

「誇りとはなんだろ!」

 スティーブは、思わず言った。

 寝言だった。

「?」

 3m先で、寝ていた仁美は、「え??」と言った。

 スティーブは、寝ていた。


 マシンガンは、意識を灯し始めていた。ろうそく、のように。遠くで、声がした。ここは、朝日寸前、どこかもわからない、浜辺。

「シャチのために生きるんだろ!!?けい。」

「生きねえよ!」

 マシンガンは、完全に目を覚ました。

 シャチでは、なかった。


 静寂の中、二つの声がする。

 視覚を現在、持たぬマシンガンは、ただ、意識を声に、聞こえてくる二つの声に、集中させた。と思ったら、止んだ。と思う間もなく、目の前に、何かが、現れた。

「あら、きれいなお花!立派な海綿かいめんだこと!」

 木村優美きむらゆみ。心の中で、マシンガンは、その存在を認めた。目の前に現れた、少女の名前に違いなかった。笑い、その微笑は、あたりのものを優しく包み込むように、控えめに、しかし咲き、言わば誇っていた。

 少女は、美しかった。

「また、おれを殺すつもりか?」 

 しかし、マシンガンが放った、と思ったその言葉は、空気中には伝わらなかった。花に、声帯は、無かった。マシンガンは、ぶち、とつみあげられた。

「うふふ。」

 木村優美は、マシンガンを持って、そこから離れた。ギターが海に、濡れていた。ギターは、瞬く間に、別の何かになった。月の光は、一瞬、ぼんやり、光を強調させ、それに導かれるように、姿を消してしまった楽器の、その場所から、生物が発生した。ギターは、シャチになった。シャチは、若いメスだった。名前を、ゆし、といった。

 マシンガンは、解らなかった。一体、この女は、どこに連れていくつもりなのだろう、とただ、思った。


 スティーブは、目をこじ開けた。なぜ、こじ開ける必要があったのか、というと、思わぬ状況に、その身がさらされていたから、だった。

 スティーブには、腕がある。当然のごとく長い腕がある。この腕はスティーブがラップを、する、その上で、リズムを正しく取るのに必要不可欠な、アイテムだ。そのアイテムが、思わぬところに置かれている。女性の、腹の上だった。

「っ!よっとぉお!!」 

 しかし、音量はしぼって、スティーブは、飛び起きた。

「なんで!?」

 これも小声だった。 

 八千草仁美は、ぐっすりと寝ていた。


 マシンガンには、まだわからなかった。兎瓦けいが、心配だった。実は、泣き出してしまいたいほど、このシャチだった花は、あの女子高生のことが、心配だった。マシンガンは、視界が皆無の中、自分にかけられた声をきいた。

「貴方は、マシンガンじゃないよ?」

 私は、マシンガンだ、と彼は思った。

「くすす。」

 木村優美の声だった。

 ここは、岩の上だった。全開、そう形容できる、見晴らしの良すぎる切り立った細い、危険な崖の上だった。この少女が、よじ登ったとは、考えにくい。

「あなたは、ハンダあさり様よ。」

 物語は、別の産声を上げ始めていた。


 愛田屋。そう名付けられた、店の看板が、海中に在った。ただようくらげは、その看板にキスをした。

 ギターから、発生したシャチは、何食わぬ顔だった。

「目を閉じろ!」

 マシンガンは、ジェットコースターの中にいた、ようだった。

「おす、兄弟!!あたし、無節だよ!」

「、、、ああ、こんにち、は。」

 ゆしはかわいかった。マシンガンには、この世のものとは、思えぬほど、魅力的だった。それは、初恋、のジェットコースターだった。ちょっと、待ってほしい。この表現は、撤回する。ちょっと恥ずかし過ぎた。_夜が、完全に明けた。


 マシンガンは、一頭のシャチに会わされていた。野生。マシンガンは、思わぬ行動に出た。

「ゆし!愛している!」

 ちょっと時間を戻して説明する。

 崖から降りてきた、木村優美は、マシンガン、ただ今の外見は一輪の、ゆりの花に、話しかけながら、ある場所へ向かった。

「会わせたいやつが、いるんだよね~。」

優美は、この上なく楽しげだった。マシンガンに抗う術は、なかった。


 スティーブは、仁美に殴られた頬をさすりながら、考え事をしていた。ただ今、この場所には、それなりの、布団、台所など、必要最小限のものは、そろっている断崖絶壁の、頂上である。ここに、二人の人間が、こともあろうか、

「今度、あたしに触ったら、突き落とすからね。」

 可能だった。暮らしていた。スティーブは、自分をこんなところに追放した、ちょっとどんな方法で、一瞬にして、自分をこんなところに連れてきたのか、は想像の及ぶ範囲外であったが、あの少年少女を想い出していた。不思議と、恨む気になれない。名は、なんといったか。確か、、、

「レノン!意味わかんないんだけど!対バンってなんのこと!?」

「そのままだよ!違う音楽グループがな!同じハコでな!順番にライブを」

「知ってるよ!そうじゃなくて、なに!?音楽グループってわたしらの、他に誰よ!」

「いやお前なんでそんなに、だるまみたいに怒ってんだよ!!だらしない、たわしみたいな頭しやがって。」

「そっちこそ、ただのガチャピンじゃん。頭にフクロウ乗っけた気味悪い。」

「ああ!?」


 我に返ったマシンガンはすでに、マシンガンではなかった。

兎瓦けいが、そうでなくなってしまったように、今、マシンガンは、反蛇求喰はんだあさりだった。

 月と呼ばれた少女は、正気だった。

 マシンガンの見かけと女子高生けいの影は、今、兎瓦家の家を出た。 月は、名を、

「桂!、、、久しぶりじゃない。」

「久しぶりです。」

 桂、と言った___。

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