みさきとマシンガンと女の子
兎瓦けい、騒動に巻き込まれている、一人の女子高生の母親、みさき____ここのところ、全く、寝れていない。奇行が目立つ、自分の娘のことが、胸の奥で、心配で心配で、気が、最早、とち狂ってしまいそうなのである。
態度には、出さない。出せない。正直、もう、金輪際、外出すらして欲しくもないのだが、そんなことは、けいのためには、ならない。
テーブルで、唯一の相談相手、<熱いお茶>と沈黙の、しかし仮初めの癒しを得るのみ、である。
つぶやく。
「あの子はもう、友達みんなに心配かけて。」
は、と顔を上げた。
この前、変なチラシを持って、この兎瓦家に、うかがってきた女の子のことである。本当に、見たことがない、と断言できる、みさきにとっては、人物だった。これでも、けいの周りのことは、ある程度、知っているつもりである。娘とのコミュニケーションも、そう、下手な、上手くいってない方では、ない、と思うから、やはり、彼女の中で、あの訪問への、疑いの色は、日に日に濃くなる。
精神力は並みではない、彼女は、しかし、身体を壊す、なんてことは、今のところはなさそうだ。しかし、心配だった。一瞬しか、見えなかったが、<地球様>としか、書いてなかったように、思う。
彼女が、地球様?
いや、娘の愛称?
変な、宗教の勧誘先の教祖?
実際は、
実際は、文字通り、この太陽系第三の惑星「地球」の意識が、直接、兎瓦家に訪問してきたのである。
兎瓦みさきは、娘のメガネを見て、また、亀裂が入っているんじゃないか、と怖くなった。買ったばかりの、それは、ピカピカで、傷一つ付いていなかった。
第15話
みさき
と
マシンガン
と
女の子
神岡眞弥は、他の惑星巫天と、会っていた。
「眞弥ちゃんっ!久しぶり。」
「久しぶり、レノン。最近のあなたの、気体調節、すごくいいと思う。調子に、乗られるとイヤだけど、あなたやっぱ才能半端ない。」
ひざまずく、レノン。
「これは、これは光栄です。地球様。」
しかし、どこか、半笑いだ。
今度は、地球様は、かやに目を向けた。
「かや、久しぶり。」
「うん、眞弥っ。どう?慣れてきた?確か、今回が初めてだよね?<チキュウガエシ>。」
「、、、。肌に合わない、あたしには。」
かやは、困ってしまった。
「!そうだよね?はーあ、これも、どれも、全部あのわがままシャチのせいかと思うと、ほんとに、、、ふーむ。」
かやは、首を大袈裟にかしげた。
「あいつ、帰ったってほんとかね。まあ、姉さんが言うんだから、間違いないか。」
例のスタジオである。まず、普通は、ミーティングに使うような、部屋ではない。何回も言わせてもらう。ミュージシャンが、
「うるっせえ、もう聞いたよ。」
レノン。
「眞弥ちゃんさ。ずっと、おれ迷ってたんだけど、対バンやろうと思ってんだ。」
沈黙があった。眞弥は、レノンと目を合わせて、石化した。ガチャピンの羽根がぴく、と動いた。いや、それに意味はない。そのぐらい時間が、経過した、という意味だ。
「ああ!、、、! MOVEのこと??前から、言おうと思ってたんだけど、さ、レノンっ。いや、それが君の持ち味なのかなあ。」
かやが、甘やかすなとばかりに突っ込む。
「でしょ!?それだけ、言われても意味わかんないでしょ?どこまで、こら、被れてんだこっちの時代に。」
「は。いいことだろ、適応力あんのは。」
眞弥に、悪い笑顔を決める、レノン。
「適応力で、シャチに敵やしねえが、地球様?」
「?」
「眞弥、無視していいから。こいつこの調子で、イシアガンにバンドメンバーの勧誘して、全部にフラれてるからっ演奏聴かれる前からっ!マジバカ。」
レノンが、かやのピアノ線をちょん、と弾いた。
「うっせえよ、だって何億曲とか、言いだすんだもん、人間。あいつら、ある意味、発想では、神超えたよな。」
ははは、と笑うレノン。笑っているのは、自分だけだと気付くと、さっきから一言も発しないゲイボーイに助けを求める。
「もう、おれには、お前しかいねえぜ。正直、お前のベースライン、色気なくて、あんま好きじゃねえけど。あ、言っちった。」
ツチノトは、微動だにしない。やはり、男の中のお_
「嘘だよ。ばか、反論しろよ、カエル男!」
別のカエル男、と同時に花男は、部屋にこもりっきりのけいを、夜通しで罵倒し続けていた。
ゲームボーイアドバンスドと、唯一無二の親友と化してしまったけいに対して、である。
「つまんねえ人間だな、兎瓦けい。見損なった。ここからだろうが、はい、事情を知りました。壁に会いました。」
ぱん、とカエルがけいの耳を弾く。
「壁を突破しました。じゃあ、これから、目的に向かって歩きだしましょうだろうがよ。」
冷徹な声を放つ、けい。
「さっき きいた それ。」
ロボットでも、もう少し、感情を込められるのでは、ないだろうか。けいは、腐っていた。さとしのせい、かもしれない。それ以外も、あったのかもしれない。実際、柚宇は、優しく説得する柄ではない。元気を出して欲しい、一心なのに、どうしても、厳しくしつけるような、言い回しになってしまう。仮に、付き合うとしても上手くいかない2人だろう、と推測する。
「は!もう知らねえよ、おい告げ口するぞ、マウ、、、いやマシンガンにっ!兎瓦けいは、お前の買い被りだったと!<誰かを助けたい>っつう、この世で、」
けいの耳がぴく、と動いた。
「最も、おい、兎瓦けい!聞けよ。」
ゆっくりとカエルに振り向く、けい。ぼそ、と言った。
「もう、いいよ。」
柚宇は、この言葉が_青年になる、求喰柚宇
この言葉が_窓に手をかける、求喰柚宇
この言葉が_ば、と飛び降りる、求喰柚宇
けいは、振り向きすらしない。
この言葉が、今までのけいの言葉で、一番腹が立った。何も言わず、花男は、けいの部屋を出て行った。
奈良さとしは、さっきから授業を全く聞いていない。
「えー、ね?だからね?化学ってものは、みんなが思う程、扱いづらいものじゃ、なくてね?」
ヒトの良さそうな、先生の顔を、まったく、恨みはないのに、親の敵を見るような目で、見ていた。
兎瓦けいの、泣き顔が、頭から離れてくれない。が、絶対にあいつの方が悪い、という意見は変えるつもりは、毛頭なかった。一体、誰のために、ここ最近ずっと、悩んでやってる、と思ってんだ、と思った。視線を横にやると、ちなつも同じような顔をしているように、思う。何の前触れもなく、立ち上がるさとし。
「先生。おれ、ちょっと、うんこ。」
わざと、クラスの笑いを取った。
ヒトが良いその先生は、行かせてくれた。
奈良さとしは、大好きな屋上で、牛乳を飲んでいた。奈良は、バスケ部である。背は、しかしそこまで高くはない。もう彼の中で、ここんところの、<楽しい順位>において、バスケが一位に躍り出ていた。少し前までは、ぶっちぎりで、兎瓦けいと共に過ごす時間が一位だったのに。ふ、と自嘲気味に笑うと、校庭を見た。よし、けいに謝ろう、というアイデアが浮かんだ。
さっきまでは、120%けいが、悪いと思っていた。しかし、自分も、言い過ぎた。意を決した、さとしの眼下で、恐ろしいことが起きていた。
二頭目のイルカ
なんと、校庭に動物がいたのだ。全身から、血の気が引いた。テレビでしか、見たことのない動物である。けいのことなど、忘れてしまった。
しかし、次の日、駆けつけた捕獲チームに、例の公園で、休んでいるところを捕獲された、というニュースが流れた。第一発見者はさとしだったが、あの直後に、その動物は消えてしまっていたのである。
HATSUKA
けいは、テレビなどもう何日も見ていないし、みさきとも会話をしていないので、全くニュースのことなど、ツユ知らずのゲームボーイ三昧である。
たまに、声なら上げる。
「、、、E T I A G x N」
古代、求喰川の言葉で、音、という意味であった。
「ねえ聞いた?見晴らし公園で、昨日、、、!」
「聞いたあ!え、いやあれガセって聞いたけど!?」
さとしが割って入った。
教室内、皆話題は一つであった。さとしは喋った。みんなが聞いてるのを感じたので、ある程度でかい声で言った。
「ライオンだろ?ああ、二日前、ふっつーに、校門んとこいたべよ。」
ざわざわし出す教室内。
「洒落なんなくねえ!?誰も食われなかったん?ちょっと、そう考えると、キリンはまだかわいい方だったよな?」
ざわざわは、止まない。
さとしは、久しぶりに登校してきた、兎瓦けいの姿を確認した。
「「ごめん!」」
「「はは」」
二人同時に、謝り、2人同時に笑いまでハモった。ぱ、と明るくなるけいの顔。それを待っていたさとし。2人は、屋上で今までで一番熱い口づけをした。
さとしの<楽しい順位>は、また上位で変動があった。なんと、1位から5位まで、すべて、けいと過ごす時間になってしまった。たまらない気持と欲求で、けいを押し倒すさとし。
太陽は、猫のように戯れ合う二頭の人間を、優しく、その時間に寄り添うように、「2人には」感じた。けいは、言った。
「ごめん、さっちゃんもう忘れる!シャチとか全部!」
さとしは、満足そうであった。
次の日、驚くべきニュースが、この宇都宮のさほど有名でもない街で、駆け巡った。
校庭ではなく、今度は校舎内で、動物が捕獲されたのである。第一発見者は、宿直の教師。消火器の前で、休んでいるところに、チームを呼び、捕獲してもらったのである。
動物、種類は、ベンガルトラと呼ばれている。どこから来たのか、皆目見当がつかない。タチの悪い調教師が、どこかから連れてきていたのだろうか?ライオンやトラを?猛獣である。まず、車には収まってくれはしない。むしろ、怖すぎて、もう誰も敢えて話題にはしないように、した。
ただ一人、けいは、あっけらかんとしている。奈良はそんな自分の肝っ玉彼女に、目を見張る。
「はっは。あたし、もう死線かいくぐってっかんな!なんか猛獣とか、聞いてもあんま怖くねえな、これ!」
「まあ、でも挑まないでくれよ?けい」
「それは、ない!」
<そいつら、ライオンとトラが、恩返し求めてんなら別だがな>台詞は、押しとどめられるように、けいの思考から消された。
「さっちゃんっ、わたし今日、食べたいクレープあんの。」
当然の如く、学校はしばらく休みである。とりあえず、どういったルートで、猛獣が、学校に放置させられているのか、それが解り、付きとめられない限りは生徒に、登校を許すわけには、いかない。たった一頭のライオンと言えど、何百人の生徒が犠牲になるか、わからない。
でも、だから、奈良とけいは毎日けいの部屋でいちゃつけた。生活が虹色に染まった。けいは、今までの人生で一番幸せかもしれない、と思った。ただ、よぎる言葉も、ある。
<誰かを助けたい>
柚宇の吐き台詞である。だが、否定する。正体の掴めない、自分自身の使命感丸ごとを、である。
「そんなんマザーテレサ様じゃあるめえしよ。」
さとしは、もうけいの独り言は気にならなくなっていた。
そして、三度目の猛獣発生事件。今回は、初めて、犠牲者が出ることになる。けいにとって、今現在最も近しい存在である。
<えー、臨時ニュースです。ただいま、午後8時9分_えー宇都宮東通り(あずまどおり)町で、現地高校生が、大型の肉食性質を持つ、アフリカ生息のブチハイエナにふとももを2か所、かまれ、重体_生徒の名前は、_求喰川高等学校2年_奈良さとし_君あ、今、新しい情報が入りました!えー現地の湊谷純平記者?>
「うそだべ。」
兎瓦けいは、絶対に
絶対に
誰が何と言おうと
絶対にこの世の中で、一番不幸な人間は、自分だと思った。食器を驚きで割ってしまった、みさきの前のソファで、手編みのマフラーを完成させる寸前の、けいであった。まだ、夏なのに。
テレビでは、ユウホドウというバンドが、曲を披露している。
今年デビューの期待の新人らしい。各楽器が、主張し過ぎな気がするが、かっこいいことは、間違いない。
音楽性の話でいうと、昔ながらのブルースロックに、しかしそれを基調としながらも、曲のあちこち、節々でトリッキーなユニゾンが入るなど、開拓しようとする意気込みが感じられる、先に期待のできる、伸びしろを見せつけているのだ。個性的なメンバーもいい。やはり、ボーカルの花頭の女の子のステージングが、アグレッシブと狂気とロリを絡めたようなスリリングなもので、バンドの顔となる特徴を築き上げていた。ミュージシャンに言わせれば、一番才能のあるのは、ドラマーだと言った。おかしな着ぐるみをきているが、腕は本物だという、評価だ。他のメンバーの腕も、プロの名に恥じない。ただ、一つだけ問題があった。
さとしが、言った。
「、、、何語?」
使用言語が、日本語でも、英語でもないのである。インタビューでは、いつもアドリブの発声だと、ボーカルは答えているが、そんなはずはない、かっこつけんな、とネットでは、えらく叩かれている。
テレビを見ながら、病人に寄り添うけいは、それと同時に、編み物をしていた。奈良さとしは、心配した周りをバカにするような、けろっとした顔を浮かべていた。ニュースでの重体は、言い過ぎだったらしい。ただ、まあ出血は確かにひどかった。骨も折れていない。
ブチハイエナは、動物界屈指の強いアゴの力を持ち、肉食動物では珍しく、骨をそのまま、がりり_捕食、咀嚼、そして消化してしまえるのである。優秀なハンター達は、不名誉なレッテルを張られたままである。
そのハイエナに噛まれたのに、骨に異常がない、というのは、おかしい。だいたいにして、今回の事件は、いろいろ、おかしい。愉快犯としか、思えない。動物を放ち、街を混乱に陥れるためなら、一気に大量に放てばいい。一匹ずつ。しかも、おどろくほどおとなしく、捕獲されることを、簡単に受け入れるのである。
完璧に調教された、猛獣たちを使った、特定の誰かに対する挑発_こうとしか、考えられなかった。
あほ面で、画面を見るけいは、自身が、この事件の発端のど真ん中にいたことは、まだ知る由もなかった。
バスが今、目の前を横切った。
兎瓦けいは、さとしの無事を確認すると、ほっとし急に甘いものが欲しくなり、見晴らし公園近くの、駄菓子屋で、怪しい、けれども、これが一番うっめえと主張する<たいすけバー>というお菓子を食っていたのである。バーといっても、アイスではなく、所謂チョコレートバーである。ぺろぺろ、と舐めつつ、ふいに赤くなった。昨日、自分がこの世で一番不幸な人間なんて、悲劇のヒロインぶった自分が恥ずかしくなった、のである。
「にゃーにゃーにゃん」
意味の解らない、幼稚な歌を歌い、恥ずかしさを紛らわせた。あとに、兎瓦けいは、この時すぐに、帰っておくべきだったと後悔することになる。
4時半。
玄関につくと、血がついている。がん、とカバンをふっ飛ばし、キッチンに向かう。
今、庭の窓で何かが動いた。巨大な尻であった。なんだ、あれはと思った瞬間。
「お母さんっ!」
母が倒れている。意識がない。だが、外傷は見つからない。
「うん?」
飛び起きる母。
「け、けい!」
怖かったよ、お母さん、とばかりにけいにとびつくみさき。話し始める。
「! 、、!」
言葉を上手く紡げていない。まあ、そのぐらい怖かったんだろうなと思ったけいは、はたとよぎるものを感じた。玄関先の血は、じゃあ誰の_。
その日の夕方である。
ニュースで、再び猛獣が現れた、と伝えた。
今回は、とうとう死亡者が出た。兎瓦けいの家のとなり、一軒家に住む老夫婦のうちの、今年80歳になるおじいさんの方である。死因は出血多量。犯人は、
「なにあれ。」
見たこともない、動物だった。頭部は、猿のように、凹凸の少ないものだが、歯はするどい。体は、普通にシマシマ模様の虎なので、ある。そっくり二つの動物をくっつけたとしか、思えない。この異常な肢体を、テレビで確認したけいは、一瞬、さとしのケガも思い出し、だだ、と二階へ上がった。
「おい、花男!」
一人でしゃべるけい。
「どこにいても、たぶん聴こえるべ?わたしの声!」
反応はない。
「、、、。」
息を思いっきり吸ったけい。ギターを持つ、真似をするけい。
「求喰柚宇!!!!!恩返しの時間だべ」
女の子と、カエルを乗せたバスは、道路を走る。
柚宇が生意気な口をきいた。
「はっきり言うぜ?おせえ。彼氏噛まれてんのに、なぜそのとき、動きださなかった!おまけになんでおれが、お前の手伝いしなきゃなんねえんだ。お前が思ってるより、おれは忙しいんだ!あ、そういえば、この前の講義料!まだもらってなかったよな?惑星の秘密教えてやったんだ!570円だぞ?破格だ。」
カエルをつまんで、胸の中にいれる、けい。
「まあまあまあ。よく喋る、女装趣味だこと。」
柚宇は、思った。
けいは、強くなった。
どっちかしかない、と思った。
彼氏やその類いの、繋がりを捨て去り、こっち側に来るか、もう恩返しを忘れ去り、一生さとしといちゃつくか。極端な物言いだが。
けいは、どちらも見捨てなかった。
日常は日常。
マシンガンはマシンガン、とケジメをつけたのである。
おそらく、男性の精神力で、達成できる境地ではない。
柚宇は、しかし、口からこぼれる意地悪は止まらない。
「兎瓦けい」
「あ?」
「鶏肉食うと、いいらしいぞ。」
「は?」
「胸大きくすんの。」
のちに、この世で最も苦しい拷問処刑に会うことになる。しかし、同情をする者は誰もいなかった。
もうすぐで、この田んぼ地獄ともおさらば、紫外線ほとばしる夏の海岸、九十九里浜である。
けいは、麦わら帽子を部屋から、引っ張り出し、日焼け対策を実施した。
柚宇が言う。ぷ。ゆうがゆう。失敬_。
「おい、兎!」
「どれかっつうと、その呼び方が一番腹が立つな。」
「今日は、メガネじゃないのか?」
「ああ。だから?なに、またそっちの常識でなんかあんの!?」
「ねえ。」
柚宇は、間を置いた。もうすぐ、砂浜が広がる場所に出るはずだ。
「メガネつけた方が、かわいかったのに。」
「え?」
カエルは、聞いてんのか、おい、と赤くなった頭上の頬を、カエルの力で容赦なく叩いた。大した衝撃ではなかった。
神岡浄介は、スティーブ&仁美と共に、楽しげにポーカーを満喫していた。
最強の、太陽神は、スティーブ&仁美と共に、楽しげにポーカーを満喫していた。
すべての惑星巫天のリーダーは今、スティーブ&仁美と共に、楽しげにポーカーを満喫していた。
仁美は言った。
「じょうちゃん!今のずる!」
スティーブは言った。
「汚えぜ、神っ。」
神岡浄介は、「う~ん。」と弱気な声を発した。
「おっと。」
アイスがこぼれそうになった。
水着のけいは、今、夏を満喫している。何かを忘れていると思うが、まあ、いいや雑念を、横から薙ぎ払う。
「うおおおお」
かわいらしくもない、雄たけびを上げて、波に突っ込む彼女。それを、ほほえましそうに、妹を見るように見つめるのは、浴衣の青年である。
「あんさ、絶対おかしいから。脱げよ、それ。自分の裸に自信ないんけ?」
上がって来たけいの体を、舐めるように見る、青年。柚宇は、答えた。
「64点。」
「は?なにが?」
す、と隣りの水着美人を指差す、花男。サングラスを取り、言う。
「89点」
ばし
腹を叩かれた柚宇は、なかなかに鋭い痛みを感じた。しかし、もう一回別の女を指す。
「92点」
いらっときている女子高生に一言付け足す。
「どうすんだ?兎瓦けい。今んところ、お前最下位だぞ。」
けいは、ふ、と返す。
「フクロウに潰されて死ね。」
時間が経って、海の家で休む。
柚宇を見ながら、夏の似合う男だな、と思った。単に、浴衣だから、かもしれねえな、と自分に突っ込みながら。
柚宇が、急にきびしい目を向ける。
「なんだ、あれ。」
けいもつられて、沖を見る。
「あん?イルカ?」
イルカであった。みんなに大人気、バンドウイルカである。浜に?
辺りは、騒然となっている。いや、怖がっているものはいないようだが、海の家のオーナー塩田ユウスケさんによると、この辺りでイルカがこんな近くまで来るのは、今日が初めてだと言う。
それを聞いて、うれしがる皆。だが、おかしな恰好をした、いや、頭をした青年と一人の女子高生だけは、ひたすらに事態の悪化を恐れた。
「柚宇。」
「ああ。」
何の疎通をしたかは、本人たちのみが、窺い知ることだった。ユウスケさんは言った。
「ギター久しぶりに、弾いてみっかな、こんな日は。」
と体格のいい、店長は奥に入って行った。けいは、アイス(二個目)をぶらぶら口でくわえながら、失礼、それを取ったあと、叫んだ。
「えええ!?おっちゃん、ギターなんてできんけ!?」
前より、けいは明るくなったのは気のせいだろうか。今日初めて知る他人である。ひょっとしたら、おっちゃんの人柄かもしれない。
「ふっはは!このおれを誰だと心得る!Fujiyamaボッキ-ズのギターボーカルを務めた、あの塩田様だぜ?嬢ちゃん、一曲聴いてくか?聴くな。聴け、<鉄の太陽>」
けいは、はた、と思った。
ギターだ、と思った。だめだ。なぜか、あのぬいぐるみシャチを思い出すと泣きそうになる。き、と柚宇を見た。<鉄の太陽>は聴いていなかった。
「ねえ、柚宇。マシンガン元気かな。」
「そんなかわいい顔すんなよ。食うぞ。」
「元気だといいな。」
「流すなよ。」
ざざん、と風と波が強くなってきていることに、2人はまだ、気付いていなかった。
はじめにおかしいと思い始めたのは、柚宇である。
さっきまで、居たイルカが、波間から消えたのである。そもそも、来ていたことがおかしいのだから、去るのはおかしくないんでは、と思うかもしれない。だが、消え方がおかしかった。一回潜ったっきり、出てこないのである。30分後も、40分後もである。けいは、言った。
「は?沖に出ちまったんだべ?」
柚宇は答えた。
「違うな、それなら、何百キロ先だろうと、この求喰柚宇様の耳に届くはずだ。おい、けい。来るぞ。」
キョンシーに変化した、柚宇は、皆に逃げるよう促した。ウソをついたのである。けたたましい音量。眞弥をしのぐ。
「聞いて下さい、皆さん!たった今、沖の船から、大型のホオジロザメが近くに来ているとの、警告がありました!至急、大至急、海から上がってください!で浜にいる奴らは、早く家帰れ!」
ふう、とキョンシー人魚は、息を吐いた。けいは、言った。
「最後の言い方は、まずかったべ、あれ。」
知るかよ、と言った柚宇の視界に何かが入った。水面に浮かぶ、イルカの死体。爆発した。原理が解らないが、肉片が飛び散った。サメの仕業だと、思った浜の人々は、にげまどった。どうやら、もう海にいる、人間はいない。それがわかると、柚宇は、ヒレで一目散に海に向かって駆け出した。
実際、サメよりも恐ろしいものに、向かっていったのだった。
けいは、仁王立ちにアイスをくわえ、柚宇の指示を待っていたのだが、青春のように、波に今ぶつかったキョンシーを見届けると、
「あたしゃ何すりゃいいんだい?」
柚宇は、力いっぱい叫んだ。
「今すぐ、こっち来い!兎!!!!!!!!!!」
轟音におののきながら、ててて、と駆け出すけい。
「おせええ!もっと早くしろバカ死にてえのか!」
わけがわからないけいは、あと5m先が波の先のところまで、到着しつつ、後ろをつまり、陸を振り返った。声がした。
「!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!???????????」
けいはたまげた。
群れである。
「久しぶりだな、求喰柚宇_」
低くにぶい、鉛のような声である。
発信源はどうやら、柚宇の飛びこんだ水から。
けいは叫んでいた。
群れである。砂浜すべてを漆黒にするような、大群。そのすべては、大型哺乳類。
けいは今やっと水に入った。押し寄せてくる、サイ、トラ、ゾウ、キリン、四本足のオンパレードである。どこからか、出した浮輪を浮かべたキョンシーは、けいをつまみ上げその上に乗せた。
大群は海に入れず、ひしめきあっている。数千頭はかたくない。どの個体も、ある一方向を見定め、動かなくなった。
「絶対海の中に入るなよ?けい。」
「はい?はい。」
と言った。
下から出てきたのは、アフリカゾウである。
「は!??」
泳げたんだ、とけいは脳内で変なものを分泌させた。
柚宇は、けい付き浮輪を片手で操りながら、(まるでけいを扱うための取っ手代わりであるかのように)ゾウの浮上をかわした。浮ぶゾウの額には、何かいる。
「求喰柚宇、おとなしく死んでくれよ。な?」
札を濡れたまま、口にくわえる柚宇。片手には、けい浮輪。葉っぱを2枚出す。
けいが叫ぶ。
「ガスト!」
ぐわばと、ゾウを飲み込む。額に居た黒と白のイルカは直前で、鼻により空中に跳ね飛ばされた。
柚宇は叫んだ。
「ナイスだ!けい!今のはマジで惚れた!」
「いいから!おい、あのイルカ軽すぎねえか?どこまで飛ぶんだべ?」
ばあん、と陸に広がる動物の群れに入ったそのイルカは、もぞもぞとうごめく集団につぶされたように、見えた。
けいははしゃいだ。
「やった、勝った!」
柚宇が言う。
「おれもそんな素直に生きたいわ。」
マーメイドキョンシーはかたく、けい浮輪を固定したまま、陸に向かって叫んだ。今回は、負けんとばかりに。
「おう、数万年ぶりだな、セミイルカァっ。」
ずりずりずり、と模様を描くように、大群の中心がうごめいた。再びその中のゾウの額に現れたのは、セミイルカたった一頭である。
けいは言った。
「弱そっ。」
目をギンと、光らせたセミイルカは、ゾウの頭部から、もたれかかりながら音を発した。
けいは、その眼光にびくついた。この前のイルカより、なんというか<怖い顔>をしている。
イルカは喋った。
柚宇は、にやあ、と気味が悪い程笑っている。
「ふはははっはははははははははははははははははははははは」
おそらく、イルカから発すられた笑いであった。きれいな音だった。
「なんだ、あいつ。」
けいは、勇敢だった。
笑い声を合図に、陸で変化が起こった。一頭また一頭と、着水を始めている。だが、所詮陸上の動物である。水の中では、にぶ_
柚宇は、興奮を押し留められない様子だ。けいに、言った。
「ああああ興奮して来たぜ、けい、お前しか周りにメスいねえから、キスしていいか?」
「は?」
有無をいわさず、けいを引き寄せる柚宇。
女に口でキスされ、複雑な兎瓦けい。
「動物か、お、おめごっほ!」
水を口に入れてしまった。
けいは、異変に気付いた。何か、見たことのない動物が、群れの裏側から徐々にこちらに近付き始めていた。
両性哺乳類。そう名付けるのが、正しそうな、四肢すべてが、水かきの猿がその巨大な体をこっちに照準を合わせて来たのである。
けいは、言った。
「はや!」
見ると、猿の顔が何十個も、こっちに向かってくるではないか。猿達は口を開けた。サメの歯が移植されたように並んでいる。
セミイルカは叫んだ。
「人間は賢いなあ、兎瓦けいよ!」
今、キョンシーは尾びれを使い、けい浮輪を片手に、追ってくる猿たちから、じぐざぐに、避難する。構わず続けるイルカ。か弱く、美しいラインは、背びれの全くない背中の美しさを際立たせている。
背が美しいイルカ。背美海豚<せみいるか>である。叫びは、おさまらない。
猿の歯が、キョンシーの尾びれの先端をもいだ。悲痛な声を上げる、柚宇。
「おい、だいじか、花男!」
「ああ。」
柚宇は、ぐるりとイルカに目を合わせて言った。
「楽しいな、HATSUKA~。」
この海豚<いるか>、陸上を闊歩する全ての、哺乳類を操作する存在、、、調教師JETTOES分類Hyatt reagency種類クラウン。
イルカは言った。
「これが調教だ、イシアガン。」
名は、HATSUKAという。
坂口は、彼女と映画を見ていた。大声で言わせてもらう。アツアツである。彼女の方は、坂口にベタベタ。坂口は、この桂が初彼女である。アツアツでないはずがない。大声で、言わせてもらう。あっつあっつである。
「ひゃはーい、波乗り楽しい~。」
「おい、頭ついにおかしくなったか?兎瓦けいっ」
「あたしゃ、意味が解らなくなったら、楽しむって決めたんだよ。」
「は、水族館では、鼻水から何から全部漏らして、ああ!とか言ってたくせに。 兎。」
水面を高速で、移動しながら、悪態をつき合うのは、青いチャイニーズドレスのようなものに身を包む、人魚と水着の女子高生である。なかなか、ない光景である。ついでに、その20m以上、後ろには、人魚より遥かに遅いスピードで、追ってくる泳ぐ獰猛猿である。この分だと、追いつかれることはない。
けいは、言った。余裕のよっちゃんの表情である。
「おい、柚宇。」
水平線を見たまま、返事をするマーメイドキョンシー。
「なんだ、泣き虫。」
ざん、ざん 定期的に、胃が浮く感覚に襲われるが、けいはこういった類いの刺激は、この上なく好きであった。
「、、、あいつらがわたしの母ちゃんを、びびらせたんけ?」
柚宇は即答した。
「だったら?言っとくけどよ?おセンチイシアガン!とち狂ったって、敵の思うつぼだぞ?黙っておれの言うことを、き、」
柚宇は、浮輪が軽くなったのに、気付いた。
「れ? けい?」
振り返ると、5頭の猿の餌食になる寸前の、兎瓦けいである。
柚宇は叫んだ。
「何ヤッテンダ、バカァ!WHAT A fuckin’ shitHOW dare that cunt...!」
なぜか、言語変換を間違えた。
けいは、笑っている。
近付く猿。
坂口を夢の<ア~ン>をしていた。敢えて状況は説明しない。イライラするからである。<ア~ン>に関しては、坂口は好きだな、と思った。ここは、坂口の部屋である。食器の上に、プリンだのがある。夢の<ア~ン>である。坂口は、とてもおいしいな、と思った。馬鹿である。
柚宇は、マジでびっくりした。マジでびっくりしたのである。飛びかかって来た、5頭の猿が、けいの目の前で、忽然と消えたのである。
「は?」
間抜けな顔をした、柚宇は次の瞬間、何が起きたのか、気付く。
遠い浅瀬。海の家。海の家の前。海の家の前のベンチの前。ギターである。ただの、ギターではなかった。
次の猿の軍団は、まだまだけいと柚宇の所までは、辿り着かない。だが、余裕はない。その中で、けいは、この上なく眩しい笑顔で、柚宇にVサインをしながら言った。
「それはお前のものだ。けい。お前が助けた分だけ、ギターはお前の力になる。」
その時、新たな声がした。
「その通りだ!兎瓦けいっ!」
近付く猿2,30頭を、ほとばしる電撃がまとめて水上にて、焼き殺した。
「マウヅ!」
柚宇が、水を尾びれで打った。
けいは、手を差し出した。
電撃は、止むことなく、なんと浜辺まで、シーツのように、広がった。驚き、パニックを起こす動物たち。すでにイルカの姿はいない。
ばち、ばちち
ギターがすごいことに、なっていた。5頭の猿の頭部が、ところせましとその楽器のボディーに付着しているのである。気味悪いったら、ない。
電撃の主は、わずか30cmである。
この世の生態系の頂点に君臨する、大洋の覇者、と同時に殺戮特化哺乳類、学名をOrcinus orca意味は、冥界の悪魔。流線は、食物連鎖の合計を比喩し、その鋭い歯は、生きとし生けるすべての生物を肉片に帰す。
和名シャチ。
「マシンガンっ!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
「久しぶりだ、最強イシアガン、兎瓦けいよ!」
その動物の、高潔なる魂を持った、調合惑星巫天ヨウフ、その長JETTOES担当、名をマシンガンと言う。
「おせえよ、ばか。どいつもこいつも。」
柚宇は、表情と言っている内容があべこべだった。
「泣き過ぎだよ、バカけい。マウヅも、ほら、いい加減弄ばれてイライラしてっぞ。相変わらずこっちじゃ、ちっちぇえな、あいつ、おい ちょっとおれも混ぜろよ、コラ」
突進する柚宇。
「この、相変わらずかわいくねえ、シャチだな、これ。ひゃっひゃっひゃっひゃ」
てーい、とわずか30cmの物体をつつく、けい。
「調子に乗るな、小娘が!お前のその、声が一番気に障るのだ!ふ」
マシンガンは、本当にイライラしているように見えた。
モノガタリ ハ マダ ハジマッタ バカリ デアル




